実用フランス語技能検定試験(仏検)には1級から5級まで7つのレベル(準1級・準2級を含む)があります。基本的にそれぞれ年に2回受験できますが、1年に1度、秋季にしか受けることのできないのが準1級です。このシリーズ記事では、準1級試験の内容や対策をご紹介しています。
第4回目の今回は、仏検準1級の二次(口頭)試験の対策方法について、筆者の体験を交えてご紹介します。
なお問題例などで引用した過去問は、公式HPに公開されている2011年のものです(APEF「過去問題サンプル」)。また試験対策についてはあくまで筆者の考えと経験にもとづくもので、合格を必ずしも保証するものではありません。
(2級とのレベル比較などについては、こちらの記事「その1:難易度を仏検2級と徹底比較!」を、準1級の筆記の内容と対策についてはこちらの記事「その2:筆記の内容と対策ポイント」「その3:書き取り・聞き取りの内容と対策ポイント」を、準1級以外の試験についてはこちらのリストから関心のある級をぜひご覧ください)
仏検準1級の二次試験の概要
仏検準1級は一次の筆記試験と二次の口頭試験に分かれており、一次に合格すると二次の受験資格を得ることができます。
一次試験は120点満点で、二次試験に進める合格基準点は例年60-70点ほど(2020年度:69点、2019年度:67点、2018年度:60点)。得点率は50%台、合格率は20%前後(2020年度:25%、2019年度:23.9%、2018年度:19.3%)です。
一次の結果は郵送で通知されます。この通知に二次試験の受験票がついていて、受験案内・試験時間(集合時間)・試験会場などが記載されています。必ず郵便物を確認しましょう。
二次のみの再チャレンジも可能
一次を突破したものの二次が不合格だった場合、またなんらかの理由で二次のみ欠席した場合、翌年度に二次試験のみの再受験ができます。
出願時に所定の手続きをとることで申告できますが、受験料などの割引はありません。
二次(口頭)試験の内容
二次試験は7分間の口頭試験です。
試験開始時間(面接室に入る時間)の約3分前に、2つのテーマが配布されます。このうち1つのテーマを選び、自分の考えをまとめておきます。このとき、辞書や参考書などを使うことや他の受験生と相談することはできません。
入室後は、簡単な自己紹介(名前を言う程度、もちろんフランス語で!)のあと、選択したテーマについて意見を述べます。そのあと試験官からの質問に答えます。
出題されるテーマ例
2011年度の過去問では、3つのパターンが紹介されています。実際にはこのうち1つのパターンが配布され、A・Bの2つのテーマのうち1つを選んで話します。
ー1パターン目
A 「La présence de troupes américaines à Okinawa est-elle nécessaire ?(沖縄の米軍基地の存在は必要か?)」
B 「Avec la publication du Guide Michelin 2012 (Tokyo, Kansaï), le Japon est devenu champion du monde des restaurants 3 étoiles devant la France. Qu’en pensez-vous ?(2012年度ミシュランガイドの出版において、日本はフランスをおさえ、三ツ星レストランの世界チャンピオンになった。これについてどう考えるか?)」
ー2パターン目
A 「La fréquentation touristique du Japon a considérablement chuté depuis le 11 mars. Selon vous, comment peut-on faire revenir les voyageurs étrangers ?(3月11日以降、訪日観光客が急減した。あなたの考えでは、どのようにすれば外国人旅行者が再び日本に来れるか?)」
B 「Le gouvernement doit-il tout dire à la population ?(政府は国民にすべてを話すべきか?)」
ー3パターン目
A 「Que pensez-vous de la taxe dite « obésité » ? (Après les Danois, le gouvernement français envisage de taxer les aliments gras et sucrés ―sodas, chips, etc.)(『肥満』税についてどう考えるか?(デンマークに続き、フランス政府は脂肪と糖分の多い食品(ソーダやポテトチップスなど)に課税することを検討している)」
