2023年10月6日(火)、パリ市は来年からホテルなどの宿泊客から徴収する宿泊税の上限を無くし、現在対象となっている宿泊施設のうち、通称「パラス」(palace)と呼ばれる最高級ホテルおよび観光客向け家具付きアパートを対象に、約200%の値上げを検討しています。現行の金額が3倍になる大幅値上げに、ホテル業界は反対しています。
パリ交通財政の穴埋め、観光客から徴収
フランスで宿泊客に課される宿泊税はホテルの星の数(等級)により異なりますが、パリ市および近郊のイル=ド=フランス(Île-de-France)では現在一人一泊あたり、1ツ星から5ツ星までのホテルで1ユーロ(約157円/1ユーロ=約157円)から3.75ユーロ(約590円)、最高級ホテルで5ユーロ(約755円)となっています。
この税額を200%値上げすることを可能にする内容が、イル=ド=フランス・モビリテ公社(Ile-de-France Mobilités : IDFM)の社長、ヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)とフランス交通担当大臣クレモン・ボーヌ(Clément Beaune)の間で交わされた取り決めに盛り込まれています。
3倍に値上げ、交通担当大臣と合意
それによると、「2024年1月1日から徴収される宿泊税の追加分(上限200%)の一部をこのIDFM社に支給する」とされています。
200%の値上げが行われた場合、来年1月からの宿泊税は現行の税額の3倍になってしまいます。
例えば、パラスに4泊した場合、200%の値上げで1泊あたり10ユーロが追加され15ユーロとなるため、宿泊税だけで合計60ユーロ(約9,500円)も支払うことになります。
パリ市、五輪待たずに「重税」で金メダル ホテル業界
これに反発するフランスホテル業連盟(Union des métiers et des industries de l’hôtellerie : Umih)は、「ホテル業界に対してなんの打診もなく一方的に決断されたこの値上げにより、長い目で見てフランス第一の観光および出張デスティネーションの競争力を失わせる」と声明を出しました。
連盟の委員長、ヴェロニク・シーゲル(Véronique Siegel)氏は、増税であれば「ずっと空きのままにされたアパートやオフィスなどのオーナーに課税する」といった別の方法があるはずだと主張しています。
また、フランスのほとんどのホテルチェーンが加盟する、チェーンホテル団体(Groupement des hôtelleries et restaurations de France : GHR)は、「(今回の値上げで)パリが世界でもっとも宿泊税の高い街になる」と警鐘を鳴らしています。
同団体の代表ディディエ・シェネ(Didier Chenet)氏はまた、ホテル業界はすでに売上の40%を人件費に使っており、今年も値上げされた「公共交通費の会社負担(50%)も増えています」と述べています。
パリ市年末まで2億5,000万ユーロが不足
パリの交通財源だけでなく、パリ市自体も今年1年間の収支を「健全」にするために、2億5000万ユーロ(約393億円)が不足しています。
パリ市議会議員のレミ・フェロ(Rémi Féraud)はその理由について、「支出が大幅に増えたのではなく、コロナ禍で財源が減ったことに加え、国からの予算が削られたため」と説明しています。
同氏は国に対し、パリの「都市としての魅力をもっと加味して予算配分をすべきだ」と主張しています。
執筆:マダム・カトウ