4月3日に始まった、SNCF(フランス国鉄)の長期に渡るストライキは終了のメドがたっていませんが、ストの影響で鉄道以外の交通手段は大盛況です。カーシェアーリング最大手のブラブラカーBlaBlaCarはなんと、長距離バス運行を開始します。
ストで需要が普段の6倍に
フランスではすでに公共交通の代替手段として市民権を得ているカーシェアリング(自家用車の相乗り)ですが、フランス国鉄のストライキで各社需要が2倍以上に膨れ上がったと発表しています。
業界最大手のブラブラカーBlaBlaCarは、ストの初日の4月3日(火)の相乗り席のオファーが通常の火曜日の3倍、18万4000席に達したと発表しました。これは実に、2階建てTGV車両の368両分に相当します。
需要のほうは通常の約6倍に上り、約9万席あったと思われる席が「ほぼ満席」、特に「パリ~リール(Lille)間などの人気路線は需要に供給が追いつかず、登録した空席のオファーは1時間以内に予約が入るなど、ストの2日間は100%埋まった」と創業者の一人、二コラ・ブリュッソン(Nicolas Brusson)氏は話しています。
ストの日程に合わせ長距離バスを運行開始
この「ストライキ特需」を商機とみて、ブラブラカーはもっとも需要の高い路線に、長距離バスを運行することを決定しました。まずはフランス国鉄のストの日、及び週末の金曜と日曜に限定した運行を開始します。4月1ヶ月で500万席の販売が予測されていますが、スト終了後も事業として継続するかは、「ストライキ終了の6月末の結果次第」としています。
「マクロン・バス」と呼ばれる長距離バスの需要増
マクロン大統領が経済・産業・デジタル大臣だった2015年に通称「マクロン法」にて長距離バス路線が自由化されると、イジリーヌIsilinesやドイツのフレキシバスFLEXIBUS など、新規長距離バス会社がフランスの市場に参入しはじめました。
長距離バスはフランス国鉄の料金の約3分の1の低料金で「ローコストバス」ともよばれ、その需要は年々増え続けています。そして自由化からわずか3年で、長距離バスの利用者は年間7百万人を突破しました。
とはいえ、フランス国鉄の利用者は1日あたり約5百万人、その80%がパリ及びイル・ド・フランス県の通勤客ですが、鉄道にくらべ長距離バス市場はまだまだ小さいといえるでしょう。
フランス国鉄ウィービュスOUIBUSで参入も赤字事業
フランス国鉄自体も、自由化前の2012年にバス会社を100%出資で設立し、イーデービュスiDBUSという名前のバスをフランス国内40都市、及び欧州の一部の都市へ走らせていました。
そして2015年上記の「マクロン法」にて長距離バス路線が自由化されるとiDBUSはウィービュスOUIBUSに名称を変え、さらに路線を拡大しました。親会社の鉄道路線と食い合いになるのを覚悟で、「ローコスト」を掲げ参入した民間企業との熾烈な競争を繰り広げています。
2017年時点でウィービュスを含めた大手3社とも黒字化できておらず、ローコストバス事業の採算性が疑問視されている中、サイト上でカーシェアリングの場を提供するだけのプラットフォームビジネス専門のブラブラカーが、バス事業を通年事業として成功させられるかが今後の課題となります。
執筆: マダム・カトウ