2025年6月10日(火)、仏動物保護団体「L214」は、動物保護の観点のみならず、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減のためにもフランスにおける肉の消費量を半減すべきだと警鐘を鳴らしています。
フランス人一人当たりの肉の消費量、年80㎏、世界平均の2倍
L214は、2030年までにフランスにおける肉の消費量を半減することで、温室効果ガスの削減に効果があると発表しました。
同団体によると、フランス人の年間一人当たりの肉の消費用は83,5キロ、これは世界平均の約2倍にあたります。(ちなみに、総務省の数値によると日本人一人当たりは年約16,5キロ:農畜産業機構サイトより)
L214代表のブリジット・ゴチエール(Brigitte Gothière)氏は、同団体が16年間活動を続けている中で、「オスのひよこの殺処分など、最も残酷なやり方がわずかに減少した以外、動物を犠牲にした肉の消費量はほとんど減っていない」と嘆いています。
多くのフランス人は、「肉の消費量が減った」というが・・・
ここ10年ほどでベジタリアンや肉や魚に加えて卵や乳製品も食べない「ヴィーガン」が急速に増えています。
肉食をする人の中にも、インフレで「肉が高くて買えない」といった理由で肉を食べる頻度や量が減った、さらに牛肉や豚肉など赤肉の食べ過ぎは、成人病リスクを上げるといった研究発表などから、健康のために消費を控える人も増えました。
しかしながら、同団体によると、フランス国内における肉の消費量に大幅な減少がみられておらず、2010年で89.9キロ、2021年で89.2キロと10年間でわずか700グラム減ったにすぎません。
牛肉から鶏肉にシフト
フランス農業会議所(Chambre d’agriculture)の数値も、動物保護団体が発表した傾向を裏付けています。
1980年から2021年までの約40年間で、フランス人一人当たりの肉の年間消費量は、15キロ減っています。たしかに牛肉(子牛肉含む)は3分の一減り、豚肉は半減、ヤギやウサギは大幅減となりました。
ところが、その分を補うかのように、鶏肉の消費量が大幅に増えているのです、
「調理の手軽さ」も重視
鶏肉は主にササミが、牛肉は脂身をまぜてミンチにしてハンバーグ用に成形されたものなどが、調理の手軽さから販売量が大幅にのびています。
それ以外の牛肉はシチューにすることが多く、羊肉や豚肉は比較的手間をかけて調理する必要があることも、消費減の理由の一つになっています。
一人当たりの消費量減も、国全体の消費量は増加
2000年から21年までの20年間で比較すると、牛肉はわずか1%減、ヤギ肉は8%増、豚肉は2%増、そして鶏肉は実に122%と倍増しています。
理由は、過去20年間、フランスの人口が毎年約0.3%から0.4%増えていることです。
確かに一人当たりの肉の消費量は減っているものの、フランス全体の消費量は増えているのです。
集約畜産、今こそ「おもいきって」廃止を
家畜を密集・大量飼育する「集約畜産」が主流の豚肉に関して、フランスはほぼ100%自給自足できており、国内市場で余る分を輸出しています。
L214は、毎年フランスで屠殺される豚肉2,200万頭を半分の1,100万に減らすだけで、水源の汚染を改善し、余った土地を農業用地に回すことで、自給率を上げることができると主張し、集約畜産の全面的な廃止を訴えています。
超加工食品に隠された「肉」
肥満や糖尿病、がんや心臓病などの原因をつくると、ハムやベーコンなどの加工肉および、レトルトや冷凍食品などにみられる超加工食品が問題視されています。
L214は、スーパーの店内を「埋めつくす」超加工食品の中に、集約畜産で作られた「健康にわるい安い肉が利用されている」と警鐘をならしています。
確かに「精肉」の消費量がへっても、冷凍食品など電子レンジで温めるだけの超加工食品の消費が増えれば、肉の消費量が増えることになります。
政府、集約畜産規制に「消極的」
集約畜産では狭い土地に家畜を密集させて飼育するため、家畜に残酷な環境だけでなく、安い飼料で脂肪分も多く、抗生物質を投与をするため健康への影響も懸念されています。
同団体は、国民の健康に直結する問題にもかかわらず、精肉業界や農業組合のロビー活動の影響で、集約畜産の規制に消極的な政府の姿勢を問題視しています。
執筆:マダム・カトウ