12月15日(火)、フランス文化省は国民が今年3月から約二ヶ月間に渡った、ロックダウン中の過ごし方についての調査結果を発表しました。それによると、世代間や収入による文化活動のギャップが縮まったことがわかります。
60歳以上がSNS、オンラインゲーム
高齢者がオンラインゲームやSNSを始め、管理職クラスの人が読書しなくなったり、子供が彫刻を始めたりと、映画館も劇場も商店も学校も閉まっていたロックダウン中にフランス人が行なった文化活動には、不思議な現象が現れています。
また、コロナ禍においてはあらゆる方面での社会的格差が広がる中、文化活動においては逆に格差が縮まっていることも今回の調査で明らかになりました。
世代間のデジタルカルチャー格差縮まる
60歳以上の高齢者は、オンラインビデオ配信、SNS、オンラインゲームなどを初めています。2018年の同じ調査で「オンラインゲームをやる」と答えた人は全体の17%しかいませんでしたが、2020年には倍の34%に増えています。
ロックダウンで子供や孫、友人等と会う機会がなくなり、孤独感から社会との繋がりを求めてSNSを始めた人が増えています。2018年に「頻繁にSNSをやる」と答えた60歳以上はわずか12%でしたが、ロックダウン後は43%と約2人に一人がSNSを利用しています。
これまで「若者の遊び」というイメージが強かったこれらのアクティヴィティが高齢者にも受け入れられた理由として、「物理的に人に会えないから必要に迫られた」ことや、「メディアでのイメージも変わってきている」ことが挙げられると、社会学者のフィリップ・ロンバルド(Philippe Lombardo)氏は説明しています。
世界保健機関(WHO)は「距離を置いて一緒にプレイしよう」(“Play Apart Together”)というスローガンを掲げ、コロナ禍で人々の孤独感が増す中「オンラインゲームの健康への好影響」を積極的に発信しています。
若者は絵画、彫刻、歌やダンス
年々スマホに噛り付いている時間が長くなり、オンラインとSNSにしか関心がないと言われてきた15〜24歳までの若者で、絵画、彫刻、写真、歌、ダンスなどのうち少なくとも1つを行っている人は、2018年の57%からロックダウン中は71%に急増し、10年前の数字に戻っています。
SNSウケを狙ったダンスや歌などにチャレンジ
3月からのロックダウン中に、若者たちがドイツのユーロダンスグループ、カスケーダ(Cascada)の大ヒット曲「いつでもタッチ」(”Every Times we touch”)を窓辺で歌ったり踊ったりしている光景が見られ、「窓辺で歌や演奏」を行なったり、オンラインでバンドやオーケストラが演奏しSNS上で話題になりました。
15〜24歳の若者層は、SNS上の自分のイメージを特に重視している事から、ロックダウン中に写真を勉強したり、歌やダンスを始める人が急増し、2年前と比べダンスは17ポイント、写真は10ポイント増加しています。
テレワーク疲れ?のホワイトカラー、時間ができたブルーカラー、文化格差縮まる
ホワイトカラーの管理職はそもそもブルーカラーに比べ、文化活動に積極的でしたが、ロックダウン中にその格差が縮まっています。
学歴の低い層、肉体労働者層がミュージアムやコンサート、科学など文化教養のプログラムをオンラインで視聴した割合は2018年から10ポイント増えています。
ロックダウン中にテレワークができないこの層は、政府の給与7割保証を受けた「休業扱い」となり、自宅で余暇を過ごすことになりました。子供と家で一緒に過ごすため、学校が推奨する教養に良いプログラム、美術館のバーチャルビジットなどを積極的に活用したことが要因と見られます。
一方、ロックダウン中の2ヶ月間、「テレワーク」で業務を続けたホワイトカラーの管理職層は、家で長時間パソコンの前にいたせいもあり、15ポイント落としています。
また、従来この層が最も熱心な「読書」もわずかにポイントを下げています。
どうなる?コロナ後の文化活動
ロンバルド氏は「注目すべきは、ロックダウン中に始めた文化活動がどれだけ定着するか」だとし、「一度見つけた楽しみはそう簡単に手放さない」と予想しています。
確かにミュージアムが再開すれば、バーチャルミュージアムの需要は減るかもしれません。
では、オンラインゲームの味をしめた高齢者はどうなるでしょう?
執筆:マダム・カトウ