10月6日(水)、パリで行われていた世界最大級のファッションショー「パリ・ファッションウィーク(Paris Fashion Week, 通称パリコレ」が最終日を迎えました。
ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)が日本時間6日夜にルーヴル美術館で行ったショー中には、ファッション産業が気候・環境問題に与える影響を訴えるデモ運動が行われました。
世界最大級のファッションショー、パリコレ
「パリ・ファッションウィーク(パリコレ)」では、有名ファッションブランドが毎年3月と10月に新作を発表します。
例年9月にアメリカのニューヨークでファッションショーが始まり、ロンドン、ミラノ、そしてパリと次々に世界最大級のファッションショーが開催されます。なかでもパリコレは規模が大きく、世界中のメディア、ファッションデザイナー、バイヤーなどの注目を集めてきました。
オンラインとオフラインで 2022年春夏コレクション
今年は、9月28日から10月6日までの間に、約80のブランドが2022年の春夏コレクションを発表しました。
コロナウイルスの感染拡大を受け、昨年からオンライン開催がメインとなっていたファッションショーですが、今期からは現地での開催も再会の動きが見られます。今回のパリコレでは、多くのブランドがオンラインとオフラインの両方のメディアで発信しました。
ルイ・ヴィトンのショー中に…
パリコレの最終日となる6日には、フランスのラグジュアリーブランドであるルイ・ヴィトンが、ルーヴル美術館でショーを行いました。
ショーの途中、新作のコレクションをまとうモデルに紛れてランウェイに登場したのが、「過剰消費は絶滅だ(”Overconsumption= EXTINCTION”)」の布地をもった女性です。すぐに警備員が引き止め、2名が職務質問を受けたとのことです。
Aaah Paris, la mode, la #FashionWeek, les mannequins, les stars …. ET l’urgence sociale et climatique
Cette année, les stars du défilé #LouisVuitton ce sont les victimes de la mode : le climat et les droits humains.
Action urgente est nécessaire pic.twitter.com/eds5ffWfm9
— Les Amis de la Terre FR (@amisdelaterre) October 5, 2021
環境保護を訴える市民団体などの計画
このデモ活動を計画したのは、ヨーロッパを拠点として環境保護などを訴える市民団体などでした。
これには、英国を拠点するエクスティンクション・レベリオン(Extinction Rebellion)、フランスのNGOレザミ・ドゥ・ラ・テール(Les Amis de la Terre)、またベルギーやフランスを拠点に活動するユース・フォー・クライミット(Youth for Climate)が含まれます。
レザミ・ドゥ・ラ・テールによると、デモ活動は「気候変動に及ぼすファッション産業の大規模なインパクトや、この状況に対して政府が行動を起こさないでいることを告発すること」を目的として、「気候変動はファッションの犠牲者」「LVMHとマクロン大統領ー行動を起こさぬ共犯者」などのメッセージを掲げました。*LVMH=ルイ・ヴィトンなどを経営するコングロマリット。
ショー会場の外でも
ランウェイの外では、黒い煙の中に、ガスマスクを身につけたモデルが登場し、「地球は燃え上がっているのに、ファッション産業は見向きもしない」というメッセージを発信しました。気候変動による大規模の火災を警告するものだということです。
ファッション産業と気候変動
レザミ・ドゥ・ラ・テールによると、フランスでは2019年、居住者一人あたりにつき42着の衣服が流通したとのことです。このようなファッション産業による温室効果ガスの排出量は、世界で排出されるガス量の8,5%を占めるといいます。
また、衣服に使われる生地には、世界で消費される殺虫剤の11%が使用され、水質汚染の一因になっているとのことです。
レザミ・ドゥ・ラ・テールなどの団体は、ファッション分野が生産量を抑制することで温室効果ガスの排出を減らすことができると主張しているのです。
ラグジュアリーブランドや政府への提言
とくにLVMHなどの大規模なファッション企業は、広告などによって消費者の関心を引き、ファッションの「過剰消費」を招いているとレザミ・ドゥ・ラ・テールは主張します。
また、マクロン大統領率いる現政権の責任も疑問視しています。政府は、ファッション産業が「パリ協定」(2015年、温室効果ガス排出削減などの目標を定めた国際枠組み)を遵守することに圧力をかけようとしていない(と考えている)ためです。
エルバス氏の追悼
今回のパリコレでは、多くのブランドが今年4月にコロナウイルスで亡くなったアルベール エルバス(Alber Elbaz)氏への追悼イベントが行われました。
モロッコで生まれイスラエルで育ったエルバス氏は、2001年から2015年まで「ランヴァン」レディースのトップデザイナーを努め、59歳での死はファッション業界に衝撃を与えました。
最近は、ランヴァン退任後の2019年に立ち上げた自身のブランド「AZ Factory」で、最初のコレクションを今年1月に発表したばかりでした。
執筆あお
参照
Vogue Paris-collection
Les Amis de la Terre “Action : des activistes s’infiltrent à la Fashion Week”
外務省 気候変動 2020年以降の取り組み:パリ協定