迫る!フランス大統領選、現職マクロン候補の公約は

2022.03.18

フランス大統領選 マクロン公約3月18日(金)、フランス大統領選第一回投票を24日後に控えた昨日17日、マクロン候補はパリ郊外の会場に250人のジャーナリストを集めて記者会見を行い、自身の公約を発表しました。主に自らの過去5年間の任期に定めた路線に軌道修正を加えつつ、「国防」や「エネルギー」が前面に出されています。ロシアのウクライナ侵攻という第二次世界大戦以来の欧州大陸の危機を反映してか「主権在民」「歴史的決断」「ヒューマニズム」を自らの「哲学」の3本柱に据えています。

 

欧州とフランスのために「歴史的な決断」

マクロン候補はヨーロッパが現在直面している「戦争の危機」に対応するため「軍隊への投資の見直しが必要」だと訴えています。

そのために、今ウクライナで起こっている戦争の経過を観察しながら、軍参謀本部と必要な装備や準備を協議し、突発的な危機に「臨機応変に対応」できる仕組みを強化すると約束しました。

マクロン氏はその一環として”réservistes”(レザーヴィスト)と呼ばれる一般市民による予備兵を倍に増やすことも想定しています。

 

農業支援で自給自足を強化

ウクライナ戦争により、インフレで既に値上がりしていた食料品の価格上昇がさらに顕著になったことから、今回の大統領選挙で「自給自足」が課題として注目されています。

マクロン氏は「今多くの農業従事者が定年に差し掛かっており、後継者探しに苦労している」ことから「農業を志す若者への支援を強化する」と述べました。

また、EU内でこれまで主流だった「農業生産超過」問題の是正方針については、ロシアのウクライナ侵攻以前のものとし、「EU各国が生産量を減らすことはない」と方向転換しました。

 

情報アクセスの「自由」堅持、「フェイクニュース」と戦う

報道の自由と独立を維持し、誰もが自由に情報にアクセスできる社会や経済の持続性を保証した上で、「フェイクニュース」などの誤情報やデマと戦います。

ヨーロッパ独自の「メタバース」を

マクロン氏は、「新しいデジタルプロジェクトはアメリカを中心とした「アングロ・サクソン」文化圏や中国が主導である必要はない」と主張しています。

特にこれらの国が欧州における著作権侵害などの規制回避を行う懸念があり、ヨーロッパで独自のメタバースを構築する必要性を訴えています。

 

フランスの未来へ投資

フランスの「国力」を強化するためには「研究」への投資が不可欠とし、具体的にはフランスの大学をより自立させ、研究機関を国の戦略的セクターに指定し優秀な人材を確保します。

高等専門学校の改革として、労働市場で必要とされる人材が十分に育成できていないという現状をふまえ、単なる職業訓練ではなく「卓越した」技術者を輩出する学校づくりを目指し企業にも門戸を開きます。

 

エネルギー「節約と自立」に投資

自身の任期中から進めている「エネルギー消費削減」の一環として行ってきた住居や建物の断熱性向上を引き続き推進し、2期目で70万戸の改装を目指します。

ロシアからの天然ガスや資源依存からの脱却が騒がれているエネルギーの供給に関しては、原子力発電所の増設、風力発電の増設や太陽光発電を10倍にするなどクリーンエネルギーへの投資を強化することで対応します。

 

フランス人は「もっと働かなくてはならない」

現大統領マクロン氏は「もっと働かなくてはならない」ことを任期中も明言しており、今後5年間で失業率を限りなくゼロに近づけることを目標としています。

失業保険制度の改革:

過去5年間に行われていた改革を続け簡素化をはかります。

改革を象徴する意味でも現在”Pôle emploi”(「仕事の集まる場所」の意)という名称の、日本でいう「ハローワーク」は”France travail”(「働くフランス」)と改名されます。

生活保護(RSA)制度の改革:

「生活保護の受給者はある意味、制度の犠牲になっている」と述べるマクロン氏は、改革案として「対価を求める」ことを検討しています。

失業保険の受給期間が終了した後に支給されるRSAの受給者は、職探しをしている証明義務や職業訓練の対象になっていません。

マクロン氏は「週15〜20時間、可能な人に限り労働に参加してもらう」ことを条件にいれるべきだと主張しています。

 

高齢化社会、定年の引き上げ、65歳に

フランスの定年は現在62歳(注1)ですが、マクロン氏はこれを「65歳に引き上げるべき」だと発表しました。

コロナ禍でさらに拡大した財政赤字により「(引き上げは)当たり前のこと」としつつ、大統領として「2017年に推進しようとし、断念した改革とは違うものだ」と主張しています。

詳細は発表されていませんが「段階的に引き上げられ」、若くして就業した人や過酷な職種、バリアフリーなどに例外を持たせるとしています。

その対価として年金の最低額を現行の月652ユーロ(約85,500円/1ユーロ=131円)から月1,100ユーロ(約144,000円)に引き上げると約束しました。

またパリ地下鉄公団RATP、元国営の電力会社EDFなどに現存する特別年金制度(定年62歳未満、入社年による)を廃止し、組合との交渉を前提に一本化する意向を示しています。

高齢化社会への対応には、介護医療施設における介護士の労働時間の2時間増や介護士の5万人増員などを挙げています。

(注1)満額受給には42年間掛け金を支払うか、67歳に達するかのいずれかを満たす必要がある。

 

減税でフランス国民の購買力アップ、働く世代を優遇

任期中、働く世代の購買力向上を進めてきたマクロン氏は、相続税の控除対象を現行の10万ユーロ(約1,310万円)から15万ユーロ(約1,970万円)に引き上げ、テレビ受信料138ユーロ/年(約17,000円)の廃止や、「マクロン・ボーナス」(注)と呼ばれる報奨制度の額を現行の1000ユーロ(約131,000円)から3,000ユーロ(約393,000円)に引き上げることも公約にあげています。

(注2)企業が業績目標の達成程度に応じて社員に与える、国が推奨する「従業員利益参加制度」で、最低賃金の3倍未満の給与取得者が対象。

執筆:マダム・カトウ

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