2016年にドギーバッグ(レストランなどでの食べ残しを持ち帰るための袋や容器のこと)推奨法が履行されてから2年、国会の立法委員会で4月4日にドギーバッグ義務化の修正法案が可決されました。
ドギーバッグの義務化
フランスのレストランでは、日本と比べると提供される料理の量が多いですが、ドギーバッグはまだあまり浸透していません。この度、国会の立法委員会でドギーバッグの義務化が可決されました。
2016年に履行された法律では、年間10トンの生ごみを出すレストランへの「推奨」でしたが、今回の修正法案は「すべてのレストランに対し義務化」ということで、さまざまな議論がされています。
国全体の食べ物の無駄を減らす
環境及びエネルギー消費管理局ADEME(l’Agence de l’environnement et de la maîtrise de l’énergie)の調査によると、フランスでは毎年国民一人当たり20キロの消費可能な食べ物が捨てられています。合計すると国全体で毎年130万トンの食べ物が廃棄処分されていることになります。そのうちレストランでは、1食につき約150~250グラムの料理が捨てられています。
すでにスーパーや食料品店が消費可能な売れ残りを廃棄処分することが禁止され、慈善団体への寄付などが義務付けられていますが、今回のドギーバッグ義務化も、食べ物の無駄を国全体で減らしていくための一環といえます。
お金の節約になる
農務食物省(Ministère de l’Agriculture et de l’Alimentation)の発表によると、フランスで無駄に捨てられている食べ物を金額にすると、年間一人当たり100~160ユーロ(約1万3千円~2万円)、国全体で120~200億ユーロ(約1兆5千億円~2兆6千億円)にも上ります。
パリのレストランやカフェで食べるメインディッシュは一皿大体15~20ユーロ(約1900円~2600円)、レストランで食べ切れなかった料理をドギーバックで持ち帰り、翌日の食事に回すことでお金の節約にもなります。
一方、レストラン側の反応は?
ホテル業界組合UMIH(l’Union des métiers et des industries de l’hôtellerie)のレストラン部門の代表ユベール・ジャン(Hubert Jean)氏は「ドギーバッグ用の容器の購入などをレストランに法令で強制するのは賢明ではない」と発言しています。また、パリおよびイル・ド・フランス地方商工会議所(la Chambre de commerce et d’industrie de région (CCI) Paris Île-de-France)も、レストラン業界にはすでに数々の衛生管理や顧客への表示義務や規制があり、これ以上負担を増やすのは好ましくないとしています。
ドギーバッグはフランス文化にそぐわない?
ドギーバッグ「doggy bag」するというのは、「犬にあげるため」という建前でレストランでの食べ残しを家に持ち帰るという意味で、アメリカで生まれた慣行です。自国の食文化にとりわけ誇りを持つ星付レストランのシェフたちの中には「フランスではドギーバック=ケチというイメージ」「シック(粋)じゃない」といった反論もでています。
果たして、パリの3ツ星レストランでドギーバッグをしている光景に出会う日は近いでしょうか?
執筆:マダム・カトウ