初めてフランス語を聞いた時、どんな印象を受けましたか?発音だけでなく、そのリズムも新鮮に響いたのではないでしょうか?言語にはそれぞれリズムがあります。前回はそのリズムのベースとなる、シラブルとモーラの2つの単位についてお伝えしました。今回はリズムの種類についてみてみましょう。私たちの日本語は、外国人の耳にどんなふうに聞こえているのでしょう?フランス語と同じリズムでしょうか?
リズムによる言語の分類
一般的に言語学では、リズムによって言語を次の3種類に分類します。
アクセント言語(langue accentuelle) 例:英語
アクセントのあるシラブルがほぼ等間隔に現れてリズム(強制拍リズムまたはストレスリズム)を作ります。このタイプの言語は子音連続が多く、ベースとなるシラブルの長さはまちまちですが、アクセントがほぼ等間隔にあることによって一定のリズムが生まれます。シラブルの強弱が繰り返されるこのリズムは、交替リズムとも呼ばれモールス信号にたとえられることがあります。
シラブル言語(langue syllabique) 例:スペイン語
シラブルが規則的に並ぶことでリズム(シラブルリズム)を作ります。シラブル言語は、ほぼ同じ長さのシラブルが一定のまとまりをもって繰り返し発話されることでリズムができます。連続リズムとも呼ばれるこのリズムは、機関銃にたとえられることがあります。
モーラ言語(langue morique/moraïque) 例:日本語
仕組みとしてはシラブル言語と同じですが、モーラがリズム(モーラリズム)を作ります。モーラはそもそも長さの単位。シラブルと同じく連続リズムですが、長さのそろったモーラが一定のまとまりで発音されることでリズムが作られます。モーラ言語だけベースとなる音の単位が異なる点に注意です!
リズムのイメージ
音を丸記号で表すと、各言語のリズムは次のようなイメージです。
アクセント言語 〇 〇〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇〇〇
シラブル言語 〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇
モーラ言語 〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇
強弱が繰り返されるアクセント言語に対し、シラブル言語とモーラ言語は音が連続してまとまることでリズムを作っています。また言語によって音のサイズに違いがあり、アクセント言語では音のサイズがまちまちなのに対して、シラブル言語はほぼ同じサイズ、そしてモーラ言語ではそろっています。なお、話す速度が変わってもリズムの種類は変わりません。
傾向として、言語内で子音頻度が高い順に、アクセント→シラブル→モーラ言語となるようです。どんな音で言葉が構成されているかによって、その言語のリズムが決まっているんですね。
日本語のリズム
モーラ言語の日本語は、シラブル言語と同じ機関銃リズムにあてはまります。ある研究によると、大きなシラブルが多い英語などのアクセント言語に比べ、小さなシラブルの並ぶスペイン語などのシラブル言語は1シラブルあたりの時間が短いため、速く響くそうです。そして、日本語のモーラはシラブルより小さな単位で、さらに速く聞こえるそうです。日本語で「マシンガントーク」というと、途切れなくしゃべりつづけることをいいますが、日本語は外国語話者にとってそのように聞こえているのかもしれません⁈
日本語はモーラをベースとする少数派の言語です。実は、シラブルはどの言語にもあるのですが、モーラという単位はそれを持つ言語と持たない言語があると言われています。
五・七・五の定型詩・俳句は、日本人なら誰しもモーラを数えられますが、外国人にとっては少しむずかしいものなんです。しかしこの俳句が世界に紹介され、海外でも親しまれています。と言っても、” ka / ki / ku / e / ba… ” と区切るわけではありません。モーラのない英語やフランス語では、シラブルで五・七・五を数えます。
さらに、この言語リズムは音楽にも関係があると言われていて、日本語と他の言語とのリズムの違いを生み出しています。外国語の楽曲が上手く歌えないのは、音符に割り当てる単位がシラブルとモーラで異なるから。多くの言語はシラブルをベースとしたリズムであるため、モーラベースの日本語話者にとってはリズムに乗りにくいんですね。
さて、フランス語はどのリズムにあてはまると思いますか?
答えは…次回『日本語なまりの正体』で。お楽しみに!
執筆:Anne