2024年10月7日(火)、フランス国民議会で来年度予算案提出を前に、バルニエ新首相(Michel Barnier)が財政赤字の立て直しに「一部増税もあり」と発言したことから、これに反対するアタル前首相(Gabriel Attal)、ダルマナン前内務相(Gérard Darmanin)が「増税より節約」をと、現在の週35時間法の改正を提案するなどで議論を醸し出しています。
増税なき財政赤字減らし、週35時間労働、失業保険もターゲット
アタル前首相は自分の後任者が「財政赤字を増税で穴埋めしようとしている」と批判、「節税による穴埋め」をダルマナン前内務相と共に「増税なき財政赤字改善」というマクロン大統領の公約を達成しようと試みています。
ダルマナン前内務相は、フランス有力経済紙「レゼコー」(Les Echos)のインタビューで、フランス人は「もっと労働すべき」と発言し、公務員、民間企業にかかわらず週35時間労働を改正し、36、37時間など労働時間の延長を提案しました。
会計監査院は公務員の労働時間の延長で10億ユーロ(約1兆6,252億円)が節約できると指摘しています。
元与党による中道連合アンサンブル(Ensemble!)は、確かに節税案を議会に提案することにはなっていますが、すでに党内でもコンセンサスが取れていないのが現状です。
失業保険、受給期間を3か月短縮で35憶ユーロ節約
アタル前首相は、6月の突然の国民議会解散前に予定されていた失業保険などの見直しに関しては、「首相が政令にサインするだけ」の状態になっていると述べています。
改正されると、57歳未満の失業者の失業保険受給期間は最長で現在の18か月から15か月と3カ月短縮されます。受給資格は現在のところ過去24カ月間で6カ月だけ働けばよかったものを、過去20カ月間で8カ月以上働くことが必要になります。
前首相によると、「労働意欲を促す」ことを目的として改正が実現すれば、35憶ユーロ(約3680億円/1ユーロ=約162円)の節約が見込めます。
公務員の病気休暇の改正
フランスでは病欠しても有給休暇を使いません。
これは公務員でも民間でも同じで、欠勤日の給与分の一部は健康保険から支給されます。ただし、公務員は一日目は受給対象外期間として支払われません。
民間には3日間の対象外期間がありますが、業種別労働協約により、働いている企業の業種によって、健康保険が支給しない分を66%~100%企業が埋め合わせすることになり、労働者のお財布はほとんど痛まない仕組みになっています。
公立大学で外国人学生の授業料を値上げ
フランスの公立大学では授業料は無料、学生は毎年103ユーロ(約16,700円)を払うのみです。
2019年にEU加盟国以外の国の学生が支払う申し込み料が別途設定され、学部や課程により異なりますが、175ユーロ(約28,400円)~618ユーロ(約10万円)、医学部や薬学部に関しては、年間1,900ユーロ(約308,000円)~2,850ユーロ(約462,000円)の授業料が課されます。
実際には学生一人当たり最低でも年間10,000ユーロ(約162万円)かかる学費を、フランス政府は肩代わりしているのです。
フランス国民への直接的な増税を回避しようと、あの手この手という感じですが、国民議会での来年度予算の議論がどうなるかが注目されます。
執筆:マダム・カトウ