12月5日(木)、政府の年金制度改革案に反対するフランス国鉄、パリ地下鉄職員などを中心に、大規模なストライキが行われています。ストの影響でパリ市内の交通は麻痺し、フランス各地で反対デモが行われています。
パリの地下鉄皆無、代休取得やテレワークで準備
パリの地下鉄は遠隔操作で自動運転する1号線と14号線を除き、通勤時間帯のみ3路線が4本に1本の間引き運行、それ以外の路線は終日運休しています。
このような状況にもかかわらず、ストの予定が2ヶ月前から発表になったこともあり、テレワークや有休消化で通勤を諦めた人が多く見られました。そのため、今朝の通勤時間帯に運行した地下鉄の利用客はまばらであったり、駅は閑散としているなど、さほどの混乱は起こりませんでした。
La ligne 1 est vide dans les deux sens avec un trafic normal 😃 @Ligne1_RATP pic.twitter.com/DTVC7EXV0h
— Fabrice Washington✏️ (@FabriceWashingt) 5 décembre 2019
TGV、フライトキャンセル、エッフェル塔閉鎖、ルーブルは開館
ストの影響で、TGV(train à grande vitesse)は10本に1本、それ以外の電車は3~5%しか運行しません。
管制塔もストに参加しており、本日のフランス発着便の約20%がキャンセルされています。
この影響で、ローコスト航空会社大手のイージージェット(Easyjet)は本日のフライト233便、またエールフランス航空は国内線の30%、国際線の15%をキャンセルしています。
パリのシンボル、エッフェル塔もストで閉鎖されていますが、ルーブル美術館は人気の《ダビンチ展》開催中もあってか本日も開館しています。
年金改革の《優遇年金制度狙い撃ち》に反対
今回のストは、フランス政府が打ち出した年金改革プロジェクトの中に、国鉄職員などが恩恵を受けている《優遇年金制度》の廃止が含まれていることに起因しています。
優遇制度は職種により異なりますが、対象となる職種は国鉄やパリ地下鉄職員、また教員、公立病院など一部の公務員ほか、民間でも公証人、弁護士などが含まれます。
国鉄職員や病院職員は《苦痛を伴う労働》に認定されているため、入社年により57歳から定年退職することが可能です。
年金計算《ポイント制》で全国民共通に
現在フランスには優遇制度を含む42の年金制度が存在しますが、政府は今回の改革で《ユニバーサル制》(système universel)と名づけられた《全国民共通制度》を導入することで統一化を図っています。
政府は《支払った額の1ユーロの価値は、誰にとっても同じ受給権利を与える》とスローガンを掲げ、「より分りやすく、より平等」な制度になると発表しています。
改革により大きく変わる点は、今までは就労した四半期の数をベースに計算されていたものが、就労した日ごとのポイント制になることです。
教員は改革の《負け組み》?
今までは、民間の年金受給額は最も収入の高い25年間をベースに計算され、公務員は定年前の最後の6ヶ月間をベースにしていましたが、ポイント制の導入でこの計算方法も廃止され、就労期間全体の給与が計算対象になります。
新しい計算方法は、もともと薄給で賞与もほとんどなく、とりわけ勤続年数以外に年収を上げる方法がない教員にとって不利になります。ある調査によると、制度改革で年金支給額が月300ユーロ(約36000円)~600ユーロ(約72000円)減少すると言われています。
よって、今回のストには約5割の教員が参加しており、各地で学校が閉鎖されていいます。
受給年齢《今は変更しない》が・・・
現在年金の満額支給には43年間就労することが条件で、年金受給の最低年齢は一般的には62歳と定められています。
政府は「受給年齢は変更しない」と発表していますが、フィリップ首相は「破綻している年金制度を改革するには、徐々に就労年数を延ばすか、満期受給の対象年齢を64歳に上げなくてはならないだろう」と、政府の発表を覆す発言もしています。
本日、フランス各地でおよそ250のデモが行われています。
1ユーロ=約120円
執筆:マダム・カトウ