2017-2022年マクロン政権 果たした公約、果たせなかった公約

2022.03.10

群衆 旗3月4日(金)、フランスのマクロン大統領は、4月の大統領選に出馬すること正式に表明しました。

マクロン大統領の所属する「共和国前進」が2017年の選挙時に発表した公約は400を超えますが、このうちマクロン政権が「果たした」公約、また「果たせなかった」公約はなんでしょうか?

 

「果たした」公約

「すべての労働者が失業中に補償金を受給できるようにする」

2019年8月に議会で採択された法律により、失業者は一定条件のもとで6ヶ月間、月額800ユーロを受け取れることになりました。

しかし2019年11月から2021年8月末までにこの補償金を受け取った個人労働者は1,100名のみで、マクロン大統領は受給条件を2022年1月以降に緩和すると発表しています。

「すべての女性に、生殖補助医療(PMA)のチャンスを」

2021年6月29日、すべての女性が生殖補助医療(PMA)を受けられるよう生命倫理法の改正案が閣議決定され、同年9月29日に施行令(デクレ)が出されました。

この法改正にもとづき、それまで不妊症をもつ異性間カップルに限られていた人工授精が、独身女性やレズビアンにも可能になりました。

ただ生殖補助医療(PMA)を希望する女性は、担当できる医師の不足や精液の保存の問題などから、長い待機時間に絶えなければならないと言うことに直面しています。

ヴェラン保健相(Olivier Véran)は2021年9月、800万ユーロの予算をつけ待機時間の短縮に対応すると発表しています。

「小中学校での携帯電話の使用禁止」

これは今まで教育法典(le Code de l’Education)や学校ごとに決められていた規則ですが、2018年8月3日に改めて法律となりました。

国民教育省ブランケール(Jean-Michel Blanquer)大臣はこの法律によって、児童が本を読む時間を増やすこと、SNS上でのハラスメントやポルノ画像から児童を守ることなどが可能になるとしています。

★他には、「安全管理やテロ対策のための常設本部を設置」「欧州防衛基金(Fonds européen de la défense)の始動」「公共の場でのハラスメントへの罰金強化」「ムスリムの新組織イスラム・フォーラム(Forum de l’islam de France, Forif)の設置」など。

 

「果たし途中の」公約

「看護職の昇給と病院の財政改善」

コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年7月に掲げられた目標です。これには1万5,000人の新規雇用、給与見直し、4,000床の確保、また看護師養成学校(Institut de soins infirmiers, IFSI)の定員増加などが含まれます。2021年3月には2029年までの国家戦略として190億ユーロの予算がつけられました。

国民保健省によれば、150人以上の月給が183ユーロ上がり、50万人以上の看護師や医療技術者などがキャリアを向上できたということです。また、看護師養成学校は2021年度、定員を約2,300名増やしたほか、279の医療機関で病床数が合計3,400床増えました。

一方、給与改善については、OECDの掲げる給与水準を達成するために300ユーロの改善がさらに必要であり、医療機関の財政改善にもさらなる努力が必要と考えられています。

「高齢者手当の引き上げと高齢者の貧困解消」

高齢者連帯手当(Allocation de solidarité aux personnes âgées, ASPA)は2021年現在、全額受給の場合で906.81ユーロであり、ここ3年間で約100ユーロ増額されました。

一方、高齢者の貧困解消は進まないままです。2021年5月のフランス国立統計経済研究所(l’INSEE)は、2018年までの統計しか発表していないためです。なお2015年には65際以上の貧困率が6,9%であったところ、2018年には8,6%に上昇しています。

「男女の給与平等を尊重しない企業名の公表」

2019年3月以降、従業員1,000名以上の企業は、男女間の給与格差に関する指標(“index d’égalité salariale”)をオンラインで公表することになっています。

同年9月には従業員250名以上の企業も対象となりました。そして2021年3月には50名以上の企業に対象を拡大することになっています。

指標は、男女間での給与格差、年収の上昇格差、昇進や育児休暇後の年収などにより、100点満点で計算されます。75点に満たない企業には財政的な制裁が加えられます。

2021年3月の時点では、70%の企業がこれに対応し、平均値は85だということです。

★他には、「就学前から小学校3年生までの学年末評価を実施」「夜間・日曜日の図書館開館」「すべての火力発電所を閉鎖」など。

 

「果たされていない」公約

「公務員を12万人削減」

マクロン大統領は当初、国家公務員を5万人、地方公務員を7万人削減するとしていました。しかし2019年4月、ある記者会見での記者からの質問に対し、マクロン大統領はこの公約を「破棄する」旨を発表しています。

後日、ダルマナン(Gérald Darmanin)公会計担当大臣(当時)は経済の停滞や「黄色いベスト運動」などを理由に、公約を実行しないことを確認しました。そして新たに、2022年までに国家公務員を1万5,000人、地方公務員を5万人削減するという目標を立てています。

その後コロナ禍への対応などで公務員の定数は増加しているとの記事もあり、公約は実現されていません。

「太陽光・風力発電を倍増」

ヨーロッパの送電事業網(Réseau de transport d’électricité, RTE)によると、どちらも発電量は増加したものの、目標には達しないことが明らかになっています。

フランス国内の太陽光発電の量は、2016年末の時点で11,761メガワットであったところ2020年末には17,616メガワットと倍増に近い一方、風力発電は2016年末の6,773メガワットから2020年末の10,387メガワットで、さらなる努力が必要とされます。

★他には、「国会議員数を3分の1に」「1ヶ月の兵役義務化」「ディーゼル車への増税」「失業率を7%に、130万人の雇用創出」など。

 

4月の選挙戦に注目

約400あったマクロン政権の公約、今回の選挙戦ではどのように変更されるのか、実現可能性はどのくらいあるのか、注目したいところです。

執筆あお

参照
フランス労働・雇用・社会復帰省 En 10 points-clés | la Loi pour la Liberté de choisir son avenir professionnel

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