6月27日 政府が16歳以上の男女に最低1ヶ月の「兵役義務」を発表

2018.07.02

27日(水)、フランス政府は、普遍的国民役務(Service national universel)と呼ばれる一種の徴兵制度を、2019年秋から段階的に導入していくと発表しました。これにより、16歳の男女が最低で1ヶ月の兵役義務を課せられることになります。

 

普遍的国民役務とは

普遍的国民役務は、テロやの脅威や急増する移民問題に対して、国民の結束力を高めることを目的としています。制度は来年の秋から段階的に導入されていき、内容は2段階に分かれます。

16歳の男女全員に義務付けられる、第1段階の期間は1ヶ月。軍や警察、消防などでの訓練を15日間、ボランティア活動や慈善団体などでの奉仕活動を15日間行います。文化的な活動や生活がテーマで、「仕事によって得られた豊かな経験や人間関係の構築が、その後の社会的な役割を高める」と説明しています。

一方、任意で参加する第2段階は、3ヵ月~6か月、最長で1年で、主に「国防や安全保障に関する分野での奉仕作業」がテーマとされていますが、福祉、伝統産業などの分野でのボランティア活動も含まれる予定です。

現時点では詳細は未定ですが、今後有識者や若者の意見を参考に、内容を詰めていきたい考えです。

 

マクロン大統領の思い描いた「徴兵制度」からは大幅に後退

エマニュエル・マクロン(Emanuel Macron)大統領は、昨年の大統領選挙の際、国民の結束を高めることを目的に、18歳~21歳の男女(対象者およそ60万人)に1ヶ月間の兵役義務を課す、徴兵制度の復活を公約として掲げていました。

今年の1月19日におこなわれた演説の中で、「(徴兵制度復活)実現に向け、関係機関と協議を重ねる」と述べていました。

マクロン大統領が思い描いていたこの徴兵制度は、1カ月間、実際に軍施設などで軍の生活を経験することで、若者に国防に関する意識を高めてもらい、フランス国民としての結束を高めることが目的とされていました。

しかし、フランス国軍に負担がかかり過ぎることや、若者受け入れの為の費用が膨大になることから、大幅に規模が縮小され、また国軍に負担が集中しないよう、奉仕活動などが盛り込まれる形となりました。

 

学生や労働組合は反発

一方、対象となる学生たちはこれに強く反発しています。

世論調査会社が行った調査によると、国民の6割がこの普遍的国民役務の導入に賛成していますが、対象者を兵役義務が課せられる若者に絞ると、賛成は半数を下回っていて、マクロン大統領の政策が若者には受け入れられていないことが浮き彫りになりました。

フランス労働総同盟(Confédération Générale du Travail CGT)の、フィリップ・マルティネス(Philippe Martinez)代表は「やりたくないことをすることは時には重要だが、時間を無駄にすることは強制できない」と述べ、マクロン大統領の政策を批判しています。

また、新規対象者の徴兵が停止された1996年の時点で、当時18歳で徴兵を免れたマクロン大統領は、徴兵を経験していないただ一人の大統領として認識が強く、マクロン大統領の発言には説得力がない、との意見も聞かれます。

 

フランスの徴兵制度

フランスでは、18世紀のフランス革命以降徴兵制度がとられていて、第二次世界大戦後は、18歳~22歳で兵役義務がありました。

その後シラク大統領によって軍隊の職業化が推し進められ、1996年意向、新たな対象者の徴兵が廃止され、段階的に徴兵制度が廃止、2001年に完全に撤廃されました。

兵役義務廃止後は、年に一度、16歳~25歳の若者に対してフランス軍の歴史や安全保障を学ぶ「国防の日」を制定し、参加を義務付けています。

 

2019年にもスタートしたい考え

最終的には、およそ80万人が参加するとみられ、フランスメディアによると、この普遍的国民役務の為に必要な費用は、年間17億ユーロ(およそ2210億円、1ユーロ:130円)~20億ユーロ(およそ2600億円)以上かかるものと試算されています。

政府は2019年にも普遍的国民役務を開始したい考えですが、若者の理解も十分に得られておらず、課題も山積みの状態で、今後の展開に注目が集まっています。

執筆:Daisuke

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