フランス財政赤字 400憶ユーロの削減案  祝日減らしに意味はあるのか

2025.07.18

2025年7月18日(金)、増え続ける一方のフランスの財政赤字に歯止めをかけるため、ベルー政府は、400憶ユーロの「節約」をもりこんだ来年度予算案を発表しました。各方面での削減が必要とされるなか、労働者に直接影響を及ぼす祝日減らしを中心にメディアを賑わせています。

 

50年前から財政赤字、「借金に慣れ切った」

ベルー首相は予算発表演説の冒頭で「我が国は50年前から収入以上にお金をつかっており、政党にかからわずどの政権においても帳尻があったためしはない」と、収入を超えるお金を使うという「あり得ない」ことに慣れてしまったと振り返りました。

そして、「本来、財政赤字というものは存在しない」、我々は「借金を抱えており」その額は1秒間に5,000ユーロ(約86万円)ずつ増えている、という危機的な状況を説明しまた。

具体的には、増え続ける借金に歯止めをかけるため、現在GDP比5.8%の赤字を2026年に4.6%、27年に4.1%、28年に3.4%、29年には2.8%に下げる数値目標を発表しました。

 

市場では「財政改革ができないフランス」のレッテル

この状況が危機的な理由は、フランス国債利回りが上昇していることです。今年4月にはS&Pの格付けがAAーに下げられ、10年物国債の利回りが3.37%と上昇しています。

昨年6月に政治的にマクロン大統領が行った国民議会の解散以来、投資家らは政治的な行き詰まりを懸念し、フランスが統治不能リスクを抱えているとみています。

ギリシャ、イタリアに次ぎ財政赤字で3位、EU財政劣等生の仲間入り

フランスの昨年の財政赤字は1,696憶ユーロ(約29兆3500億円/1ユーロ=約173円)、これはGDPの5.8%にも上り、EUの定める財政赤字の上限3%を大幅に超える水準に達しています。

ユーロ圏内で見ると、フランスの財政赤字は、2009年から12年にかけて起きたユーロ圏の債務危機で実質上財政破綻したギリシャ、利回りが急上昇して危機に陥ったイタリアに次ぐ3位に上昇しました。

債務残高が3,000憶ユーロ(約51兆8800億円)と、フランスの倍近いイタリアですが、昨年の税収が5年ぶりに予想をうわまるなどで「現実的な改革が行われている」、と市場では経済成長率が低いフランスよりも評価されています。

さらに欧州委員会によると、今年及び来年26年にフランスはユーロ圏内で最悪の単年での財政赤字を記録すると見られています。

 

「増税なき削減」は可能なのか?

この状況下において、ベルー首相が15日に発表した26年度予算案には、438憶ユーロ(約7兆5800億円)の削減が盛り込まれています。

「所得税、消費税の増税はない」との公約で、もっぱら削減に徹した予算案には、防衛費と利息など返済費用を除く予算の凍結が盛り込まれています。つまり、2025年の予算と同額です。

これにより来年度は、年金、生活保護、子供補助、住宅補助などの社会給付にインフレ率(約1.4%の見込み)を考慮した引き上げが行われないことになります。

また公的支出の一環として、公務員の削減をあげ「定年退職した人員の3人に一人は補充しない」方針も含まれ、来年3,000人が削減されます。

また、「不要な部署」の廃止も盛り込まれていますが、具体的な内容は提示されていません。

 

祝日の削減、復活祭翌日月曜日、5月8日に賛否両論

ベル―首相は一例として、復活祭翌日(イースターマンデー: lundi de Pâques)と第二次世界大戦の戦勝記念日(fête victoire)を上げています。

キリスト復活祭はキリスト教信者にとっては重要な日ですが、これは日曜日と決まっており、翌日の月曜日に宗教上の意味はありません。

一般市民には、月曜と決まっているこの祝日は、必ず連休になるメリットがあります。

5月は1日のメーデー、毎年日付が変わるキリスト昇天祭(Ascension)と祝日が多く、ナチスドイツに戦勝したことを祝う戦勝記念日が削減案に浮上しています。ドゴール大統領により決められた戦勝記念日ですが、当時は「祝日」つまり休みの日ではなかったことが理由として挙げられています。

祝日の削減が経済成長につながるのか?

祝日削減で稼働日が2日増えると、35憶ユーロ(約6053憶円)ほどの削減が見込めると発表されていますが、この数値はあくまでも推定にすぎません。

工場、工事現場など職種によっては稼働日が増えると生産量が上がりますが、そこから生み出された利益、それによる税収増はごくわずかだという見解も経済学者らにより明らかにされています。

稼働日増により、社会保障費用、所得税の支払い額の増加が見込まれます。旅行業界では、祝日の減少は業界の収入減につながると懸念を表明しています。

どうせ誰もいない8月15日の方がいいんじゃない?

祝日の削減が国民に不人気なのは当然ですが、国家財政が危機的な状況なのも確かです。

メディアが「どの祝日を消すか?」との質問に、「どうせ皆が休暇を取る8月15日がいい」と多数の人が答えています。8月のど真ん中のこの日を含む1週間は、パリの街でも多くの個人商店やレストランが閉まっています。

開いているのはスーパーマーケットぐらい、筆者は毎年開いているパン屋を探してぐるぐる歩き回っています。

祝日ではなくなると、給与所得者はこの日休むと有給休暇が一日減ることになります。

執筆:マダム・カトウ

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