2024年7月30日、五輪開会式のフィナーレを飾るのはお決まりの「聖火台」への点火ですが、市中開催のみならず史上初だらけのパリ五輪の開会式に登場したのは「空に浮かぶ聖火台」です。五輪期間中ルーブル美術館に隣接するチュイルリー公園内に設置されたこの不思議な聖火台を一目見ようと観光客や市民が多数訪れています。しかし、公園内に入って見るには予約が必要で、用意された10万人分の無料入場券はすでに終了し、延長を求める声が上がっています。
空に浮かぶ聖火、実はLED仕掛けのイリュージョン、CO2排出なし
開会式の最後、柔道で3大会連続の金メダリスト、テディ―・リネール(Teddy Riner)とバルセロナ、アトランタ五輪で3つの金メダルを取ったマリー=ジョー・ペレック(Marie-Jo Pérec)が聖火台を点灯しました。
気球というものは、「ガスを焚いて出した暖かい空気の力で空に浮かぶ」というのが常識ですが、「エコロジー」をテーマにした今大会では、電気仕掛けを利用しています。
大きなリング状の聖火台には40のLEDパネルがオレンジ色の光を出し、その周りは噴霧器からでた水が煙のように上がり、これが燃え上がる炎のように見えます。
ちなみに水の消費量は1時間につき最大3平方メートル、電力のほうは1日あたり最大35キロワットとなっています。
ギリシャ神話にインスピレーション、
この斬新なコンセプトで聖火台をデザインしたのは、マチュー・レアナール(Mathieu Lehanneur)氏です。まず第一に「聖火が皆に見えるようにしたかった」そうで、気球になった理由は、ギリシャ神話の中の「オリンピアの火が空から降りてきた」という一文にヒントを得て、「空に浮かべる」、よって「気球に載せる」というアイディアがすぐに浮かんだそうです。
気球の発明家「モンゴルフィエール兄弟へのオマージュ」は後付け
フランスメディアでは、フランス語で気球を意味する”mongolfière”を発明した、モンゴルフィエール(Montgolfier)兄弟への「オマージュ」だという説も出回っていました。
1783年、世界で初めて人間が空を飛ぶという偉業を成しとげたのは、兄ジョセフ=ミッシェル(Joseph-Michel)と弟ジャック=エチエンヌ(Jaques=Etienne)の2人ですが、レアナール氏は、聖火台をデザインした時、まったくこの兄弟のことは頭になかったようです。
同氏は「偶然の結果、開催国フランスの偉大な発明家への敬意も表した形になった」と述べています。
聖火台鑑賞に予約殺到、8月10日の最終日まで満員御礼
チュイルリー公園内のこの聖火気球を直近で見るためには予約が必要ですが、8月10日の最終日まで、1日1万人の予約枠はすでに一杯です。
鑑賞は、11時から19時まで、15分につき300人の枠に区切られています。
毎日日没後は遠くからも見える!
毎日日没から午前2時まで、聖火気球は最大30メートルの高さまで上昇します。数百メートル先からでも鑑賞することができます。入場券がなくてもあきらめないで近くまでお出かけください。
執筆:マダム・カトウ