B 「On dit que les manifestations sont rares au Japon. Qu’en pensez-vous ?(日本ではデモが少ないと言われている。これについてどう考えるか?)」
日頃からフランス語でニュースをチェック
この3パターンの傾向や他年度の過去問を見る限りでは、2つのテーマのうち1つは政治や社会に関する内容(米軍基地、観光政策、財政)、もう1つは生活や文化、哲学的な問題に関する内容が多いようです。
また政治や社会に関するテーマの方が問題文が長く、固有名詞を含むなど専門的な知識が必要という印象を受けます。知識を増やすには、日頃からフランス語でニュースをチェックしておくとよいでしょう。もちろんフランスの新聞でもよいですが、日本と関連のあるテーマであればNHK Worldのフランス語版もおすすめです。
知らないテーマへの対応力を身につける
ただ、すべてのテーマについて知識をつけるのは難しいので、知らないテーマへの対応力を身につけることも大切です。問題文のキーワードをヒントに、表現できる範囲で意見を組み立てる練習も積んでおきましょう。
二次試験の対策
実際の試験では1つのテーマを選びますが、過去問に取り組む際はぜひ、すべてのパターンのすべてのテーマで自分の意見を言う練習をしてみましょう。
数年分の過去問に取り組むと、政治・社会系と文化・哲学系のどちらが答えやすいか、どんな順序で意見を言うかなど、自分なりのやり方が見えてくるはずです。
過去問は駿河台出版社の公式問題集『仏検公式ガイドブック』がもっとも使いやすいと思います。
実際の準備時間を意識
過去問に取り組む際は、実際の準備時間と同じか、少し短い時間設定で行うようにしましょう。
実際には3分の準備時間がありますが、筆者は本番では緊張して頭がまわらないかも…と想定し、2分30秒で2〜3文の内容を話す(準備をする)練習をしました。
声に出して言う
大事なのは、実際の試験のように声に出して言うことです。意見をまとめたメモを3分間で作れたら、その時点でなんとなく満足してしまうでしょう。しかしメモを見ながら実際に声に出して言ってみると、言葉に詰まることもあるかもしれません。
本番を想定しながら声に出して言うことで、どんなメモを作成するのが自分に合っているのか(単語の羅列でよいか文章か、接続詞なども書くほうが話しやすいかなど)を見つけることができます。
じっくり見直し
筆者は以上のような練習のあと、文法的に改善できる点はあるか、もっと端的に表現できないか、ほかの具体例はあるかなど、じっくりと時間をかけて見直しました。そして再び3分間でその内容を再現できるように練習しました。
フィードバックをもらう
できることなら、フランス語話者の友人に聞いてもらったり個人レッスンを活用したりして、話した内容に対するフィードバックや質疑応答の予行練習をお願いすると良いでしょう。
アンサンブルアンフランセのオンラインレッスンなら、マンツーマンでの予行練習・フィードバックも可能です。
できる範囲内で簡潔に
準備・試験時間の限られる口頭試験では「できる範囲で答える」という心構えで臨むことも重要です。
試験官は、テーマに関して議論することではなく、あなたのフランス語能力を見ることを目的にしています。ですから長大で質の高い意見を述べることや大論争をすることよりも、3分間で可能な範囲で準備し、簡潔に意見を述べることが大事です。
筆者が過去問に取り組む際に注意したのは、自分の意見にあれこれ要素を盛り込むことよりも、内容をしぼることでした。そのためある程度、以下のように回答の流れをパターン化していました。
①問題文への回答(賛成か反対か、あるいはどんな政策が必要かなど)→②具体例や理由(なぜ賛成・反対か、なぜその政策を提案するかなど)→③想定される反対意見・他の視点
これは一例ですが、過去問を数多くこなすなかで自分なりに話しやすい流れを見つけていくと良いでしょう。
みなさまの準1級突破をお祈りしております!
執筆 あお
参照
公益財団法人フランス語教育振興協会(APEF)「仏検データブック」
公益財団法人フランス語教育振興協会(APEF)「1次試験免除について」