ちゃんと発音しているつもりでもどうもネイティブの発音と違う。もしかするとそれは、子音だけの発音ができていないせいかもしれません。今回からシリーズ「子音だけの発音って?」と題し、日本語なまりの元凶ともいえる発音、そしてそれを脱却するヒントについてお伝えします。まずは母音、子音について。脱日本語なまりでネイティブの発音に近づきましょう!
2種類の音声
音声は母音(voyelle)と子音(consonne)に分けられます。一般的に日本では「アイウエオ」が母音、それ以外が子音と認識されていますが、厳密に言うとそれらは音の作られ方で区別されています。
母音とは
音声は空気の流れを用いて作られますが、母音はその流れが妨げられずに作られる音です。そして母音には、声帯振動を伴うという特徴があります。
声帯は喉にある器官で、肺から出る空気の流れにより振動し音を作ります。「アー」と声に出して喉を触ってみてください。この振動を手で感じることができますよ。このように声帯振動があることを有声、その音を有声音と呼びます。原則的に母音はすべて有声音です。
声帯で作られた音は、共鳴によって「ア」や「イ」など異なる母音になります。口の形や舌の位置を変えるなど、空気の通り道の形状を変化させることによって共鳴の仕方が変わり、音色が作られます。
子音とは
子音は空気の流れが妨げられて発せられる音です。唇や舌などを使い空気の通り道を狭めたり、完全に閉鎖したりして音を作ります。どこでどのように妨げられるかでまったく違う音になります。
例えば、歯茎の裏に舌をあて空気の流れを完全に止めてから一気に吐き出すと、タ行の音( t )ができます。しかし舌を歯茎に近づけるだけだと、空気は狭められた通り道を抜けサ行の音( s )になります。
タ行のように、空気の流れを完全閉鎖してから開放し作る音を破裂音、サ行のように狭い隙間に空気を通して作る音を摩擦音と呼びます。なお子音には声帯振動を伴わないものがあり、無声音と呼びます。日本語では濁音、ナ行、マ行~ワ行が有声音、その他(半濁音含む)は無声音です。
子音だけの音
子音単独の音とはどんなものでしょう?例えば “s” は “a” と組み合わさると「サ」に、”o” だと「ソ」になります。では “s” 単独は?
子音と母音を分解
「サ」を分解してみましょう。ゆっくり「サー」と言ってみてください。舌を歯茎の裏に近づけてから徐々に遠ざけて、スローモーションで口を動かしてください。
アの音が聞こえる前に何か聞こえませんか?空気が抜けるような音がします、それが “s” という子音の音です。「アー」と母音を言う前に止めると “s” を単独で発音したことになります。どうでしょう、できましたか?
voixとbruit
ところで、子音は母音と違ってあまり「声」という感じがしませんよね?摩擦や破裂の音です。実は、母音の ” voyelle ” は ” voix(=声)” に由来しているのですが、音声学では母音を “voix” 、子音を ” bruit(=音・雑音)” と表現することがあります。
子音は自然界にある音に近く聞こえます。そのため、フランス語などの言語では擬音語に子音を多く用いるようです。たとえば”Bzz”、何の音だと思いますか?イメージしてみてください。
正解はこちら。
虫の羽音です。”Bzz”と少し低く摩擦するような音から、虫が羽ばたいているような感じが想像できますよね。
子音は声を出す、喉を使うと言うよりも、音を作る感じなんですね。
実は私たちもふだん無意識に使う音で、子音だけの音があります。たとえば「静かに」のサインで口元に人差し指を当てながら出す音。”shii” ではなく”shhh” です。
まとめ
子音だけの音の感覚、なんとなくつかめたでしょうか?音声は子音と母音に分けることができ、それぞれ単独の音があるんですね。フランス語には子音の後に母音がないものがあり、子音だけで発音できることが発音上達の鍵になります。しかし、この子音だけの発音は多くの日本語話者にとってむずかしいようです。それはなぜでしょう?詳しくは次回「音の配列」で。お楽しみに!
執筆:Anne