今年2021年はナポレオン(Napoléon Bonaparte, 1769-1821)の没後200年。フランスではこれを記念した式典が5月5日(水)に行われ、マクロン大統領がスピーチと献花を行いました。
こちらの記事「ナポレオンの没後200年(1)その業績をおさらい」もご覧ください。
マクロン大統領による献花とスピーチ
マクロン大統領は、オテル・デ・ザンヴァリッド(Hôtel des Invalides、通称アンヴァリッド)を訪れました。アンヴァリッド内には大聖堂やドーム教会があります。マクロン大統領はその地下にあるナポレオンのお墓に向かい、ナポレオンが亡くなった時間である17時49分に花束を捧げました。
献花に先立ち、マクロン大統領はフランス学士院(Institut de France)で25分間のスピーチを行い、カステックス首相(Jean Castex)も立ち会いました。
およそ半世紀ぶりの追悼行事
ナポレオンに関するこのような追悼行事は、ポンピドゥー第19代大統領(Georges Jean Raymond Pompidou, 1911-1974)が1969年にナポレオンの生誕200周年を祝って以来です。
それ以降歴代の大統領が追悼行事を行ってこなかったのは、ナポレオンに関してさまざまな意見のすれ違いがあることを考慮してのことでした。
今回マクロン大統領が追悼を行うことに対しても、主に左派勢力からの批判がありました。それでもマクロン大統領が献花やスピーチを敢行したのには、何らかの狙いがあったのではとも言われています。
スピーチの内容は
マクロン大統領はスピーチで、「ナポレオンはわれわれの一部 Napoléon Bonaparte est une part de nous」と表現しました。
そしてナポレオンの残した業績を回顧しました。例えばパリ市内にある凱旋門やマドレーヌ寺院などの歴史的建造物や、リセや大学などの教育システム、また民法や刑法、国務院(Conseil d’Etat、政府の諮問機関と裁判所を兼ねる)といった政治システムなどです。これらはすべてナポレオンが作り上げたものです。
マクロン大統領はさらに、ナポレオンの勇敢な人物像を讃え、彼についてより知識を深めることを呼びかけました。
ナポレオンの負の側面から学ぶ
マクロン大統領が言及したように、ナポレオンはフランスの歴史に重要な業績を残した人物ですが、一部の歴史家などはその業績には負の側面があったことを指摘しています。
ナポレオンはフランス内外で数々の戦いを行い、ヨーロッパの統一を成し遂げた人物と考えられていますが、この裏には多くの犠牲者がいました。戦いに際して奴隷制の仕組みを復活させた、という見解もあります。
また、ナポレオンが作り上げた社会システムや政治システムも良い側面ばかりではありません。男女の立場に関する考え方など当時は受け入れられたことも、時代を経て評価が分かれています。
歴史へのさまざまな見方
このように歴史上の人物が残したものに対して、賞賛するばかりではなく批判的に見るべきだという考え方は、最近フランスだけでなくアメリカなどでも見られます。
マクロン大統領への批判からは、歴史について改めていろいろな面から見直すことの重要性を学ぶことができるでしょう。
執筆 あお
参考:
Le Figaro (2021/5/5) Emmanuel Macron: «Napoléon Bonaparte est une part de nous» [2021.5.15]
Fondation Napoléon MUSÉES, SITES ET MONUMENTS [2021.5.15]