5月29日 フランスでセクハラ法案国会通過 未成年保護強化

2018.05.31

Par Richard Ying et Tangui Morlier — Travail personnel, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17800606

男女平等担当国務長官(Ministre chargé des Droits des femmes)マーレーヌ・シャパ(Marlène Schiappa)が提出した、「セクハラおよび性的暴行に関する法案」が5月29日に国会を通過しました。後日元老院(Sénat)で承認されれば成立するこの法案は、特に未成年の保護を強化していますが、メディアで議論が巻き起こっています。

 

「与党大多数賛成」で法案通過だが・・・

与党議員の大多数の支持で、賛成115票、反対29票、棄権25票で通過した「セクハラおよび性的暴行に関する法案」ですが、採択にいたるまで3日間にわたり議論が白熱しました。

賛成に投票した与党議員も含め、期待された未成年保護の内容が不十分とされ、採択後も不満や遺憾の意を表明する議員が出ています。

 

争点は「15歳未満への性行為はレイプ?」

当初この法案には、15歳未満との「挿入を伴う性行為」は「合意の上」という判断が認められない(つまり事実上「レイプ」とみなされる)、という事項が盛り込まれていました。

しかしながら、この「事実上の推定(レイプ)」が、「人権を無視する違憲ではないか?」という議論の末、最終的に今回の法案から削除されました。

この件について最も厳しい罰則を求めていた共和党(LR : Les Républicains)のステファン・ヴィリー(Stéphane Viry)議員は、「これで我々の票を失った」とコメントし、社会党(Parti Socialiste)のマリエッタ・カラマンリ(Marietta Karamanli)議員は「別の案を持って出直して来なさい」と発言するなど、左派右派関係なく野党から非難を浴びています。

一方、今回の法案作成に携わった与党共和国前進党(LREM:La République En Marche)のディミトリ・ウブロン(Dimitri Houbron)議員は、「今回の法案はまだ完璧とはいえないが、我々の目指す堅固で厳しい法律への第一歩」と、自己評価しています。

 

「事実上の推定(レイプ)」は断念も、未成年保護強化

「事実上の推定(レイプ)」は断念したものの、今回の法案には15歳未満の未成年の保護を強化するための事項が盛り込まれています。

被害者が15歳未満の場合、「拘束された」、「不意をつかれた」などのレイプ被害の基本的な特徴は、「被害者は精神的なもろさを利用され、正しい判断を下すことができなかった」とし、「合意の上」とはみなされないことが明記されています。

さらにレイプの場合、実刑が懲役5年から10年と倍になり、時効は10年から20年に延長されました。

ただし今回の法案では、加害者の行為を「拘束、暴力、脅迫、または不意打ち」などで特徴付けられない場合には「レイプ」とみなされない可能性があり、求刑されないことにもなります。

加害者に有利?女性・未成年保護団体も非難

今回の法改正でもっとも期待されていたこの部分は、多数の被害者団体の怒りを買っています。また、最近のレイプ裁判で11歳の少女が「合意の上」だったとされたケースが2件続き、女性と未成年の権利を守る団体は、逆に「レイプ行為の解釈を加害者に有利にしている」と新案を非難しています。

今後、元老院にて議論されるこの法案は果たして可決されるでしょうか?今後の進展が注目されています。

執筆:マダム・カトウ

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