2024年2月27日(火)、フランスの学校で、差別やいじめ対策の一環としてユニフォームの導入が検討されていますが、昨日26日より一部の学校でテスト導入が開始されました。
フランス全国92校でテスト導入
冬休み明けの26日(月)朝、南西フランス、ベジエ(Béziers)市の4つの学校では、732人の児童がお揃いの制服で登校しました。
ユニフォームは、黒のズボンかスカート、グレーのVネックのセーター、胸にベジエ市の紋章と学校名をあしらったワッペンを付けた紺のブレザーです。市役所の情報によると、女子はズボンかスカートのどちらかを児童に選択させたところ、80%がスカートを選んだようです。
フランス各地で希望する学校がテスト導入に手を上げていましたが、多くの学校はユニフォームの準備が間に合わなかったため、ベジエ市が他に先駆けて一番乗りとなりました。同市は、市の清掃やメンテナンスなど作業員の制服を注文している企業に、今回のユニフォームも依頼しています。
4校のうちの一つ、シュヴァリエール(Chevalière)小学校のセリア(Célya)ちゃんは、「ハリーポッターの世界にいるみたいで、すごくいい」と喜びの声をあげています。
80%の父兄がテスト導入に賛成、ベジエ市
父兄のフレデリック(Frédérique)さんは、「うちの娘たちにとっては、校章の付いた同じ服を着ることは、同じグループへの帰属意識を育むこと」で、最初、学校から(制服導入に対しての)意見を聞かれたときは「9歳の娘たちがこういった意識を持てるようになるのか疑問でした」とのこと。そして、自分の意見を押し付けないで9歳の双子の娘たちに意見を聞いたところ、娘たちは学校で「皆が同じ格好をすることがうれしい」と、好意的な意見だったそうです。
学校内のハラスメントの軽減を期待
また、同校に子供が通うクリステル(Christelle)さんは、「子供たちの間で妬みや、喧嘩がしょっちゅうあるから、制服の導入によって、そういった揉め事が減ることを期待しています。」と、コメントしています。
極右保守で知られるメナール(Robert Ménard)市長は、「制服の導入が学校内で起こる問題のすべてを消し去るとは思っていないが、学校を『聖域』にすることで少なくとも格差や個々の違いは隠されると思う」と述べています。
セリアちゃんも学校でのハラスメントについて、「制服を着ると服装で人を馬鹿にしたりすることができなくなるからいい。今までそういうことが起こっていたから」と自らもコメントしています。
さらに、フレデリックさんは「明日、娘になにを着せようか考えなくて済む」と制服の至便性を歓迎しています。
一方、先生たちはユニフォームの導入を歓迎していないようです。
予算の無駄遣い?生徒一人当たり200ユーロ
「制服の導入は意味がない」と言うベジエの学校教師組合(SNUipp-FSU)員のルイーズ・カルドネール(Louise Cardoner)氏は、「導入されて学校内の問題が解決したという前例がない」し、「学校で使える予算の確保がいかに困難かを考えると、生徒一人あたり200ユーロ(約32,000円/1ユーロ=160円)もの費用は、ほかにもっと有意義な使い道がある」と痛烈に批判しています。
つまり制服の導入は、市の予算など公費で賄われ、各児童の家庭での負担は一切ありません。
「導入の主旨には賛成だが、あまりにも短期間で決定した」という先生の一人、コーランタン・ラトナ(Corentin Ratonnat)さんは、制服導入後の効果を教師が「評価」すると言われたが、どのように「評価していいのか分からない」ため賛成には投票しませんでした。
ある父兄は、「学校の前の道には歩道がないから危険だと、もう10年は言い続けているが、一向に改善されない」と、制服導入が「児童の安全確保」より優先されたことに不満を漏らしています。
制服着用が校則に、追加注文は自費
テスト導入は二年間行われます。導入した学校は校則に「制服着用のこと」という一文を追加しています。
導入時の制服代は無料ですが、子供が成長してサイズが合わなくなったり、破れたりした場合は個人負担になります。ベジエ市では、制服業者に追加注文分の値段は、導入時と同じに据え置く契約を結んでいます。
2026年からフランス全国で制服導入も
制服が当たり前の日本でハラスメントや校内暴力が「なくなっていない」ことを考えると、どのぐらい効果があるのか疑問ですが、テスト期間後の「評価」次第では、2026年からフランス全国で導入されることになります。
執筆:マダム・カトウ