パリ『グレヴァン蝋人形館』マクロン大統領誘拐のワケ

2025.06.06

2025年6月6日(金)、今月1日にパリのグレヴァン蝋人形館(musée Grévin)から盗まれたマクロン大統領の蝋人形は、ロシア大使館前に設置された後、翌日夕方、フランス電力会社EDF本社の前に「返却」されました。犯行を行った非政府系自然・環境保護団体「グリーンピース」は、電力を中心としたフランスとロシアの経済的つながりを告発することが目的でした。

 

グリーンピース活動家ら、観光客のふりをして蝋人形館に侵入

警察からの情報によると、犯行当日、女性2人と男性一人が観光客を装ってグレヴァン蝋人形館に入場したのち、館内で着替えた上で、今度は同館の職員のふりをして、カバーをかけて隠したマクロン大統領の蝋人形を非常口から運び出したとみられています。

蝋人形館の広報担当によると、犯行メンバーの一人が館内エレベーターのバリアフリー対応に関する質問をして警備員の注意をそらす間、別の二人は清掃員のシャツに着替えていました。

ちょっと借りただけ?

犯行後、活動家らはグレヴァン館にすぐ連絡し、この4万ユーロ(約650万円/1ユーロ=約163円)の価値がある大統領の像を「無傷で返還する」と保証したとのことです。

 

フランス大統領像、ロシア大使館の前でロシア国旗と「撮影」

盗まれたマクロン大統領の像は、パリ1区にあるロシア大使館前に運ばれました。

活動家らは像の背景にロシア国旗を広げ、一人は「ビジネスはビジネス」(”Business is Business”)と書いた蛍光色のプラカードを掲げ、別の二人はニセのお札をばらまくという演出を行いました。

たまたまその場にいたジャーナリストによると、その間わずか数分間だったとのことです。

フランス電力前で返還、ロシア産のガスやウラニウムの購入停止訴え

大統領像は、翌日2日(火)の夕方、フランス電力EDF本社前で警察の厳重な警備の元、無事蝋人形館側に返還されました。

グリーンピース・フランスのジャン=フランソワ・ジュリアール(Jean-François Julliard)氏は、返還に先立ち、同団体はグレヴァン館と警察に連絡し、この「身柄引き渡し」場所に引き取りにくるよう連絡したと述べました。

マクロン大統領像は返還の前の数分間、EDF社の前庭に「マクロン-プーチン、放射能いっぱいの同盟者」と書いたプラカードと共に立てられていました。

 

ロシアへの経済制裁で、マクロン大統領は「二枚舌」ーグリーンピース

ロシア侵攻のウクライナへの支援を表明し、ロシアへの経済制裁を強く訴えているマクロン大統領ですが、一方でフランス企業がロシアとの通商を継続することを「奨励している」と、ジュリアール氏は主張しています。

同氏はさらに、マクロン大統領をターゲットにしたことについて、「彼こそが欧州議会でEU諸国とロシアとの通商断絶を進める第一人者となるべきだからだ」と述べています。

 

蝋人形館の「政治家誘拐」過去にも

今回の誘拐劇、「前代未聞の事件」とおもいきや、実は今回が初めてではありません。

1980年代に、ジスカール・デスタン(Valéry Giscard d’Estaing)大統領像が、オートバイへの課税導入に反対するバイカーたちに「誘拐」され、抗議デモ隊のサイドカーに乗せられてパリを一周しています。

また、シラク(Jacques Chirac)大統領の像はパリ市長時代に、学生たちによりクリスマス前に盗まれ、数日後、ヴァンセンヌ動物園で発見されています。

マクロン大統領、誘拐されている間も「石のように」動かなかったとか。この像、実物よりニコニコしていいなと思ったのは私だけでしょうか。

パリ9区のグレヴァン蝋人形館で再び見ることができます。

執筆:マダム・カトウ

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