2025年3月28日(金)、フランスでは明日29日(土)の深夜から30日(日)の早朝にかけて夏時間に移行します。具体的には30日(日)の午前2時が3時に変わり、日本との時差は7時間になります。最近はスマートフォンが普及し、時間が自動的に変更されるため、会社や待ち合わせ時間に遅れる人は少なくなりました。しかし、たった1時間とはいえ、体内リズムが乱れ、時差ボケのような影響が出ることが毎年議論されています。特に夜更かしをする人には、健康に悪影響を及ぼす可能性があると言われています。
フランス人は夏時間が好き
天気予報によると、28日の日の入りは19時15分、これが30日から20時15分になり、夏至の6月21日まで毎日1~2分ずつ遅くなっていきます。
以前、夏時間に関して欧州全体で行われた調査では、フランスでは夏時間を支持する人が多数を占めていました。
夏時間に移行すると、街中のカフェのテラス席は深夜まで多くの人でにぎわい、一分でも長く屋外で過ごしたい人々が、軒先でビールを片手に何時間も立ち話をするという光景があちこちで見られるようになります。
日が長くなると、パリジャン、パリジェンヌも総合的に機嫌が良くなる、という効果がありますが、一方、移行直後は就寝時間が1時間遅くなることによる身体への影響も顕著になっています。
体への負担が大きい、冬時間から夏時間への移行
研究結果によると、冬時間から夏時間への移行のほうが、10月末に行われる夏時間から冬時間への移行よりも、人間の体は調整が難しいことが明らかになっています。
冬から夏への移行では、体は1時間の睡眠時間を失い、夏から冬への移行では1時間長く眠ることができます。後者、つまり「一時間長く寝る方が体にとって調整しやすい」と、フランス国立保健医学研究所(Inserm)の神経生物学者、クロード・グロンフィエ(Claude Gronfier)氏は説明しています。
そもそも現代人は寝不足、50年間で1時間30分減
理屈の上では、「誰もが多少なりとも抱えている睡眠不足をさらに悪化させることになります。我々は過去50年間で、一晩当たり1時間半の睡眠時間を失ってきました」と、同研究所で睡眠の研究に従事するアーメル・ランシヤック(Armelle Rancillac)氏は補足しています。
夏時間移行で交通事故が増加
夏時間への変更で毎年問題視されるのは、睡眠不足による居眠り運転や不注意による交通事故の増加です。
また、睡眠不足は免疫力低下にもつながります。睡眠は免疫力を強化し、新陳代謝を促す働きをしますが、不足すると消化不良や集中力、記憶力の低下につながります。
さらにイライラを引き起こし、最近の研究では「他者への同情心」を削ぐといった事も明らかになっています。
夜更かしする人、夜勤する人は要注意
我々の体は24時間の概日リズム(※)に対して、10分~15分遅れを蓄積し、体はこれを調整しようとします。遅れが1時間となると相当な負担がかかることになります。
普段から夜更かしをする人の体には、この遅れが蓄積しているため、そうでない人よりも余計体に負担がかかるわけです。
夏時間移行による体への負担減、移行前から「15分早く寝る」が有効
この蓄積した遅れを取り戻し、体への影響を軽減するために、国立保健医学研究所のランシヤック氏は夏時間移行日前の3~4日間、毎晩普段より15分~20分早く寝ることを推奨しています。
睡眠時間を増やす事が目的なので、その分目覚まし時計を早めてはいけません。
「年中夏時間派」のフランス国民、どっちにする?の終わりなき議論
年に二回、時間変更時期になると、夏時間への移行を廃止し冬時間だけにすべきだ、いや一年中夏時間がいい、という果てしない議論が繰り広げられます。
2019年、国民議会が行った世論調査では、フランス国民の59%が「一年中夏時間が良い」と回答しています。
年中夏時間なら、真冬はほぼ一日真っ暗?科学者たちの反論
これに対し、医療関係者や科学研究者たちは国民とは全く逆の意見を持っています。
夏の長い夜をエンジョイするというところにばかり目が行く国民を尻目に、ランシヤック氏は「冬に夏時間を続けたら、1年で最も日が短い12月21日のパリの日の出は9時40分になってしまいます」、そうなったら「年中夏時間熱狂派」もかなりトーンダウンするでしょう、と述べています。
寝つきの悪い筆者は「年中冬時間派」ですが、これから日本との時差が縮むのは何よりです。
※睡眠・覚醒リズムは、体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫・代謝系などと同様に、体内時計によって約1日のリズムに調節されており、このような約1日の周期をもつリズムのことを概日リズムと呼んでいます。(出典:厚生労働省サイト)
執筆:マダム・カトウ