2026年6月12日(金)、本日、今年からバカロレア(大学入学資格試験)の必須科目になった数学の試験が、日本の高校2年生に当たる第一学年(première)を対象に実施されました。数学は2019年に必須科目から任意選択に変更されましたが、様々な統計から、フランスの生徒の学力低下が顕著になったころを受け、今年から復活した、と地元メディアが報道しています。
数学が必須科目に復活、今年までは「前倒し」試験
この試験は、本来高校の最終学年(Terminal)を待たずに、高校の普通科及び技術系課程のすべての生徒を対象に実施される「前倒し」試験です。
試験は、生徒の履修コースに応じて3種類あり、数学専門課程を選択している生徒向け、それ以外の一般課程の生徒向け、および、技術系課程の生徒向けとなっています。
ちなみに最終学年で数学専門課程を選択した生徒は、来年度末(6月)にも数学の試験をうけることになります。
「電卓を使わず」、の意味
試験の内容は、基礎計算能力を評価するためのマークシート形式問題と、2~3問の独立した記述式問題ですが、「電卓を使わず」にと明記されています。
わざわざ「電卓を使わない」と書かれている理由は、フランスの中学、高校では数学の授業に関数電卓を使用するのが一般的だからです。
日本ではなじみのない電卓の使用ですが、フランスの数学教育では、「計算は機械に任せ、人間は数学的考察や問題解決に集中する」という考え方があるからです。
フランス高校生の数学力、「衝撃的」低下 強化が急務
経済開発機構(OECD)の生徒学習到達度調査(PISA)は、加盟国の生徒の学習力を調査し、そのランキングを発表しています。
OECD加盟国の多くで義務教育の最終段階である15歳の生徒を対象に、読解力、数学、科学知識、および問題解決力を評価します。その結果を、国際的に比較することで教育法を改善し、標準化する目的から、生徒の成績を研究しています。
2000年に始まったこの調査は3年ごとに行われており、最新のものは2022年です。(今年9月に2025年度の結果が発表予定)
3年間で21ポイント減
2022年の調査結果によると、3年前の2018年と比べて、フランスの生徒の学力は調査開始以来最も大きく低下したことが明らかになりました。特に数学の成績低下が顕著で、21ポイント下落しています。一方、読解力も19ポイント低下しましたが、こちらは2012年から下落傾向が続いており、この10年間で合計32ポイントも低下しています。
数学の成績上位10%(レベル5~6)に入る生徒は全体の7%で、これはPISAが調査した81か国平均の9%を下回っています。ちなみに上位10%の生徒の割合が最も多い国々は、シンガポール、台湾、マカオ、香港、次いで日本と韓国が同数で並んでいます。
一方、最下位(レベル2未満)10%に入る生徒は29%で、フランスはOECD平均値31%をわずかに下回っています。
2019~2022年、高校数学 “空白時代”
2019年、当時のブランケール(Jean-Michel Blanquer)教育相が主導したバカロレア試験の改革で、高校普通科の共通科目から数学が外されました。
この時、それまで存在していたコース区分、S(科学系)、ES(経済・社会系)、L(文学系)が廃止され、代わりに専門科目を選択する制度に変更されました。
これにより、数学が専門科目の教科に含まれない場合、高校1年生(Seconde)から数学を一切勉強しなくてもよくなったのです。
この制度改革は「大きな弊害を伴う」と、強い非難が寄せられました。
将来の理工系人材減、男女格差広がる
まず、高校で数学を選択する生徒が大幅に減少、これにより、将来理工系分野へ進学する可能性のある生徒の層が縮小、そして何よりも男女間や社会的階層による格差が拡大しています。
特に、女子生徒のほうが男子生徒より。数学の専門科目を放棄する傾向が強まったことです。
そのため、政府は2023年より高校2年から再び数学を共通科目に取り入れ、以前から必須科目であるフランス語と共に、今年からバカロレアの前倒し試験に再度組み込みました。
バカロレア試験は、今月15日~18日の間に筆記試験が、22日~7月1日の間に口頭試問が実施されます。
出典:BFMTV、LeParisien、PISA、フランス政府サイト
執筆:マダム・カトウ












