先週、パリ郊外の南部、アルクイユ(Arcueil) で、学校の前の道路に飛び出した12歳の男子中学生にビンタをしたバスの運転手が、「暴力行為」で懲罰の対象になっていましたが、運転手を擁護する署名が27万件集まっています。
12歳の少年、バスの運転手に向かって「黙って運転してろ!」
9月13日、パリ郊外の南部ヴァル=ド=マルヌ県 (Val-de-Marne) のアルクイユのデュルシー・セプテンバー中学校(collège Dulcie-September)前の道路で、12歳の中学生が通行中の323番線のバスの前に飛び出し、バスは急停車しました。
運転手がこの少年を口頭で注意したところ、少年は「黙ってバス運転してろ!」と逆に運転手に悪態、怒った運転手はバスを降りて少年にビンタをし説教しました。
運転手がビンタ、ビデオがSNS拡散
この一連のシーンをビデオに撮った生徒がSnapchatに投稿したところ、100万回閲覧され、あっという間にSNSでフランス中に広まり、議論が巻き起こっています。ただ、ビデオには少年が道を横断してバスの前に飛び出したシーンや、急ブレーキを踏んで止まったあと、運転手が口頭で注意したシーンは写っていません。
パリジャン紙(Le Parisien)によると、ビンタされた中学生の母親は、警察で犯人不詳の告訴の手続きをしました。警察の事情聴取で少年は「バスに乗ろうと思って走って道を渡ったところ、クラクションを鳴らされ、運転手に黙れと侮辱された」と証言したようです。
運転手に「非」、処罰は不明
バスを運行するパリ交通公団RATP(Régie autonome des transports parisiens)の就労規律評議会にて、「公共サービス事業会社の原則に反する」として、運転手の非を認めています。しかしながら、運転手がどのような罰則を受けたかについては、発表されていません。
ビンタをした運転手の方は、この件があまりにも大きくメディアで取り上げられ、世間の注目を浴びたことに当惑してか、今のところ職場復帰していません。
27万件も運転手を擁護する署名集まる
先週末にはRATPの職員と名乗る人が匿名で、「優しく、もの静かで忍耐強い性格として職員の間で知られている」運転手を擁護する署名活動をメゾピニヨン(MesOpinions)という陳情書サイト上で開始したところ、昨日の時点で27万件の署名が集まっています。
運転手の同僚もテレビのインタビューで、「父親の感覚でビンタをしたと思う」と、運転手の行為を弁護しています。
不道徳、年々悪化ーバスの運転手の「無力感」
石を投げられたり、侮辱されたりと、パリ郊外の南部を走る323番線のバスの運転手たちの日常は楽ではありません。この路線を走る運転手カメル(Kamel)さんは「同僚に100%同情する。この手の無作法は日常茶飯事だ。特に中学生は集団で来るから要注意」と、子供たちの不道徳の現状を語っています。
運転手暦20年のエリック(Eric)さんによると、こういった不道徳行為が「年々悪化の一途」をたどって頻発しているせいか、運転手たちが受けた誹謗中傷や暴力的な行為は「窓ガラスが割れて保険の申請が必要な場合」を除き、ほとんど報告されることはないようです。
※画像はWikipediaよりお借りしました。
執筆:マダム・カトウ