11月5日(月)、セーヌ=エ=マルヌ県 (Seine-et-Marne) の公立小学校では、約半数の生徒が制服を着て登校しました。
日本では学生服は珍しくありませんが、このように公立学校で制服が導入されるのは、首都パリを含むイル・ド・フランス地域圏の中では初めてのことです。
フランスの学生服論争
制服がある学校は珍しい
イギリスなどでは珍しくないものの、フランスのほとんどの公立学校には制服がないため、フランス人の学生にとって、「学生服」は関心の的です。
パリ北部のサン・ドニ(Saint-Denis)にあるレジオン・ドヌール女子校(La Maison d’éducation de la Légion d’honneur)などいくつかの私立学校では、古くから指定の制服があります。
この学校はナポレオンによって建てられた事で知られており、文化勲章であるレジオン・ドヌールを受賞した人が親族の中にいることが入学条件、という私立学校です。ここでは、年間の学費2646ユーロ(およそ34万円/1ユーロ:128円で換算)のうち、530ユーロ(およそ6万8000円)が制服の代金に充てられます。
また、サン・シール陸軍士官学校(École Spéciale Militaire de Saint-Cyr)などの軍事学校のほか、一部の職業学校や、海外県(départements et territoires d’outre-mer、通称DOM-TOM)のマルティニーク(Martinique)には制服があります。
このように、フランスで制服がある学校は特殊な学校が多く、大多数の生徒が通う公立学校には制服はありません。
「制服論争」のきっかけ
制服の導入については昨年から議論されていました。
2017年12月に、国民教育・青少年大臣であるジャン=ミシェル・ブランケール(Jean-Michel Blanquer)氏がラジオ番組RTLにおいて、希望する地域での制服の導入を許可しようと言及したことが、皮切りとなりました。
また、同年に行われた大統領選の際、共和党(Les Républicains/LR)から出馬していたフランソワ・フィヨン(François Fillon)氏も制服導入に賛成の意を表明し、争点にもなっていました。
あくまでも強制ではない
当時からブランケール大臣は、制服があくまで強制的ではないことなどを協調しており、今回の決定ももちろん希望する地域にのみ適用されるものとしています。
セーヌ=エ=マルヌ県、3分の2近くの両親が制服の導入に「OUI」
6月2日に行われた、セーヌ=エ=マルヌ県での制服着用を義務付けることに関する住民投票では、投票権のある609世帯のうち376世帯が賛成票を投じました。
賛成の意図の一つには、私服では明らかになってしまう社会的な差異が、制服によって軽減されるという効果への期待があります。
住民投票の結果を受けて共和党議員のオリヴィエ・ラヴェンカ(Olivier Lavenka)氏は、地域の保護者や教師と調整し、中世らしい色やスタイルの制服をデザインしました。
制服の導入は意味がない?
現在のところ、制服の購入は義務ではなく、約半数の家庭しか制服を買っていないそうです。
制服の代金は最大でも145ユーロとすることなどが決められており、自治体からの支援金も支給されます。しかし、家計への影響を心配する声もあるようです。
また、統一されていない靴やそのほかの持ち物によって社会的な差異は、垣間見えてしまうので、制服の導入は意味がないと反対する人もいます。
執筆あお