ルーブル美術館の窃盗容疑者2名逮捕、世紀の大泥棒?が犯した初歩的なミス

2025.10.28

2025年10月28日(火)、19日(日)にルーブル美術館で発生したナポレオンゆかりの宝石強盗の犯人4名のうち、2名が容疑者として逮捕されました。事件発生からちょうど1週間、1名は海外への逃亡を図り、パリ・シャルル=ド=ゴール空港にて、もう一名はパリ郊外の自宅で逮捕されました。「世紀の大泥棒」と騒がれた割に、あっさり逮捕された2名の人物像は以外と素人だったのでは、とメディアで騒がれています。今後、共犯者の割り出しと共に、肝心の宝石の行方が注目されます。

 

DNA鑑定で犯人割り出し、パリの空港から逃亡、は致命的ミス

事件発生直後から、フランス国家警察のパリ本部はこの一大事件に刑事部門の捜査員を総動員し、捜査にあたっています。

犯人が現場に残していった手袋、ヘルメット、ディスクグラインダー(金属用電動のこぎり)をはじめとする証拠品及び現場で採取した150あまりの検体サンプルをDNA鑑定しています。

犯行の大胆さや宝石強盗の常として、犯人像は当初より前科のあるプロとみられており、実行犯と思われる人物がDNA鑑定でマッチしました。

逮捕一週間前から2人の容疑者をマーク

警察は動かぬ証拠から特定された2人の人物をすでに一週間前からマークしていました。

容疑者2名のうちの一人はアルジェリア国籍で、パリ・ドゴール空港からアルジェリア行のフライトに乗るところでした。空港行を察知した警察は、空港の国境警察に連絡しました。

航空会社のカウンターでチェックインしたことを確認した国境警察は、一旦は容疑者をパスポートコントロールで止めず、搭乗ゲートまで通過させます。

手荷物検査場で金属探知機を通過した容疑者が武器を所持していないことを確信した国境警察は、他の乗客への危害が及びことなく逮捕にいたりました。

パリ郊外、自宅にいた容疑者

もう一名はフランス国籍で、パリ郊外オーヴェルヴィリエ(Aubervilliers)の自宅で逮捕されました。この容疑者はアフリカのマリに逃亡する予定でした。

捜査官は、事件直後からバイクで逃亡する4人の犯人を、路上や高速道路の監視カメラ以外にも、銀行や企業、個人宅のものも含むおびただしい数の映像から割り出し、彼らが向かった地域を特定していました。

また、犯行に使われた自動リフト車のレンタル会社への聞き込みで、犯人は偽名を使ってレンタルし、さらに車を配達することになっていた同社の社員を脅迫していたことも明らかになっています。

セミプロレベルの窃盗犯、現場に多くの証拠品

犯罪の専門家で、警備及び危機管理コンサルタントのドーロン・レヴィー(Doron Lévy)氏は、フランスの空港から逃亡しようとすること自体「ド素人」のミス、だとコメントしています。

現場に置かれていた電動梯子に放置されたガソリン缶から、予定では証拠品はすべて燃やすはずだったようですが、逃亡の際にパニックして火をつけずに置き去っていました。

前科があるため、DNA鑑定によって特定される可能性があることは予知できるため、プロはいったんベルギーなど他国に車で移動し、そこから海外へ逃亡するのが常道、と同氏は指摘しています。

今回の強盗は警備の穴や経路など、事前情報を収集し計画されていますが、レヴィー氏は、「犯罪シンジケートといった組織の犯行ではない」とみています。

ターゲット選びを誤った、犯罪専門家

同氏はさらに、その辺のタバコ屋を襲うのとルーブルでは訳が違い、警察が国の威信をかけてどれだけ躍起になって捜査するか、さらに世界中が盗品の行方に注目するなど、その反響の大きさに、後日慌てたのではないかと述べています。

犯罪学専門家のティエリー・コロンビエ(Thierry Colombié)氏は、レヴィー氏の意見に同調し「ルーブル美術館に強盗に入ることがどういうことかわかっておらず、ターゲットを間違えたのでは」と述べています。

唯一無二の文化遺産である宝石の転売は困難で、宝石をはずして金を溶かして売るには、専門家の協力が必要になります。

検察がこの事件を「犯罪組織によるもの」と特定するかどうかは、今後の捜査にかかっています。

 

文化遺産窃盗の刑、せいぜい7年、武器で脅したかが焦点

犯人が捕まり有罪となった場合の刑は、通常3年から20年の禁固刑及び罰金とされています。

国の文化遺産に指定された物品を盗んだ場合、最も刑が軽くて7年の禁固刑、罰金10万ユーロ(約1770万円/1ユーロ=約177円)ですが、犯行時に武器で脅迫したことが立証された場合、最高で20年、罰金15万ユーロ(約2,655万円)になります。警察は、「犯人はディスクグラインダーで監視員を脅した」と記録しています。

残る二人の犯人と、肝心の宝石は見つかるのでしょうか?今後の捜査の進展が注目されます。

執筆:マダム・カトウ

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