仏検準1級対策 その2:筆記の内容と対策ポイント

2021.11.16

辞書今年も実用フランス語技能検定試験(仏検)の秋季試験が近づいてきました。1年に2回ある仏検のなかでも、1年に1度、秋季にしか受けることのできないのが準1級です。このシリーズ記事では、準1級試験の内容や対策をご紹介しています。

第2回目の今回は、仏検準1級の筆記試験の対策方法について、筆者の体験を交えてご紹介します。

なお問題例などで引用した過去問は、公式HPに公開されている2011年のものです(APEF「過去問題サンプル」)。また、試験対策についてはあくまで筆者の考えと経験にもとづくもので、合格を必ずしも保証するものではありません。

(準1級と2級のレベル比較などについては、ぜひこちらの記事「その1:難易度を仏検2級と徹底比較!」を、準1級以外の試験についてはこちらのリストから関心のある級をご覧ください)

 

仏検準1級の筆記試験のポイント

前回の「徹底比較!」記事では、「2級になく準1級にある問題」として以下を挙げました。今回はとくに準1級対策に必要な出題内容にフォーカスします。

第1問 派生語の穴埋め、記述式 5問×2点=10点
第2問 異なる意味をもつ単語の穴埋め、選択式 5問×1点=5点
第4問 文中の動詞穴埋め、記述式 5問×2点=10点
第7問 指定箇所の要約など、日本語の記述式 3問×5点=15点
第8問 仏作文 14点

 

第1問 派生語の穴埋め

第1問は派生語の問題です。派生語とは例えば modeste(「謙虚な」という意味の形容詞)と modestie(「謙虚さ」という意味の名詞)のように、おなじ語形ながら品詞や意味の異なる単語をいいます。

以下のように2つの文章が出され、同じ意味になるように指定の語を変化させます。

A. Adèle est fort intelligente, mais très modeste. アデルはきわめて賢いが、とても謙虚だ。
B. Quoique très intelligente, Adèle est d’une grande (  ). とても賢いにもかかわらず、アデルは非常に謙虚である。
答: modestie

AとBは文法構造がまったく異なりますが、内容はほぼ同じです。ここではAの文で形容詞として使われている modeste から、Bの文に当てはまるような派生語(ここでは名詞)を考え、解答します。

第1問の対策

実はこの第1問、1級でも問われることで有名(?)な名詞構文の問題と類似しています。そこで筆者は『フランス語名詞化辞典』(欧明社)という、アルファベット順に名詞構文がずらっと並んでいる小さな辞書を勉強しました。

この本は、上の出題例のように、同じような意味を表すが異なる派生語をつかった文を2つか3つセットで紹介しています。それぞれ和訳もついているので、意味のニュアンスの違いも確認することができます。

アルファベット順のため単語をゼロから覚えるのに適しているわけではないのですが、本番の試験でどんな形容詞(名詞)が出題されても、名詞(形容詞)に変換できるようになるため、とても役に立つ教材です。

第1問の戦略

ただし第1問の配点は1問2点と、他の大問に比べて高くありません。またこの問題は、派生語を知らない場合はどんなに考えても正解にたどり着くことは難しいです。

そのため試験日が迫っている場合は、第1問は準1級の公式問題集に載っている頻出度の高いまたは重要な派生語のみをおさえて、他の問題の対策を優先するのも一つの手です。

 

第2問 異なる意味をもつ単語の穴埋め

次に同形異義語の問題です。以下のように2つの文がセットで5つ出題され、10個の選択肢から適切な単語を選びます。

A. Agathe fait ses courses dans une grande (  ).
B. Mon appartement a une (   )de 100 mètres carrés.
答: surface

同じ単語 surface が当てはまるとはいえ、Aでは grande surface という連語として「大型店舗(スーパーマーケット)」、Bでは「面積」の意味で用いられています。このように前後の単語と熟語や連語をつくって、単体のときとは異なる意味をつくる場合もあります。

第2問の対策と戦略

第2問については、1つの単語の複数の意味を知っているか、また熟語や連語の知識で命運が別れます。熟語の知識をつけるには『仏検対応 クラウン フランス語熟語辞典』(三省堂)が有名ですが、とにかく厚い(2,171語掲載で全533ページ!)です。

第1問と同様、配点が1問1点と高くないので、公式問題集に載っている最低限の知識を確認する程度で、この問題の対策に時間をとりすぎないのが得策かもしれません。

ただ、準1級の受験を意識し始めたその日から(これを読んでいるいまこの瞬間から!)、フランス語の単語を辞書で引くときには必ず、複数の意味があるかどうか、主な熟語はなにか、調べるクセをつけておくと良いでしょう。

