10月27日(火)、1日の感染者が5万人を超えるなど、フランスでの新型コロナウイルス感染の急速な拡大とともに、全国で医療機関が逼迫し始めています。マクロン大統領は明日の追加対策発表を控え、エリゼ宮にて本日も緊急閣僚会議を開いています。
5つのシナリオ、専門家の意見は?
10月に入り、フランスにおける新型コロナ感染第二波の勢いが予想外に激しくなっています。そのため、医療関係者からは再びロックダウンを要求する声も上がっています。
今年の3月から約2ヶ月間続いたロックダウン後、「次のロックダウンはない」と宣言していたマクロン大統領は、フランス経済を維持しつつ、コロナ感染の勢いを食い止める対策を検討しています。
1)中高および大学の学校閉鎖
疫病学者のアントワーヌ・フラオー(Antoine Flahault)氏は、現在秋休み中の学校が再開する11月2日から、中学、高校、大学を閉鎖すべきとし、小学校については閉鎖はしないものの、現在11歳からのマスク着用義務を6歳からに引き下げることを提案しています。
9月の新学期から学校での感染者が増えており、陽性で無症状の子供が家で他の家族に感染させるケースが増えているからです。
また、政府が7〜8月の夏のバカンスシーズンに移動などの制限を行わなかったため、フランスの地方にある実家に若者や子供連れが都市部から帰省し、第一波では感染者がほとんど皆無だった地方への感染が広がったと見られています。
2)経済重視、個人の集まりを制限
「国民の健康と経済活動のバランスを取っていく」と、労働大臣のエリザベット・ボルヌ(Élisabeth Borne)は、政府の対策によるフランス経済への影響を「最小限に食い止める」意向を示しています。
リール大学病院教授のフィリップ・アムイエル(Philippe Amouyel )氏は、「テレワークの強化は続けるものの、企業や商店など経済活動には制限を加えず、学校も閉鎖しない代わりに、公の場での集会や個人の集まりを禁止し、外出の際は必ず外出証明書を義務付ける」という、経済や教育活動のみを認める「経済と感染対策のハイブリッド」案を推奨しています。
この案はすでにアイルランドで導入されています。
3)夜間外出禁止を19時から、週末のみロックダウン
やはり経済、教育活動を重視する案として、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ(Auvergne-Rhône-Alpes)地方の医師組合は、夜間外出禁止の開始時間を現在の21時から19時に前倒しするほか、土日のみ終日外出禁止にする案を推奨しています。
ちなみに、この案は現段階でかなり有力視されています。
4)地域別ロックダウン
5月のロックダウン解除後に「今後、国全体のロックダウンをすることはないが、地域別のロックダウンはあり得る」と発表されていたこともあり、感染者急増により医療が逼迫している市町村限定でロックダウンの導入が検討されています。
5)高齢者、重症化リスクが高い人の「差別的」ロックダウン、前回は却下
医療関係者および疫病学者からなる、コロナウイルス対策科学評議会は、5月11日のロックダウン解除後も、高齢者や重症化の可能性が高い持病を持つ人のみを対象にロックダウンを続けるべきだという意見を出していました。
当時、マクロン大統領は特定の国民を「差別」することはできないとして、評議会の提案を受け入れませんでした。
しかし感染第二波の真っ只中に突入している現在、疫病学者マルタン・ブランキエ(Martin Blachier)氏は、「高齢者のみロックダウンの対象にする」ことも検討されており、また「重症化の可能性が高い疾病を持つ人を2週間ロックダウンにするほうが、全ての人を対象にするより集中治療室の入院患者数や死者数を減らすには有効」と述べ、前回却下された案が再検討の対象になっていることを示唆しています。
執筆:マダム・カトウ