6月16日(水)、フランスのカステックス首相(Jean Castex)は、20日より23時から6時までの外出制限を解除することを発表しました。
段階的なロックダウンの様子
フランスではここ2ヶ月で急速に、コロナ前の生活が戻りつつあります。これは、マクロン大統領が4月29日に発表したロックダウンの段階的解除の計画にもとづくものです。
まず、5月19日には大型商業施設や路面店が再オープンしました。6月9日には、それまで外出制限が21時以降だったところ23時以降に短縮されたほか、レストランでの飲食や美術館などの文化施設の利用が可能になりました。
23時から6時までの外出制限は、当初は6月30日に解禁する予定でしたが、10日間前倒しして20日から解禁することが発表されました。クリスマスの夜を除いて8ヶ月間禁止されていた、夜間の外出がついに可能になります。
最近7日間の感染者数は3,200人であり、入院患者数も16日時点で2,000人以下となり、政府は、予想以上に感染状況が改善しているとして、前倒しを決定しました。
外出時のマスク着用義務も解禁
フランス政府は外出時のマスク着用についても、18日以降は一部の場所を除いて義務付けないことを発表しました。人が集中するマルシェやスタジアムなどは例外にあたります。
Dès demain, le port du masque en extérieur ne sera plus obligatoire sauf dans certaines circonstances (regroupements, lieux bondés, files d’attente, marchés…). pic.twitter.com/piXl0tgTkG
— Jean Castex (@JeanCASTEX) June 16, 2021
オリヴィエ・ヴェラン(Olivier Véran)保健相も、外でのクラスターが発生していないことを理由として、すべての人にマスク着用を義務付ける理由はもはやないと表明しました。
解除前倒しに至った背景
これまでの外出制限については、当初からその効果や実効性をめぐり、さまざまな批判が向けられてきました。
例えば、左派「不服従のフランス」(La France insoumise, LFI)に属するジャン=リュック・メランション(Jean-Luc Mélenchon)氏は、政府が外出制限を21時から23時に変更した際、「なぜ24時でなく23時なのか」と政府に意見しています。
こうした主張に対し、マクロン大統領が属する共和国前進グループ(La République en Marche, LREM)はあくまでロックダウンの段階的解除のスケジュールを守ろうとしていました。
しかし、医療関係者によっても外出制限の解除を認める動きがあることや、感染状況の改善が数値に表れていることなどから、政府は解除の前倒しに踏み切ったようです。
夏のイベント目白押し、釘を刺す政府関係者も
フランスでは毎年恒例の「音楽の祭典(Fête de la musique)」を21日から開催する予定です。昨年は、コロナウイルスの感染拡大によってさまざまな懸念が示されるなかで、厳重な感染対策のもと、パリやレンヌなどいくつかの都市で決行されました。
今年の開催については、当初のロックダウン解除予定では開催日と夜間の外出制限が重なっていたために、フランス文化庁はコンサートの種類などによって感染対策の詳細のプロトコルを発表していました。今回の前倒しによって、プロトコルの緩和なども予想されています。
やっと開催のユーロ杯、初戦突破のフランス
昨年から延期されていたUEFAサッカーEURO2021による盛り上がりも増しています。前回大会の王者であるフランスチームは15日夜(フランス時間)、ドイツとの初戦を見事に制し、今後の戦いに期待が高まっています。
スポーツバーでの夜間の観戦について、ジュラール・ダルマナン内務大臣(Gérald Darmanin)は外出制限を破ることを容認するなど、一年越しのイベントには政府の目も甘くなっているようです…。
政府内では慎重な意見も
こうした一連の解禁ムードに対して、前内務大臣クリストフ・カスタネール(Christophe Castaner)氏などは慎重な態度を示しています。国営放送France2のインタビューでは、コロナウイルスとの戦いは終わっていない、と主張しました。
また、カステックス首相も、イギリスなどで感染が拡大している変異ウイルスについて警戒を示し、水際対策の重要性を述べています。
執筆あお