フランス政府認定のDELF(Diplôme dʼétudes en langue française)B2は、中級者向けのフランス語能力試験です。
このシリーズ記事では、DELF B2試験の内容や対策をご紹介しています。第6回目の今回は、DELF B2の口頭(Production orale)試験の内容を徹底的に分析します。
(シリーズ第1回ではDELF B2試験の基本情報を、第2回では過去問と参考書について、第3回ではリスニング試験、第4回では筆記試験、第5回では作文試験の特徴と対策をそれぞれ紹介しています。ぜひそちらもご覧ください)
DELF B2の口頭試験
第1回の記事で見たように、DELF B2試験では、筆記試験に加えて口頭試験が行われます。このセクションでは、口頭表現(Production orale)が試験されます。
口頭試験の内容
口頭試験では、約20分間で1つのテーマに関する2つの課題に答えます。
前半 ある論拠の弁護(Défense d’un point de vue argumenté):5〜7分で与えられたテキストの論点をまとめ、それについての自分の意見を述べる
後半 議論(Débat):同じテーマについて、試験官とやり取りしながら自分の意見を展開する。
合計20分間のやりとりに対し、30分間の準備時間があります。
幅広いテーマ
過去問にあるテーマは以下のように幅広いです。
―学校は保護者に多くを求めすぎているか? L’école en demande-t-elle trop aux parents ?
―仕事とは幸福か? Est-ce que le travail, c’est le bonheur ?
―大学(Université)の役割とは、職業に備えることなのか? Le rôle de l’université est-il de préparer à un métier ?
―テレビなしで生活できるか? Peut-on vivre sans telé?
―テレワークは持続可能な解決策か? Le télétravail, une solution durable ?
教育、仕事・労働、科学技術などさまざまなジャンルについて、現代的な問題からクラシックな問題まで取り上げられていることがわかります。
テキストの出典はラ・クロワ(La Croix)やヴァン・ミニュット(20 minutes)などのメディアで、統計や専門家の意見などのリソースが含まれています。150語程度の分量です。
注意すべき点
上記のテーマをみると、一見、簡単に意見を述べられそうに思うかもしれません。しかし注意すべき点が2つあります。
DELF B2試験では、テーマについてゼロから自由に意見を述べて良いのではなく、与えられたテキストにある特定の見方を土台にしながら、自分の意見を展開する力が試されています。
1.「意見」の書かれたテキスト
DELF B2試験では単にテーマが与えられるのではなく、ある論者の意見や見方が表現されたテキストが出題されます。
よって試験の前半部分では、テキストをしっかり読み、どんな論拠に沿って意見を展開しているのかを理解したうえで、自分の言葉で表現し直す必要があります。
2.自分の意見を通す
後半部分では、自分の経験や知識を活かして、どんな意見を展開しても良いのですが、ひとつ条件が示されています。それは「自分の見方を弁護する(défendre)」こと。
試験官とのやり取りのなかで意見を二転三転させるのではなく、一定の論理で同じ主張を通す必要があります。
前半部分の対策
前半部分のテキスト要約と発表、後半部分の試験官とのやり取りに分けて対策をご紹介します。
語り手の意見をつかむ
前半ではまずテキストを読み込み、「語り手の立場(意見)」をつかむことが大切です。
例えば過去問の「学校は保護者に多くを求めすぎているか」にかんするテキストには、「子供時代に比べて、親の役割が増している」という引用があり、そのうえで「生徒と教師の関係をとりもつのに保護者は重要」といった意見が展開されています。
また「仕事とは幸福か」にかんするテキストでは、「仕事で幸福を感じるフランス人は以前よりも減少している」との事実が、新聞社の調査結果をもとに示されています。
要約する
以上のように、主張の根拠や立場を理解したら、次は第三者からの目線で内容を要約します。
例えば以下のような表現をつかって、「以下に述べることは私個人の意見ではない」ということを明確に示しましょう。
―Selon / D’après…(〜によると)
―Pour…(〜にとっては)
―Dans cet article / ce texte, une étude / statistique / enquête montre que…(この記事・テキスト中のある研究・統計・調査の示すところでは〜)
自分の言葉でまとめる
そして、示した内容を自分の言葉で表現しなおします。例えば以下のような表現ができます。
―Il s’agit que…(これ(前後の内容)はつまり〜)
―Cet étude / statistique / enquête / ce résultat montre que…(この研究・統計・調査・この結果が示すのは〜)
―Avec ces chiffres, l’auteur souligne que…(これらの数字で筆者が強調しているのは〜)
重要なのは「自分の言葉で」表現することです。できるだけテキストの読み上げにならないよう、記事の趣旨を簡潔にまとめましょう。
自分の意見を言う
ここまでステップを踏んだら、ようやく自分の意見を述べます。
すでにテキスト中の第三者の意見について話しているので、それに同意・反対したり批判したり、さまざまな議論が展開できるはずです。
以下のような表現をつかって、「自分の意見である」と主張することを忘れずに。
―Selon / D’après moi… / A mon avis,… (私の意見では〜)
―Je (ne) suis (pas) d’accord avec…(〜の意見に同意・反対する)
―Je (ne) comprends / partage (pas) l’argument / l’opinion de…(〜の議論・意見はよくわかる・わからない)
―Je suis pour / contre…(〜には賛成・反対である)
後半部分の対策
後半部分では、試験官とのやり取りを通じて、テーマにかんする議論を深めていきます。
ここではテキストにもとづきつつ、試験官の意見なども聞きながら、自分の主張を通していく力が求められます。
試験官の言うことが分からなかったら
「本番でどんな質問が飛んでくるのか…」「質問を理解できなかったらどうしよう」という不安をよく生徒さんから聞きます。
本番で試験官の言うことが分からなかったら、遠慮なく聞き返すか、以下のように理解を確認しながら議論を進めてください。
―Je ne suis pas sûr(e) si j’ai bien compris votre question, mais…(あなたの質問をしっかり理解できたかわかりませんが、〜)
ぜひこのマジックフレーズを使って、試験官とのやり取りを楽しんでください!
前半との共通点
前半はテキストの内容にもとづく議論でしたが、後半では試験官の話す内容をふまえて議論することになります。
ただし前半でも後半でも、自分以外の誰かの意見をふまえながら議論を展開するという点は共通しています。
よって後半でも、前項で紹介したような「〜によると」「私の意見では〜」といった表現を使うことができます。これらをフル活用して、口頭での理解力と表現力を発揮していってください!
まとめ
今回でDELF B2試験シリーズは終了です。B1試験に比べると、筆記・口頭ともにテキストの分量が増し、自分の意見を建設的に展開する力が問われているのが特徴です。
まずは今回の記事を参考に、ご自身で過去問に取り組んでみてくださいね!
DELF B2に合格する力を身につければ、日常生活はもちろん、「議論好きな」フランス語話者との会話を楽しめるようになるはずです。試験対策をきっかけに、皆様のフランス語力がアップすることを願っております。
最新情報を要チェック
本シリーズの記事は、フランス国民教育省が公開している過去問(リンク)を参照しています。
時間や形式などは変更される可能性があります。受験生の方は最新の情報をチェックすることをお忘れなく!
執筆あお