パリ五輪2024、どうなるセーヌ川のバトームーシュ

2023.04.28

2023年4月28日(金)、来年のパリ五輪の開会式はスタジアムではなく、オリンピック史上初の試みとなる、市中しかもセーヌ河畔での開催となります。開会式に加え一部の競技も行われますが、セーヌ川には観光船など多数の船舶の往来に加え、市中開催によるセキュリティの問題など、その準備も前代未聞の大掛かりなものになっています。

 

セーヌ河畔に観客60万人

来年7月26日に行われるパリ五輪の開会式は「セーヌ河畔が舞台となり、選手団が船で入場するという前代未聞の演出になる」と昨年発表された際は、パリ市民だけでなく世界中の注目を集めました。

そして現在、この壮大な計画の準備が進められていますが、参加する選手だけでも1万500人、さらに河畔に60万人もの観客を集めた開会式は、まるでローマ帝国時代の競技会レベルの大規模なものになります。

開会式に116隻、ほぼ全てパリの船で

パリの中心を流れるセーヌ川には、観光船バトー・ムーシュ(Bateaux Mouches)や貨物船など、ペニッシュ(péniche)と呼ばれる底の平たい川舟が100隻以上往来し、平時でも混雑しています。

さらに停泊したままの船上レストランや、パリ市民の住居として改装された停泊船もあります。これらのすべての船は開会式の間運行を停止し、場合によっては停泊船を別の場所に移動しなくてはなりません。

オリンピック運営委員会によると、選手団入場にはペニッシュが116隻必要になりますが、全体の98%はパリおよび近郊の船でまかなわれます。

これに加え、選手団の船に近づいて撮影するテレビ放映およびマスコミ用の船も多数必要になります。

パリの河川で商業、および文化活動を行う船舶が所属する港湾協会の会長オリヴィエ・ジャメ(Olivier Jamey)氏は、河岸の観客に選手たちがよく見えるように、テラスが広いペニッシュに乗せるのは当然ですが、この条件を満たすいくつかの船は「すでに(大会用に)選ばれている」と話しています。

 

選手入場に必須の船、ほぼ「召し上げ」、選手団の国籍は「内緒」

セーヌ河畔の船上レストランで働くナタン(Nathan)さんは「うちの店のオーナーにオリンピック選手団を乗せると聞いたけど、どこの国の選手団かはセキュリティのため直前まで知らされないらしい」と面白がっています。

オリンピック運営委員会は、「すべての船舶業者にかかる料金は定額で、平等かつ透明性を大前提にしています」とコメントし、こうやって「地元」の積極参加を促しています。

選手団入場は「船のピストン輸送」

ペニッシュを10隻ほど所有するパリ・セーヌ(Paris Seine)社は、大会用の船は、レンタルされるというより開会前に「有料で召し上げられる」に近いとコメントしています。

同社の船のうち選手団を運ぶ6隻に関しては「舞台演出さながら」の緻密な計算のもとにピストン輸送を行うため、開会式前の1週間はひたすら運行練習に費やされます。

 

パリ五輪、セーヌ河岸の「負け組」は…

セーヌ河岸でのオープニングセレモニーは、観客や選手およびその運送に選ばれた船舶業者やスタッフ達にとってワクワクするイベントですが、その恩恵に預かれない人たちもいます。

船上レストランのオーナー、クロエ(Chloé)さんは「うちの船には広いテラスもないし、そもそもモーターがついてないから選手運送には使えない」とため息をついています。

しかも「治安維持」の問題で、開会式とその準備期間、および競技開催中のレストランの営業は禁止され、従業員が河岸にアクセスすることもできません。

セレモニーに起用されない船舶の敗者復活法としては、大会中のVIP客の手配を行うOn Location社に選ばれて宿泊や貸切で利用されることですが、採用されれば料金が支払われ、そうでなければ賠償金をもらう代わりに閉めるか移動させられるかのいずれかになります。

 

どうなる?セーヌ川の住民

セーヌ川に風情を醸しだすハウスボート、住居として一般市民に利用されている船舶は、パリ市内に約100隻ほどあるようです。そのうち、大会の運営に支障をきたすとみなされた21隻については、大会期間中にパリ郊外のブーローニュ=ビヤンクール(Boulogne-Billancourt)市に移動することが決まっています。

移動はパリ県警とパリ市のオリンピック運営委員会が連携して行い、移動費用の負担はありません。

住民は移動された船に住むこともできますが、希望すれば委員会負担でホテルに滞在することもできます。

 

穀物の河川運搬ピーク、土木工事にも影響

7月末から8月にかけて行われるパリ五輪の開催期間は、穀物の河川運送のピーク時期と重なること、また土木工事の廃材の運送にも河川運搬は欠かせないことから、貨物船舶運送業者は懸念を募らせています。

執筆:マダム・カトウ

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