2025年11月10日(火)、パリのマレ地区(Marais)にある百貨店老舗BHV(ベー・アッシュ・ヴェー)に、今月5日に中国大手オンラインショップSHEIN(シーイン、フランスではシーン)がオープン、すでに5万人集客しています。「ウルトラ・ファストファッション」と呼ばれる、超低価格の衣料品販売で人気の同社は、以前から環境への影響と、中国での劣悪な労働環境で問題視されていましたが、最近、児童ポルノの人形や武器の販売が検知されるなどスキャンダルも続いています。同社の進出に、フランスのアパレル業界は猛反発しています。
オープンから数日で5万人、平均客単価45ユーロ
今月5日、パリ老舗デパートBHVマレの前には開店前から行列ができ、6階の1,200平米のSHEINの売り場は、多くの客でごったがえしました。
BHV社長、34歳のフレデリック・メルラン(Frédéric Merlin)氏によると、初日の8,000人を皮切りに、およそ5日間で5万人がSHEINの売り場を訪れ、うち15%の顧客は別の売り場にも流れています。
SHEINでの平均客単価は45ユーロ(約8,000円/1ユーロ=約177円)と好調でした。
「SHIENと一緒にされたくない」仏系ブランドがBHVから撤退
環境破壊、劣悪な労働条件、幼児ポルノ製品や武器の販売で問題視されているだけでなく、超低価格を重視するSHEINは、すでに弱体化しているフランスのアパレル業界を震撼しています。
そのブランドがパリ市民が愛着をもっていた老舗デパートに入ったことに、業界は驚愕すると同時に強く反発しています。
それを象徴するかのように、今年のクリスマス商戦の目玉として、今月4日からBHVに期間限定の売り場を設けることがほぼ決まっていたディズニーランド・パリは、SHEINのBHV進出のニュース直後に、同デパートとのパートナーシップを断念したと発表しました。
フランスのアパレル人気ブランドの代表格であるアニエスBは、BHVに長らくショップを構えていましたが、同社創設者でデザイナーのアニエスBこと、アニエス・トルブレ(Agnès Troublé)氏は、SHEINが開店した5日、自ら出演したラジオ番組で、BHVからの完全な撤退を発表しました。
さらに、同デパートから撤退したのは主にフランス製や環境重視のブランドで;APC、Maison Lejaby、Figaret、Maison Pechavy、Culture Vintage、Rivedroite Paris、Saint-Michel Parfums、Polymairなどです。
その影響で、館内の一部の売り場はテナントがなく、ガランとした状態です。
老舗デパートBHVの集客低迷、仕入れ業者への未払い1年超も
オンラインショッピングおよびファストファッションの普及から、すでにここ数年でフランスの代表的なファッションブランドの多くが倒産、そのショップが次々と街角から消えていきました。
その影響は個人商店のみならず、百貨店BHVにも表れていました。
さらに、パリ市がすすめる自転車専用レーンの増設による「車の締め出し」で、郊外から車で買い物に来ていた富裕層の客足がさらに遠のいていました。
長らく業績不振が続くBHVは、仕入れ業者に対する支払いが遅れ、半年から一年滞納しているケースも発生しています。
中国ファストファッション大手の進出は、BHVが提供していた「ブランドイメージ」を破壊し、テナント離れに拍車をかけたにすぎないとも言われています。
SHEIN、フランスおよびヨーロッパのアパレル業界を視野に
BHVマレ及び、フランスを代表する百貨店、ギャラリーラファイエットなどを所有、運営している商業不動産会社、SGM(Société des Grands Magasins)社と組んだSHEINは、「このパートナーシップは、パリだけにとどまらず、商店の不振で活気を失ったフランス中の街の活性化のための布石である。百貨店が発展することで苦境に陥るフランスのファッション業界をよみがえらせるものだ」と述べ、今後、ディジョン(Dijon)、ランス(Reims)、グルノーブル(Grenoble)、アンジェ(Angers)、リモージュ(Limoges)のギャラリーラファイエットに出店し、フランス国内で200人の雇用を生むとアピールしています。
一方、ギャラリーラファイエットはSGM社に対し、SHEINとのパートナーシップに反対の意を表明しており、今後の動向が注目されます。
執筆:マダム・カトウ













