フランス大統領選、マクロンを追い上げる極右ルペン、10日に第一回投票

2022.04.08

フランス大統領選、マクロン氏を追い上げる極右ルペン 10日第一回投票

4月8日(金)、フランス大統領選挙の第一回投票を10日(日)に控えて行われた直近の世論調査で、トップを走る現職マクロン氏への投票意図は26.5%、2位のマリーヌ・ル・ペン(Marine Le Pen)氏が24%と2.5ポイントの僅差に迫っています。

 

ルペン氏、極右の「悪魔的」なイメージ脱却図り支持拡大

1ヶ月ほど前の世論調査では、首位の現職マクロン氏に6ポイント以上の差をつけられていたル・ペン氏ですが、投票日が近づくにつれその差が縮まってきました。

決選投票でマクロン氏に敗北した前回の大統領選に続いて、今回の選挙キャンペーンでも「極右」の「過激で排他的」なイメージのを払拭し、自らが率いる国民連合をいわゆる「普通の右派政党」に見せることに腐心してきました。

その努力が功を奏したのか、世論調査毎にル・ペン氏の支持率が上がっています。

今年の大統領選では、ル・ペン氏よりもさらに過激で人種差別や女性蔑視を公言する論客のゼムール(Éric Zemmour)候補の登場が「ル・ペン氏のイメージアップに貢献した」と、調査を行ったエラブ(Elabe)社は分析しています。

変わらぬ「外国人排斥」、プーチンとの「太いパイプ」発言で非難轟々

外国人を「逆移民させる」、つまり母国に返すと公言し、フランスで生まれたという理由でフランス国籍が取得できる「出生地主義」を廃止するという公約を打ち出すゼムール氏ですが、言葉は違ってもルペン氏の方針との違いはありません。

ル・ペン氏は、極右政党に特有の「国家が外国人の脅威に晒されている」という世界観を持っており、フランスを統治する「エリートへの不信」や、労働者の権利を守ろうとする「労働組合蔑視」、「メディアへの不信」をあからさまに表明しています。

またウクライナ侵攻では、イスラム原理主義との戦いで「ロシアと協調する計画があった」ことから、プーチン氏との「パイプ」の太さを強調しましたが、メディアで非難を受け「修正」する発言をしています。

 

国民の関心事は「移民」より「購買力」

今回の大統領選で最も重視する点として、フランス国民は「購買力」(57%)を挙げている事が、約1週間前の世論調査で明らかになっています。

ここ数ヶ月のインフレ、特にガソリン価格の高騰や生活必需品の値上がりがダイレクトに家計に響くため、購買力の重要度は1年前の4月(33%)に比べ実に34ポイントも上昇しています。

2位は現在も続く新型コロナ感染拡大の影響による「健康」(28%)、3位は「年金」(24%)となっています。

移民問題への関心は常にあるものの、現時点では前年対比マイナス3ポイントの19%と環境問題(22%)を下回っています。

 

現職マクロン氏、「年金支給額見直し」を約束

1年前に19%だった「年金」への関心が直近で5ポイント増えた原因として、インフレによる購買力の低下に加え、マクロン氏が公約の一つに盛り込んだ年金受給開始年齢の65歳への引き上げが挙げられます。

過去数ヶ月のインフレへの対応策として、家族手当が4月1日より1.8%、最低賃金も5月1日より2.5%引き上げられますが、年金は今年の1月1日に僅か1.1%引き上げられたに過ぎません。

マクロン氏は今週6日に出演したテレビ番組で、再選した場合年金の引き上げについては来年の1月を待たず、この夏にも行うことを約束しました。

インフレ率4.5%上昇

ルメール(Le Maire)経済相も、「今年3月の消費者物価指数の上昇率は4.5%と高い」ことから年金支給額見直しの前倒しは「必要だ」と発言しています。

 

マクロン氏に、得票狙いの「バラマキ」批判も

選挙直前の「気前の良い」年金の見直し発言は、確かに年金受給者にとっては喜ばしいことですが、同時に投票所に足を運ぶ可能性が最も高いこの層への「得票狙いのアピール」だと非難の声も上がっています。

一方、年金受給者だけの「優遇」にとどまるのは不公平として、家族手当のさらなる見直しや生活保護給付金なども対象にすべきだという議論も巻き起こりそうです。

執筆:マダム・カトウ

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