2025年3月25日(火)、フランス宗教遺産財団(Fondation du Patrimoine)は、資金集めのためちょっとユニークな募金キャンペーンを実施しています。このキャンペーンでは6年前の火災で尖塔を含む主要部分が消失し、昨年12月に再開したばかりのパリノートルダム大聖堂(Notre-Dame de Paris)復旧工事中に撤去された中世の石が、抽選で当たります。応募の締め切りは4月4日、抽選は火災が発生した4月15日です。
歴史の一部を当てよう!ノートルダム大聖堂の中世の石
2019年の火災から現在も続くノートルダム大聖堂の復旧工事費用は、さまざまな財源により賄われていますが、国やパリ市と並ぶ大口の資金提供者である遺産財団は、同大聖堂のみならず、教会などを中心とする宗教的文化遺産の維持に資金集めをしています。
応募には最低40ユーロの寄付
今回のノートルダム大聖堂の抽選に参加できる対象者は、同財団に最低40ユーロの寄付をした人に限定されています。
12世紀から14世紀の間に建てられたノートルダム大聖堂ですが、2019年4月15日の火災の焼け跡には、中世から使われていたと思われる石が崩れ落ちていました。これらのうち復旧工事で再利用できなかった石の一部が、大聖堂の認定つきで50個、抽選で当たります。
遺産財団、ノートルダム大聖堂再建の寄付金だけで2億ユーロ
2019年の火災後、財団がノートルダム大聖堂再建のために募った寄付に236,000人もの人が応じ、集まった寄付金は、実に2億2800万ユーロ(約370憶5000万円/1ユーロ=約162円)にも上ります。
これは他の財団を含め集まった寄付全体、8億4600万ユーロ(約1,375億円)の4分の1に当たります。
巨額の寄付金が集まった理由の一つとして、国が再建のための寄付を募った際の寄付先としてこの財団を指定したことが挙げられます。
ノートルダム大聖堂、過疎地の教会の救済へ
今回の寄付キャンペーンの目的は、実はノートルダム大聖堂の修復費用集めではありません。
ノートルダム大聖堂の知名度を借りて今回集まった寄付金は、フランス国内の人口1万人未満の村にある教会などの歴史的建造物のうち、破損が激しく危機的な状況にある1000堂の修復費用に充てられます。
フランスの地方を旅行すると、小さな村や町にもたいてい中心部に教会があるのがわかります。しかしながら、人口が少ないこれらの自治体には、多額の費用がかかる歴史的建造物の修復や改修をする資金がありません。
小さな村の教会、資金不足で倒壊寸前
こういった教会の修復には、財団の資金が不可欠になっています。
2023年には、財団が実施した「私たちの村の宗教建造物を守ろう」キャンペーンに約6万人が応募し、1900万ユーロ(約31億円)が集まっています。
こうして集まった寄付金は、倒壊寸前で建物自体が閉鎖された教会、崩れかけたファサードや鐘、老朽化した電気の配線などの改修や修復工事に充てられます。
2024年には、同財団が1年間で集めた資金で「約100の教会を維持できた」と財団は発表しています。
フランスの歴史的建造物の維持に貢献し、運試しに?ノートルダムの石を当てたい方:
財団のサイト
このニュースに、今後偽物が出回りそうだな、と思うのは筆者だけでしょうか?
執筆:マダム・カトウ