10月１日（月）、世界で最も有名なシャンソン歌手の一人で「シャンソンの至宝」と呼ばれるフランスの大スター、シャルル・アズナブール（Charles Aznavour）氏が、フランス南部のブッシュ=デュ=ローヌ（Bouches-du-Rhône）県のアルピーユ（Alpilles）の自宅で亡くなったと、フランスメディアが一斉に報じました。享年94歳でした。（写真はWikipediaから引用）
フランスを代表するシャンソンの大スター
幼少期からデビュー
1924年５月22日、パリ中心部のサンジェルマン=デ=プレ（Saint-Germain-des-Prés）で、グルジア出身でバリトン歌手の父とアルメニア系トルコ人の母の間に生まれます。本名はシャアヌール・ヴァリナグ・アズナヴーリアン（Chahnour Varinag Aznavourian）。
両親は、アズナブール氏とその兄弟が幼いころから舞台に立たせます。７歳の頃に子役として舞台デビューし、その後芸名をアズナブールと名乗り、芸能活動を本格的に始めます。12歳の頃には既に映画にも出演しています。
1941年に作曲家のピエール・ロッシュ（Pierre Roche）と出会い、1942年にデュオ「ロッシュとアズナブール（Roche et Aznavour）」を結成し、多くの楽曲を世に送り出します。
エディット・ピアフとの出会い
1946年に、当時フランスを始め世界で絶大な人気を博していたエディット・ピアフ（Édith Piaf）に才能を認められ、彼女のアメリカツアーに同行して前座を務めます。これにより、アズナブール氏の存在が世界に知られるようになります。
ソロ活動開始
1953年にソロとして独立し、低くしゃがれた渋い歌声が人気を博し、1955年にパリのオランピア劇場（L’Olympia）で行われたコンサートで大成功をおさめます。これまでのシャンソンにジャズの要素を織り交ぜた独特のスタイルで歌う愛の歌は、多くの女性を虜にしただけでなく、男性もアズナブール氏の歌い方をまねるなど、時代を牽引していきます。
代表曲には「愛のために死す（Mourir d’aimer）」や「ラ・ボエーム（La bohême）」、「ラ・マンマ（La mamma）」、「忘れじのおもかげ（She／仏題：Tous Les Visages De L’amour）などがあり、数多くの楽曲を世に送り出しています。
また、俳優としても精力的に活動し、多くの映画にも出演しています。
レジオン・ドヌール勲章受章
2004年には、これまでの功績が称えられ、フランスで最高勲章のレジオン・ドヌール勲章（L’ordre national de la légion d’honneur）のコマンド―ル（Commandeur／５段階中上から３番目）が授与されています。
日本との関係
世界中に数多くのファンを持つアズナブール氏は、1968年に初来日し、多くのファンを魅了しました。その後、度々日本を訪れていて、最近では、2016年に「最後の日本ツアー2016」を、今年９月17日（月）、19日（水）には「生誕94周年 特別記念 来日コンサート」で東京と大阪で来日コンサートを行ったばかりでした。
また、日本における音楽分野の発展、音楽・映画を通じた日仏交流の強化、友好親善に寄与したとして、今年５月、日本政府の2018年春の叙勲 旭日小綬章が授与されました。
亡くなる直前の９月28日（金）には、日本地図が背中に描かれたジャンパーを着て出演するなど、日本好きなことがうかがえます。
また、同インタビューの中で、インタビュアーから「あなたにとって生きがいとは何ですか」と問われると「私の生きがい、それは私の仕事です」と答え、生涯歌い続けることを力強く語っています。
各界から追悼のツイートが
シャンソンの至宝の訃報に、各界から追悼のツイートが寄せられています。
Profondément français, attaché viscéralement à ses racines arméniennes, reconnu dans le monde entier, Charles Aznavour aura accompagné les joies et les peines de trois générations. Ses chefs-d’œuvre, son timbre, son rayonnement unique lui survivront longtemps.
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) 2018年10月1日
世界中に知られている、真のアルメニア系であり深くフランス人である シャルル・アズナブールは、３世代にわたって喜びと悲しみをもたらすだろう。彼の代表作、響き、たった一つの輝きは長く生き続けるだろう。エマニュエル・マクロン（Emmanuel Macron）大統領
Immense tristesse d’apprendre la mort de Charles Aznavour, un Parisien devenu une véritable icône de la chanson française et un ambassadeur passionné de l’Arménie à travers le monde. J’adresse toutes mes condoléances à sa famille et à ses proches. pic.twitter.com/HZKz5tLpNx
— Anne Hidalgo (@Anne_Hidalgo) 2018年10月1日
フランスのシャンソンの真の象徴となったパリジャン、世界を駆け抜けた情熱的なアルメニア大使であるシャルル・アズナブールの死の知らせは大きな悲しみです。ご家族、関係者の方々に哀悼の意を表します。アンヌ・イダルゴ（Anne Hidalgo）パリ市長
世界中が悲しみに沈んでいます。
執筆：Daisuke
