11月2日(火)、マクロン大統領は就職難に陥っている若者の就業支援として、職業訓練を受けることを条件に16歳〜25歳の若者に月々500ユーロ(約66,000円/1ユーロ=約132円)の支援金を支給すると発表しました。
学歴のない若者、職業訓練で労働市場に
今回大統領が発表した政策は、大学進学や専門学校などへの進学もせず、かといって就職もできない16歳以上26歳未満の若者を労働市場に送り込むことを目的としたものです。
職業訓練を受ける期間、対象者は最高で500ユーロまでの支援金を国から受けることができます。
「若者」はマクロン大統領の最優先事項
マクロン大統領は10代から20代の若者を、新型コロナによるロックダウンで「最も犠牲になったジェネレーション」と位置付け、その支援を最優先事項としてきました。
実際、コロナ禍中の昨年6月に学校を卒業した若者は高学歴でも就職が困難になり、困窮しているケースが多発しています。
コロナで犠牲のジェネレーション支援
「何万人何十万人もの若者が何ヶ月も仕事がなく、そのため収入もなく、将来の展望もない状況に手をこまねいていることはできない」と、大統領は今年7月12日にこういった若者への支援を検討していることを発表しています。
フランスでは16歳(中学)で義務教育を終了しますが、就職時に「バカロレア」と呼ばれる高校卒業資格を求められることは珍しくありません。よって中卒の就職先は限られますが、失業率自体も高いため、職業経験がない若者の就職は大変不利になります。
一度も就職をしていない人は失業保険の対象にもならないため、収入がなく何もしないでぶらぶらしている若者が犯罪に引き込まれる可能性もあります。
自治体に大きな人的負担、「野心的」な政策
今回の政策の対象となる若者は約40万人と推定されています。
この支援政策の費用について、7月からフランスの経済・財務省(ministère de l’Économie et des Finances)と労働省(ministère du Travail)の間でコンセンサスを取るための協議が重ねられていました。
実際に支援を行うことになる各自治体への人的負担が急増することから、経済財務省は巨額の支援策の費用対効果について懸念を示していました。
カステックス(Jean Castex)首相は今朝、訪問先のパリ郊外で、この政策は「大変野心的なもので、企業や非営利団体、地方自治体の協力のもとに実現できる」「支援対象者一人一人に自治体の専任担当者がつき、2週間に1回、可能なら週1回の割合で面談を行う」と発表しています。
EN DIRECT | Contrat Engagement Jeune : suivez l’intervention du Premier ministre @JeanCastex depuis Vitry-sur-Seine. https://t.co/hHIWYG3w7c
— Gouvernement (@gouvernementFR) November 2, 2021
2022年3月より稼働、最長12ヶ月
今回の支援策は来年3月1日より開始され、対象者は週に15時間〜20時間の職業訓練や研修を最長で12ヶ月間受けることができます。
大統領は、この政策により若者は「世の中にはどんな仕事があり、実際に企業ではどういう業務が行われているかを知り、実際に訓練を受け、場合によっては企業で採用される可能性もある」と説明しています。
Si je vous écris aujourd’hui c’est pour m’adresser aux jeunes générations.
Pour vous, nous lançons le Contrat Engagement Jeune. Mon message : https://t.co/Vs0IJsopMt— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) November 2, 2021
若者=マクロン大統領にお任せ
マクロン大統領の支持層の中で、今回対象となる16歳〜20代の若者の支持率は他の年齢層よりも高いことはすでに世論調査の結果にも出ています。
歴代の大統領の中で「最年少」のマクロン大統領は、「若者」について語ることが多い「稀な」大統領で、SNSの発信で直接的に若年層に語りかける様子も「好感度」をもたれる一因となっているようです。
大統領再選に向け、重要な支持層
政府の戦略担当者も、「どっちみち若者は大統領に任せていればいい」、「若者問題は社会的にも政治的にも重要案件で、大統領自身が社会的犠牲者と命名したぐらいなので」とコメントするなど、政府としての力の入れようがうかがわれます。
この担当者はまた、来年4月からの大統領選に向け「(当然ながら)若年層はマクロン大統領にとって重要な票田でもある」と付け加えています。
執筆:マダム・カトウ