美しきエレーヌ 〜スイーツのフランス語

2021.04.21

スイーツバイキング、ジュレ、ケーキ

コーヒーやお茶とともにまったりと、あるいはカラフルなショーケースにうっとり。フランスには目移りしてしまうほどスイーツの種類がたくさん。でも、レストランのメニューの名前からはどんなデザートか想像できなかったり、どうしてこんなネーミングなのだろうと思ったりしたことはありませんか?そんなフランススイーツのネーミングとスイーツにまつわるお話を、シリーズにしてご紹介したいと思います。今回は“belle Hélène(美しきエレーヌ)” をご紹介します!

 

名前の由来

時は19世紀。パリが繁栄した華やかで美しい時代、オペレッタ(operette)と呼ばれる主に喜劇を扱った軽いオペラが流行しました。そんな中1864年、ジャック・オッフェンバックのオペレッタ ”La belle Hélène(美しきエレーヌ)” の初演がパリのヴァリエテ座で行われ、ギリシャ神話のトロイア戦争を題材にしたパロディは、人気を博しました。スイーツの名前の由来となった ”Hélène(エレーヌ)” は、その美しさから戦争の原因となった劇中の人物です。
スイーツ “belle Hélène” を考案したのは近代フランス料理の父、フランス語では “roi des cuisiniers(料理人の王)” とも称されるオーギュスト・エスコフィエ。1898年にパリのヴァンドーム広場にあるオテル・リッツの初代料理長をつとめた人物で、調理の合理化、近代化を行い、フランス料理を世界に広めました。このオペレッタが流行した当時、彼はオッフェンバックの劇場があるシャンゼリゼ通り近くで働いていたそうです。彼は実際に観劇したのか、そしてデザートを考案するに至った経緯は?など詳しいことは知られていませんが、この作品からインスピレーションを受けたことは間違いないようです。
ちなみに、エスコフィエは度々オペラから料理の発想を得ていたようで、”belle Hélène” を考案した30年後には、オペラ歌手ネリー・メルバから名前をとった “pêche Melba(ピーチメルバ)” を考案しています。

 

美しいたたずまいのスイーツ

皆さんは ”belle Hélène(美しきエレーヌ)” と聞いて、どんなスイーツを想像しますか?戦争の原因となってしまうほどの絶世の美女の名前を冠したデザート”belle Hélène” は、つややかなチョコレートソースをまとった洋梨が、バニラアイスクリームをお供に、お皿の上で美しくたたずむスイーツです。ジューシーな洋梨と、温かくほろ苦いチョコレートソース、そして冷たいアイスクリームが絶妙なハーモニーを奏でます。”belle Hélène” は、時を経た今も多くのレストランのデザートメニューを飾る、フランスでは定番のスイーツです。

それでは、レシピを簡単にご紹介。甘く完熟した洋梨の皮をむき、白ワインまたはシロップで煮て、でき上がったら冷蔵庫で冷やします。そしてサーブする時に、温めたチョコレートソースをかけ、バニラアイスクリームを添えれば完成です!
このスイーツが誕生した当時、冷たいものと温かいものを組み合わせるデザートがとても流行したそうです。温かいチョコレートソースが冷たい洋梨の表面をゆっくりと流れる様は美味しさを演出し、目だけでなく心も奪われそうですね。

 

まとめ

今回は、洋梨のデザート”belle Hélène(美しきエレーヌ)” を語源とともに紹介しました。もしレストランのメニューで見つけたら、ぜひ試してみてください。シンプルなデザートですが、アーモンドを散らしたりクリームを添えたり、店それぞれにアレンジを加えていることもあるので、いくつかのレストランで食べ比べてみるのも楽しいですよ!

執筆:Anne

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