1月11日(日)、フランスの個人経営のパン職人らは大型店やチェーン店に対抗するため、「フランスのパン屋(Boulanger de France)」という認定ラベル制度を開始しました。 このラベルによって、パン、菓子パン、菓子を工場などではなく店内で手作りで製造していることが認定されます。職人たちはこの制度の発足に合わせてさらなる人材の確保を目指しています。
パン個人店、生き残りを賭けて「認定ラベル」制度を開始
1月11日、パンの専門家たちはヨーロッパ見本市にて「フランスのパン屋」という認定ラベルの制度を開始しました。この制度の目的は、パン職人たちがこれまで培ってきたノウハウを守り、大型店やチェーン店などの競合店との差別化を図ることです。
彼らが特に意識しているのはチェーン店です。チェーン店は店内でパンを作ることで合法的に”パン屋”と名乗り、20年以上前から勢力を拡大してきました。菓子パンや菓子類は店内ではなく他の工場などで作られています。それでも、チェーン店は人が集まりやすいところに戦略的に作られているため、手作りにこだわる個人店の生存が脅かされています。
個人店の強み:社会問題・環境問題に対する取り組み
この状況に対処するために、認定団体による管理のもと認定ラベルが作られました。フランス全国パン・菓子連合会(la Confédération nationale de la Boulangerie-Pâtisserie française/CNBPF)会長のドミニク・アンラク(Dominique Anract)氏がフランス通信社にした説明によると、このラベルはパン職人が店内でパン、クロワッサン、菓子、キッシュ、ピザなどを作ることを認定するだけでなく、社会問題・環境問題に対する取り組みをするためにも重要な意味があるとのことです。
個人の競合店の一部には外国で製造したパンをフランスに輸入している店や、タルトに使う生地を中国から輸入している店などがあります。一方、個人店はパンを店内で製造しており、パンに入れる塩の分量を調整することもできます。また、ゴミを分別したり売れ残ったパンを寄付するなど、社会問題・環境問題に対する取り組みをしやすいという利点もあります。ドミニク氏によると、これらの点こそが個人店がその他の競合店と一線を画する理由だといいます。
パン職人の再評価
現在、パン屋兼パティスリーの店にはすでに9,000以上の雇用がありますが、CNBPFは今回の政策に伴ってパン職人という職業を再評価し、さらに雇用を促進しようとしています。
今日フランスには約33,000店のパン屋がありますが(従業員数は13万人)、1960年代には約50,000店と、今以上の数の店舗がありました。
現在、伝統的な個人店のパン屋はフランスでの市場の55%を占めるのに対して、大型店とチェーン店の占める割合は合わせて45%です。この45%の内訳は、大型店が25%でチェーン店が20%です。
こうしてみると、やはり大型店やチェーン店が個人店にとって脅威になっていることがわかります。個人店の戦略が功を奏するのか、今後の動向に注目です。
執筆:Shunsuke