日本でどれだけしっかりとフランス語を勉強してきても、いざフランスに来てみると知らない表現や辞書に載ってない単語に出会うことがよくあります。そんな中でも特に頻繁に耳にするのが「シェパ」。
「シェパ」ってなに?
毎日のように聞いているのにどんな綴りなのかわかりません。「chez pas」?「shépa」?「chéppa」? 辞書にも載っていません。一体何なのでしょうか…。もんもんとする日々が続いていたある日、友人との会話で「ねえ、これ知ってる?」と聞いたとき、彼が言ったのです。「シェパ」と!
僕 「Maintenant, tu as dit ‘ chépa ‘ ! (今シェパって言ったよね!)」
友人 「Bah oui, et alors? (言ったよ。それが何か?)」
僕 「Qu’est ce que ça veut dire?? (それどういう意味?)」
友人 「Ahahah, ça veut dire que je ne sais pas. (あはは、Je ne sais pas(知らない) のことだよ)」
僕 「Ehhh!! Pourquoi tu dis ‘ chépa ‘ ? Je ne l’ai pas encore appris ! (えぇっ!!なんでシェパっていうの?習ったことないよ!)」
友人 「Bah… chépa …. うーん…シェパ…」
「ら抜き」ならぬ「ne 抜き」言葉
フランス語で会話をするとき、否定型の「ne …pas 」の ne を省略することがあります。日本の「ら抜き言葉」のようなものです。
「Je sais pas」 (知らない)
「Je mange que ça 」 (それしか食べない)
「Je fais plus」 (もうしない)
あまり行儀の良い言葉ではないのですが、ne がなくてもその後のpas やplus、que などがあれば意味が通じるため、発音上邪魔になるneを省略する傾向があります。比較的若い世代(10代~40代)が中心ですが、年配の方にも使われてます。
ただし、前述したように行儀の良い言葉ではありませんから、友人間や親しい人の間でのみ使い、きちんとした場所では ne を用いたほうがいいでしょう。
その「ne 抜き」がさらに短縮
その「 Je sais pas」がさらに短くなり、je とsais が一緒に発音されたものが、この謎の言葉…「シェパ」なのです。注)je ne sais pas をシェパとは言いますが、je sais をシェとは略しません
友人間での使用にとどめる
日本語にすると「知らね」や「知らん」のようなかなり砕けた表現ですので、使用する際には注意が必要です。友人同士の間では気軽に使える表現ですが、初対面の相手や先生、会社やお店などでは使用しないほうが賢明です。
なるべくきれいなフランス語を
生きたフランス語を学ぶという意味では、どんどん耳から入ってきた言葉をまねて使うのは大切なことです。しかし、フランス人は綺麗なフランス語を話そうと努めている人を好みます。たとえまだしっかりと話せなくても、自分たちの言葉をきれいに話そうとしている人を見ると、とてもいい印象を持つのです。
例えば、日本にいる外国人が「お前さー」「知らねー」「まじかよ」という表現ばかりをつかっていると、面白いし微笑ましいのですが「いったいどこでそんな表現教わったの?」「どんな勉強してるの?」と思うのと同じです。
特に、まだフランス語がきちんとしゃべられない時期にそのような表現ばかり使っていると「この人はちゃんと勉強していない」という印象を与えてしまいます。僕は今でも「ne 抜き言葉」は使わないようにしていますが、「あなたはきれいなフランス語を話すわね」と年配の方からよく言われます。
じゃあ「シュイ」ってなに?
この「シェパ」とよく似た表現で「シュイ」というものがあります。これも、「je suis (ジュ スュイ)」を省略したものですが、やはりあまり品のいい表現ではありません。
生きたフランス語もきちんとしたフランス語もどちらもうまく使いこなして、フランス語が母国語のように話せるようになりたいものですね。はたして僕にそんな日がやってくるのでしょうか…?
「シェパ!!!」
執筆 Daisuke