フランス政府認定のDELF(Diplôme dʼétudes en langue française)B2は、中級者向けのフランス語能力試験です。
このシリーズ記事では、DELF B2試験の内容や対策をご紹介しています。第3回目の今回は、DELF B2のリスニング試験を徹底的に分析します。
(シリーズ第1回ではDELF B2試験の基本情報、第2回では過去問と参考書について紹介しています。ぜひこちらもご覧ください)
DELF B2のリスニング試験
第1回の記事で見たように、筆記試験はリスニング(Compréhension de l’oral)・読解(Compréhension des écrits)・作文(Production écrite)の3セクションで構成されています。
リスニング試験の内容
リスニングは約30分で3つの問題が出題されます。最長で3分の録音が流れます(新しい出題形式では、自由記述が廃止されました)。
以下では過去問の内容を見ていきます。直近に受験を控えている方は、ぜひ自分で解いてから読んでみてください。
第1・2問の形式とテーマ
1・2問目はラジオ番組でのインタビュー、つまりvousをつかう関係での会話を聞き取ります。どちらも約3分の長さです。
司会(ラジオDJ)が質問していく形式ですが、内容のほとんどはインタビュイーの発言です。
1問目のテーマは「早起きとスポーツ」です。日常的なテーマですが、「早朝のスポーツは心理的にどのような効果があるか」「睡眠の習慣を変えようとすることは適切か」といった複雑な論点も含んでいます。
2問目のテーマは「仕事場でのフリーアドレス(固定席を持たずに自分の好きな席で働くこと)」です。アメリカ企業の具体例を出しながら、勤務形態の変化について紹介・議論しており、社会的な話題です。
第3問の形式とテーマ
3問目は、モノローグを3つ聞きとります。過去問では約1分半の長さで、イントロに司会が出てくる場合もありますが、内容はほとんど1名が説明していく形式です。
テーマは「少年向け雑誌」「ソーシャルゲーム」「感情をもつロボット」など社会的なものが多いです。短い音源のなかでテーマと論点を理解する必要があります。
対策1.長い音源の聞き取り方は
ここからは、リスニング試験の対策を構造面と内容面に分けて2つご紹介します。
なおDELF B1試験の対策コラムでも、リスニングの基本的な練習方法を解説しています。そちらもぜひ実践してみてください。
「ドミノ倒し」を避けたい…
第1問と第2問の音源は約3分と長いため、途中でつまずいてしまうとその後も「ドミノ倒し」のように全部わからなくなってしまう…という生徒さんの声をよく聞きます。
このような方に試していただきたいのが、これから紹介するトレーニングです。過去問でも参考書の例題でも良いので、一度自分で解いて答え合わせをした問題でぜひ試してみてください。
音源の構造をつかむ
まずトランスクリプション(読み上げられる原稿)を用意し、設問の答えにあたる部分を探していきます。例えばパラグラフごとにテキストを区切り、「設問1に対応する部分はパラグラフ2の1〜2行目」などのように印をつけていきます。
この作業を終えると、トランスクリプション全体のなかで答えに相当する部分がどのタイミングに出てくるかを理解できます。
約3分の音源に対し7つの設問が用意されていることを考えると、設問それぞれに対して20〜30秒ずつの内容が読まれていくはずですし、トランスクリプション全体を網羅するように設問が組まれていることが可視化できるでしょう(もちろん、多少の偏りはあるはずですが)。
次の設問へと目線を移す
ここまででトランスクリプションの構造を把握しました。次は、それぞれの設問に目線を合わせながら、対応する音源を聞き取る練習をします。つまり、20〜30秒ごとに、目線をどんどん次の設問に移していくということです。
うまく目線を合わせられていれば、目から入ってくる情報(問題文)と耳から入ってくる情報(音源)が一致しますね。音源を聞きながら問題文を読み、設問に合った情報を探しやすくなります。
分からなくても、どんどん次へ!
B2試験のようにある程度の分量がある音源を聞いていると、知らない単語やすぐには意味の分からないフレーズなどがしばしば出てきます。
そのときに「今の単語/フレーズはどんな意味?」「設問の答えは…」と考え込んでしまうと、音源はどんどん先に進んでしまいます。そうすると目から入ってくる情報と耳から入ってくる情報がずれてしまいます。
このような事態を避けるべく、多少は理解できない部分があったとしても「20〜30秒ごとに目線を下に移す」ことだけは続けるように心がけましょう。設問は難易度の順に並んでいるわけではないので、答えられる設問を逃さずに済みます。
対策2.フランス語圏の社会ニュースにふれる
内容面では、目からも耳からも積極的にフランス語圏のニュースに触れることが大切です。
リスニング試験の音源は、フランス語圏の一般メディアから取られていることが多いです。この記事で見てきたようなテーマは、まさにその時のフランス語圏で話題になっているものです。
音でも情報収集
重要なのは、新聞記事などを読むだけではなく声に出してみたり、ラジオを聞くなどして音の情報と結びつけておくことです。
例えば過去問に出てきた「ソーシャルゲーム」は、フランス語ではles jeux de sociétéです。「société(社会/ソーシャル)」や「jeux(ゲーム)」とあるので文字を見れば確かに意味を想像できますが、「レジュドゥソシエテ」と聞いて即座にソーシャルゲームを思い浮かべるのは難しいですよね。
そこで動画やラジオを活用して、どんな発音をしているか、どのような言い換え表現があるかを確認しておき、音として情報が入ってきたときにも意味がわかるようにしておくのです。テレビ番組の動画も公開しているRFI InfoやBFM TVなどのサイトがおすすめです。
日本語でも学習
また、日本語でもフランス語でも英語でも、なじみのある言語でフランス語圏の社会や文化にかんする知見を深めることも大切です。
とくに母語で理解できない・知らない話題は、外国語で聞いても当然ほとんど理解できません。日本語で「ソーシャルゲーム」を調べるほうが、フランス語よりも効率よく多くの情報を集めることができるでしょう。
これらの意味で、ご自分の言語能力をフル活用して、フランス語学習に役立てていくと良いと思います。フランスの社会や文化にかんする知識があれば、問題の背景や論理展開をつかみやすく、音源の理解につながります。
まとめ
今回はDELF B2リスニング試験の内容と対策についてご紹介しました。
時には、音源を聞いても即座に答えがわからない設問があるかもしれません。そんな時はその答えを出すことにこだわるのではなく、どんどん下に目線を移して次の設問の答えを見つけることに力を注ぎましょう。
またフランス語圏の社会ニュースを耳からも仕入れたり日本語で調べたりするなど、内容面の勉強も並行していきましょう。
最新情報を要チェック
本シリーズの記事は、フランス国民教育省が公開している過去問(リンク)を参照しています。
時間や形式などは変更される可能性があります。受験生の方は最新の情報をチェックすることをお忘れなく!
次回の記事では、読解試験の内容と対策についてご紹介します。
執筆あお