フランス南西部で40℃ 猛暑対策に屋根を白く塗る効果はあるのか

2025.08.15

2025年8月15日(金)、6月の猛暑に続き先週から猛暑再来のフランスでは、各地で最高気温が30℃を超える日が続いています。南西フランスでは今週末も最高気温が40℃を超える警戒警報が出されています。クーラーの普及も進む中、費用や技術的な問題、環境への弊害などから、様々な猛暑対策が取られています。

 

コンクリート、石造り、冬の寒さ対策が中心だった建物

フランスの建物は、これまで主に冬の寒さをしのぐことを考慮して設計されてきました。古い建物は石造り、近年のものは鉄筋コンクリートが中心になっています。

地方により、地元の気候や手に入る石などの材料でできた特徴的な家々があります。南西フランスでは赤い屋根、ベルギー国境付近の赤レンガの家、ノルマンディー地方の黒い石でできた家などがその例です。

近年の建物では、オフィスビルや駅構内、イベント会場などに至るまで、自然光を最大限に取り入れることを中心に設計され、ガラス張りのビルや建物が目立ちます。

2003年の猛暑から進まなかった猛暑対策

2003年8月の猛暑は、パリの一人暮らしの高齢者数千人を含め、全国で15,000人の死者を出しました。この時から、断熱材の乏しい古いアパートや高齢者向け施設にクーラーがないことが問題視され始めました。

しかしながら、政府の温暖化対策は進まず、ここ数年猛暑が顕著になりはじめ、公民問わず対策が急を要するようになりました。

 

屋根を白く塗れ!

ヨーロッパで、もともと暑い国、ギリシャの島々の家は真っ白に塗られています。

白が光を反射することは周知されていますが、この効果を利用し建物の屋根を白く塗ることが、最も安価で手っ取り早い効果が得られるとして、数年前からフランスで注目されています。

年間の晴れの日がフランス一多いことでも知られる南仏のモンペリエ(Montpellier)市で戸建ての高齢者向け住宅に住むジョセフィーヌ・ガルシアさん(Joséphine Garcia)は、住宅の屋根が白く塗られて以来、設置されているクーラーを利用することがなくなりました。

光を90%反射、効果は-5℃

白い屋根は光を90%反射するため、家の中の気温は塗る前より4~6℃も低くなっているのです。

この公営住宅を運営するCDCアビタ社(CDC Habitat)は、一戸当たりの費用が1,700ユーロ(約29万円/1ユーロ=172円)、全15戸で25,000ユーロ(約430万円)と比較的安価であることから導入しました。

同社の設備責任者ラファエル・フルモン(Raphaël Fourmond)氏によれば、効果を維持するためには汚れやほこりを掃除すればよく、月々のメンテナンス費用もかからないことが決め手になったようです。

費用対効果抜群の白ペンキ塗りですが、残念ながらすべての建物に効果があるわけではありません。

恩恵にあずかれるのは、屋根の下のみ

平屋なら-5℃以上の効果を発揮できますが、マンションなど階層になっている場合、効果は塗った屋根のすぐ下にしかでません。

つまり、フランスに多い5階以上のアパートやマンションでは、最上階のみがこの白ペンキの恩恵にあずかれるわけです。

確かに最上階が最も暑いのですが、集合住宅の場合、最上階の住人だけのために費用をかけるのか?という議論が発生します。

倉庫や工場に最適

一方、工場や工房といった平屋の建物には適しており、中で働く人の労働環境を大いに改善するため、導入企業が増えています。

建築技師のエミリー・エルゴット(Émilie Hergott)氏によれば、この手法は、倉庫、スーパーマーケット、イベント会場など大きなホール、工場などに適しています。

 

「街の美観維持」で白ペンキに「待った」も

効果が最大限に現れる平屋建ての一軒家だからといって、簡単に屋根の色を白に塗り替えれられる、というわけにもいきません。市町村によっては街の美観規定があり、古くからの屋根の色を勝手に変えることはできません。

酷暑で40℃前後の気温が続く南西フランスのトゥールーズ(Toulouse)市、旧市街は赤いテラコッタの屋根が特徴で、古くから「バラ色の街(La Ville Rose)」と呼ばれています。

屋根を白く塗ることはこの町の「象徴」に触れることになりそうです。

美しい「パリの屋根」の下は「酷暑」

パリの街並みの象徴となっている「パリの屋根(le toit de Paris)」と呼ばれる独特の屋根があります。この銀青色の屋根は、軽くて加工しやすく、防水、耐久性に優れているという理由で亜鉛(zinc)でできています。

19世紀、ナポレオン三世時代に行われたオスマン(Haussmann)の都市改造で普及しました。

オスマン建築の屋根にも、この銀青色の屋根が多く使用されています。美しい外観とは裏腹に、最上階にあるかつて女中部屋だった屋根裏部屋は、夏の室内温度が40℃近くにまであがります。

薄暗い部屋を明るくするために作られた天窓からは、日中直射日光が取り入れられ、さらに室温をあげています。

個人宅へのクーラー設置も「ハードル高く」

フランスの建物にはクーラーの排熱用の穴がないため、排熱間は窓から出すか、本格的なクーラーの設置には壁の穴をあける必要がありますが、それには管理組合の許可が必要になります。

しかも美観指定地区では、道路側に排熱用のファンを取り付けることはできないなど、さらにハードルが高くなっています。

執筆:マダム・カトウ

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