第4問 文中の動詞穴埋め

長文の穴あき部分に、適切な動詞を活用させて埋める問題です。文章は1ページほどの長さで、少し難解な単語も含まれます。

動詞は10個の選択肢から選びます。選択肢には代動詞や複数の意味をもつ動詞が含まれています。文脈から適当な動詞をまず選んだら、今度は時制や態、性数一致の有無を考え、自分で活用させて解答欄に記入します。

例年、まんべんなく時制(現在形、複合過去、未来形)・態(能動、受動)・性数一致が問われています。動詞の意味を知っていることはもちろん、活用させて性数一致まで完全に考えなければならないので、容易ではありません。

第4問の対策

準1級の受験レベルであれば、基本的な活用形はほとんど頭に入っているでしょう。また、問われる動詞の意味もほとんど知っているもののはずです。対策すべきは、適切な時制・態を選ぶこと、また性数一致の有無を判断する力を高めることです。

筆者は『完全予想仏検準1級-筆記問題編』(駿河台出版社)の「動詞活用問題」の部分を活用しました。勉強するときには、動詞があっていればマルとするのではなく、活用や性数一致がなぜ解答のようになるのか、逐一確認することを心がけました。

 

第7問 指定箇所の要約など

第7問は、1ページ程度の文章を読み、文中の内容などを30字程度でまとめます。2級までにはない、「日本語で解答する」大問です。

第7問の対策

この第7問(と、この記事では取り上げていませんが第6問)は「確実に正解したい」大問です。なぜなら、単語や前置詞などの知識を問う問題や、聞き取り・書き取りのように聞き逃したら得点できない問題とは異なり、目の前の文章中に必ず答えがある(!)からです。

例えば「筆者は、〜理由をどのように説明していますか」という問題では、筆者が理由を説明している箇所が文中に必ずあります。そこを探して丁寧に意味を汲めれば、あとは日本語での解答なのである程度自由に記述することができます。

この大問については、『仏検合格のための 傾向と対策 準1級』(駿河台出版社)を活用し、どのような問題が出題されやすいのか傾向をつかむと良いです。

時間に余裕がある場合は、同じ駿河台出版社の公式問題集『仏検公式ガイドブック』でトレーニングを積みましょう(2020年度から『ガイドブック』は1級と合体。また、問題ごとにまとめた『仏検公式ガイドブックセレクション』も発売されました)。

第8問 仏作文

いよいよ最後、第8問は仏作文です。3行程度の和文を仏訳します。2011年度の出題では関係代名詞を使う文章が含まれ、構文力も問われています。

第8問のポイント

筆者が仏作文で意識しているポイントの一つは、和文から状況を想像し主語と述語を正確に決定することです。例えば以下の文章をフランス語にするとき、誰を主語にすればよいでしょうか?

先日地下鉄の中で座っていたら、80歳くらいのおばあさんが乗車してきた。

この和文は誰の視点で語られているでしょう。後半に「おばあさん」が出てきますが、前半では「私 je」が省略されていますね。主語が分かれば、述語はほとんどの場合、自動的に決められるはずです。ここでは前半の述語は「座っていた」、後半は「乗車する」ですね。

他にもポイントはたくさんあるのですが、とにかく仏作文は練習あるのみです! 具体的にどんな参考書があるのかご紹介します。

第8問の対策

まず上述の『仏検公式ガイドブック』『セレクション』(駿河台出版社)で過去問を確認しましょう。解答を暗記するほど、何度も繰り返して基本的な文型や構文に慣れると良いと思います。

次に予想問題として、これも上述の『完全予想仏検準1級-筆記問題編』(駿河台出版社)『仏検合格のための 傾向と対策 準1級』(駿河台出版社)があります。どちらか選ぶとすると前者の方が解説が詳しくおすすめです。

そして余力のある方には『仏検 準1級・2級必須単語集』(白水社)をおすすめします。これは単語集なのですが、精度の高い和訳と適当な長さの例文があるので、筆者は仏作文の練習用に活用していました。単語の復習にも使えるので便利です。

まとめとアドバイス

準1級の筆記試験の内容と対策ポイントを、仏検2級試験には含まれない大問を中心にご紹介しました。

第1問や第2問の項でも述べましたが、配点のバランスや問題の傾向(知らなければ解けない問題か、考えれば解ける問題か)、またご自身の得意・不得意に合わせて、戦略を立てて効率的に試験勉強を進めることをおすすめします。

まずは過去問をひととおり問くことを通じて、自分の得意・不得意を知る→合格点との差を把握→具体的な目標を定めると、より取り組みやすくなると思います。

次回の記事では、聞き取り・書き取り試験の内容と対策についてご紹介します。

執筆あお

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