知らない外国語を聞くと、意味はわからなくても響きが面白いと感じませんか?歌っているみたいだとか、勢いがあるとか。それはなぜでしょう?前回は音の配列についてお伝えしましたが、言語音はただ並んでいるだけではなく、一定のまとまりを持ちリズムを作っているんです!
言語音の単位
ロボットの話し方というと、音が単調につながっているものを想像しますよね?人の話し方に比べ、どうしても不自然に感じてしまいます。なぜかというと、自然な人間の言語にはリズムがあるからです。
各言語はそれぞれの規則に従って音が組み合わさり、言葉ができています。そしてそれが実際に発話されるとき、リズムを伴って発せられます。そのリズムのベースとなる単位には2種類あります。
シラブル(syllabe)
核となる音(多くの言語では母音)を中心としたまとまり。核と前後の子音が結びついて1つのかたまりを作る。
例:「フランス」 fu – ran – su
モーラ(more)
基本的に子音と母音がペアになった、一定の長さを持つまとまり。
例:「フランス」 fu – ra – n – su
モーラと言われてもピンとこないかもしれませんが、実は皆さんご存知です。俳句や短歌をよむときに五・七・五…と数えていますが、実際には何を数えているのでしょう。仮名の数?いいえ、時間の長さ、モーラなんです!日本語においてモーラは重要な音の単位で、俳句や短歌で音を数えるのにも使われています。「モーラ」という名前は知らずとも、私たち日本語話者は無意識のうちに使っているんですね。
シラブルとモーラの違いを一言でいうと、前者は構造、後者は時間に焦点をあてた単位であるということ。シラブルは母音を中心とした音の集まりです。それに対してモーラは、一定の時間の長さを持った音のまとまりです。ポイントは、モーラの方が小さいこと。「フランス」という単語をシラブルとモーラで区切ると、次の図のような違いがあります。
シラブルは母音を中心に子音が結びついて1つのまとまりを作る構造で、母音の数=シラブルの数になります。「フランス」という単語には母音が3つあり、計3つのシラブルがあります。一方、モーラは時間的長さです。” fu ” ” ra ” ” n ” ” su ” は同じ長さを持つ音のまとまりで、つまり、この単語は4モーラです。
子音 ” n ” に注目してください。” n ” は、” fu ” や ” ra ” と同じように、1つのまとまり=1モーラの長さを持ちます。しかしシラブルとしては、母音を欠くため単独でシラブル構造を作ることができず、核 ” a ” を中心に ” r ” と共に3音で1つのまとまり=1シラブルを作ります。
モーラが時間を基準とした単位で1つ1つのサイズがそろっているのに対し、シラブルは一般的に1つの母音を中心に前後の子音で作られるので、子音の数によりそのサイズが変わります。
上の図は ” structure ” という単語のシラブル構造を表したもので、この単語は ” struc ” と ” ture ” の2シラブルとして発音されます。2つ目のシラブルは母音の前後1つずつ計2つの子音が、1つ目のシラブルにはなんと4つもの子音が母音にくっついて1つのかたまりを作っています!長さは異なりますが、どちらも1つのシラブルです。
どの言語話者でも丁寧にゆっくり発音する場合、シラブルかモーラの単位ごとに区切ることでしょう。そうして発音しやすい音のかたまりを作るんですね。しかし、どちらの単位を用いるかは言語ごとに異なります。そしてその単位をベースに、各言語のリズムができています。
次回はその『言語のリズム』についてお伝えします。外国語の楽曲を歌う時、どうもリズムに乗りにくいと感じたことはありませんか?でもそれは、あなたが音痴なわけではないかもしれません。
執筆:Anne