12日(水)18時30分頃、アヴィニョン(Avignon)付近を走行中だったパリ(Paris)発ニース(Nice)行きのTGV(フランス版新幹線/Train à Grande Vitesse)の窓を、ハンターが撃ったものと思われる散弾銃の弾丸が突き破り、背もたれのヘッドレストへ着弾しました。
座席には誰も座っていなかった為、けが人などは出ておらず、車両は中継地点のマルセイユ(Marseille)まで走ったのち、フランス国家警察の県公共安全局(Directions départementales de la Sécurité publique/DDSP)が捜査に当たりました。
狩猟中の弾丸がそれたのではないか
事件の概要
アヴィニョンのカロリーヌ・アルマン(Caroline Armand)検事補佐官によると、被弾した弾丸は狩猟の際により大物の獲物をしとめることが出来る、ショットガン用のブレンネク(Brenneke)と呼ばれる弾丸で、窓を突き破ったあと窓際の座席のヘッドレストへ着弾しましたが、幸いなことにけが人は出ていないということです。
また現時点では、狩猟中の弾丸がそれて着弾した事故なのか、故意によるものなのか、県公共安全局はあきらかにはせず、どちらの可能性も視野に捜査を進めています。
Prendre le train retour de Paris et
qu’une balle de gros calibre traverse la vitre. . Heureusement personne n’a été blessé !!😰😱😨😫#TGV #ParisNice @France3tv@franceinfo pic.twitter.com/1pVsOwVsHu
— l’El-Biaroise Hourã (@BalqisGardenia) 2018年12月13日
パリから帰るために乗った電車の窓を重砲が突き破る…。幸運にも誰も怪我はしなかった!!
使用された弾丸
ブレンネクは、通常の猟銃の弾丸に比べると5倍の飛距離があり、木製の壁だけでなく軽量コンクリートやレンガの壁も破壊するほどの威力を持ちます。タイミングが少しでもずれていれば死者が出ていたことは確実なことから、乗り合わせていた乗客は恐怖に陥りました。
ブレンネクの威力については以下の動画で確認することができます。
年々増加する猟銃による事故
今回のような猟銃によるものと思われる事故は2011年以来40パーセント増加しています。
銃砲製造業者雇用者組合(la Chambre Syndicale des Armuriers)のイヴ・ゴルティ(Yves Gollety)代表は、近年、小さな獲物ではなく鹿やイノシシといった大きな獲物を狙うことが次第に増加してきているため、より大型の獲物をしとめることが出来るブレンネクが、ハンターの間で非常に大きな成功を収めている、と語りました。
3年間で157軒の家屋が被害に
ブレンネクを含むすべての弾薬による、猟銃被害は年々増加してきています。
2015年からの3年間で、157軒の家屋が獲物からそれた銃弾を被弾する被害に遭っています。更に、99台の車両が被弾していて、21頭の牛がそれた銃弾によって命を落としています。
家屋のすぐそばで発砲
ある家族によると、ハンターが家に近づいてきて、全く躊躇せずに発砲したということです。弾丸は一発目は家の中を横切ったあと中庭に着弾、もう一発は屋根、そしてもう一発は飼い猫に命中し、飼い猫は庭の隅で死亡していたと言います。
人家の半径150メートル以内では狩猟は禁止されていますが、このハンターは、人家の至近距離で発砲したということです。
何故人家の近くで狩猟するのか
国立野生動物狩猟局(Office National de la Chasse et de la Faune Sauvage)は、近年森の中の食べ物が減少し、イノシシや鹿が食べるものを探し求めて、人家のすぐそばまで姿を現すようになっていると話します。
また同局のジャック・ブシェ(Jacques Bouchet)氏は、「ハンター達は人家近辺で狩りをすることに慣れておらず、森の中で静かに獲物をしとめるように撃つことができない。その様な状況で銃を撃つことに訓練されていないために、このような事故が増えている。」、と述べています。
このような事故が頻発するため、ハンターの数は30年間減少し続けていることから、国立野生動物狩猟局はハンターに対し、狩猟を行う際はより慎重に行うように呼び掛けています。
執筆:Daisuke