4月9日(金)、感染症やワクチンなどの研究の権威として知られるパスツール研究所(institut Pasteur)の発表によると、コロナ禍以前の生活に戻るには大人の9割にワクチン接種が必要となります。昨年から集団免疫獲得には国民の6割の接種が必要と言われていましたが、変異種の登場で予測が変わってきています。
遠のく「マスク無し、何の制限もない」以前の生活、変異種が原因
カフェの店内で若者10人が大きなテーブルを囲んでワイワイ飲んでいる…こんな風景をもう1年も見ていませんよね?
「マスク無しで大人数で集まって食事をしたり、握手をしたり、消毒ジェルやアクリル板の仕切りのない店に入る」といった以前の生活に戻れようになるには、「今年の夏までに18歳以上の成人の90%にワクチン接種が必要」とパスルール研究所は4月7日に発表しています。
これまで、集団免疫を獲得し感染が収束に向かうには国民の60%〜70%にワクチン接種が必要とされていました。
今回の論文発表でこの数値が90%になった理由について、著者の一人で感染症学者のパスカル・クレペイ(Pascal Crépey)氏は、「変異種の登場で全てが変わった」と述べています。
フランスで主流のイギリス型変異種、感染力が60%増
なんの感染予防対策も取らなかった(ロックダウン、ワクチン接種など)場合、「当初の新型コロナ(Covid-19)感染者一人がうつす人数(基本再生産数:R0)はフランスで平均3人でしたが、現在感染の主流となっているイギリス型変異種(B.1.1.7)は4〜5人と推定される」とソルボンヌ大学(Université de la Sorbonne)の数学者アモリー・ランベール(Amaury Lambert)氏は説明しています。
この数字の根拠について、先述のクレペイ氏は「イギリス変異種の方が約60%感染力が高いことを前提に計算されている」と補足しています。
18歳未満の子供へのワクチン接種できれば…
発表によると「ワクチン納品の遅れ、政府の接種計画、国民がワクチンに懐疑的」この3つの要因から、夏までに成人の9割に接種を終えることは不可能に近いようです。
クレペイ氏によると、ワクチン接種が重症化リスクを下げることはわかっていたものの、接種した人の感染リスクやウイルスの感染力を弱める効果がどのぐらいあるか定かではありませんでした。
そのためワクチン接種は重症化リスクの高い高齢者や疾病のある人を優先してきましたが、世界中のあちこちで行われた接種後のデータから、重症化だけでなく感染防止や他人への感染力も弱めることがわかりました。
ワクチン接種の優先順位より、「感染させる」リスクの高い若年層に
そうすると接種の優先順位があまり重要ではなくなりました。
言い換えると、年齢や重症化リスクの有る無しに関わらず成人にワクチン接種を行うことで、重症化や死亡する人数を減らすことができます。
さらに、18歳未満の子供は自身が重症化するリスクは低いものの、自宅で両親や祖父母を感染させる可能性が高いことから、若年層にワクチン接種を行うことで感染拡大の抑制に貢献し、ワクチン接種目標を成人90%にまで高くしなくても、同様の抑止効果が期待できるとクレペイ氏は見ています。
集団免疫獲得できなくても、秋には「より普通の生活」
今夏までに集団免疫を獲得できなかったとしても、ワクチンを接種した人が一人でも増えると、その分感染拡大の速度が遅くなります。
つまり接種が進めば進むほど状況は改善するため、今年の秋にマスクを外して以前と同じ生活に戻るのは難しいとしても、例えば「ミュージアムや文化施設を再オープンするなど、徐々に規制を緩和することは十分可能」とソルボンヌ大学教授のジャン=ステファン・デルサン(Jean-Stéphane Dhersin)氏は述べています。
「マスクをしないで済む生活」が待ち望まれます。
ちなみに、ワクチンを無駄にしないため、接種予約のキャンセル待ちリストがあります。
ワクチン接種キャンセル待ちリストCovidliste(仏語のみ):
接種対象年齢でなくてもキャンセル待ちリストに申し込むことができます。
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執筆:マダム・カトウ