フランスの新聞『ル・モンド(Le Monde)』は、2017年から2019年3月までにフランス語の辞書に追加された新語に関する調査を行いました。
対象の辞書は『ラルース(Larousse)』と『ロベール(Robert)』であり、全部で410語が新語として分析の対象とされました。
新語の36%、フランス語から
新語の36%は、フランス語由来の造語(mots composés)や略語(acronymes)でした。その大半が、既に存在するフランス語を変形させたものや組み合わせたものです。
造語の例
covoiturer 車をシェアする
:co(共同)+voiturer(車に乗る)。カーシェアが普及したことで頻繁に使われている動詞です。
déradicaliser 過激派思想から脱する
:dé(分離)+radicaliser(過激派思想に洗脳される)。イスラム過激派に加担する若者が増加していることから、学校や家庭での教育のあり方などが議論されています。
略語の例
ZAD 工事などからの保護区域
: zone d’aménagement différé。2018年冬、仏西部ノートルダム・デ・ランド(Notre-Dame-des-Landes)での空港建設計画に関する議論で、建設反対派によって主張されました。ちなみにその運動家たちはzadistes(ザディスト)と呼ばれていました。
その他の新語
rageux 過激
:特にネット上で過激な意見を主張する人について言う場合に使われます。
このように、シェアエコノミーの発展、イスラム過激派によるテロ思想など、最近のニュースが新語にも反映されています。
これ以外にも、フランスの地域語や海外県(départements et territoires d’outre-mer、通称DOM-TOM)で用いられるフランス語が、辞書に追加される場合もあります。
新語の20%、フランス語以外から
外国語由来の単語は、言語のまま用いられる場合(emprunt)、フランス語に翻訳される場合(traduction)や、発音やつづりがフランス語化(francisation)される場合があります。
「翻訳」とは、例えばパソコンのマウス(mouse, 英語)がフランス語でsourisになるような場合です。
「フランス語化」の例には、メール(mail, 英語)がcourrierになる場合などがあります。
以下のように、情報分野や経済分野における多くの単語が英語由来の新語としてフランスで用いられています。
英語由来の新語
英語のまま用いられている例には、以下のような例があります。
blockchain ブロックチェーン
:仮想通貨の流通網におけるデータ保存のしくみです。
Brexit ブレグジット
:英国がヨーロッパ連合(EU)から脱退するという一連の議論で頻出の単語です。
フランス語仕様の表記に変形されている例としては下記のものがあります。
cyberdéfense/ cybersécurité サイバーディフェンス/ サイバーセキュリティ。
:英語cyberdefense/ cybersecurityをフランス語化したもの。インターネット上のリスクを回避するための対策を指します。
startuper 起業する
:英語でstartup(起業する)を動詞化したものですね。
日本語もフランス語の辞書に!
英語の次に追加数が多いのは、なんと日本語です。和食に関する単語(gomasioごま塩、yuzu 柚子)や、文化に関するもの(kamishibaï 紙芝居、émoji 絵文字、kawaï カワイイ)などがあります。
食に関してはイタリア語由来のspritz スピリッツやfocaccia フォカッチャ、アフリカ由来のrooibos ルイボス、中国のoolong ウーロンなども新語に加わりました。
まとめに代えて―新聞を読んで新語を学ぼう!
今回『ル・モンド』による調査で明らかになったように、フランスの現在を反映した新語の多くを新聞から読み取ることが出来ます。
みなさんも是非、新聞に目を通してフランス語の移り変わりを実感してみてくださいね。
執筆あお