パリ五輪 日本フェンシング男子金メダル獲得 導いたのは、フランス人監督

2024.08.06

2024年8月6日(火)、パリ五輪フェンシング、フルーレ(fleuret)男子団体戦で4日、日本が金メダルに輝きました。チームを勝利に導いたのは、わずか3年前、東京五輪のフランス代表として自ら金メダルを獲得したエルワン・ルペシュ(Erwann Le Péchoux )監督です。フランスチームは惜しくも銅メダルでしたが、日本の勝利に会場は拍手喝采、仏メディアは同監督の「2つ目の金メダル」と自国の勝利のように報道しました。

 

日本の金メダルに沸くフランス

シャンゼリゼ大通りとコンコルド広場の間にあるグランパレ(Grand Palais)会場で行われた男子団体戦について、フランスのメディアは、日本は決勝でイタリアを「余裕で下し」、その前に行われたフランス戦も、場内は緊張に包まれていましたが「そつなく」勝利した、と報道しています。

3年前の東京五輪を最後に選手を引退し、日本フェンシング協会に日本男子の監督として迎え入れらたルペシュ氏は「今日2つ目の金メダルを取った、と皆に言われた」と喜びをあらわにしました。

今回監督として初めてオリンピックに参加した同氏は、選手と監督として取る金の違いについて、選手として金メダルを取った時は「もう何とも言えない素晴らしい気持ちで自分が達成したことにこの上ない幸福感を味わいました」と述べ、今日ここで監督として金を取ったことには「選手たちのことを誇りに思い、彼らが達成したことに喜びを感じる」と、コメントしました。

日本、フェンシングのメダル総数で五輪史上初の首位

日本代表はパリ五輪で金2個、銀1個、銅2個の合計5個のメダルを獲得し、今回史上初の首位という素晴らしい結果を残しました。これはアジアの国として初めてです。

 

東京五輪で金メダルを取るも、母国で監督としては「未熟」

東京五輪後、ルペシュ氏は引退後のキャリアとして、フランスに残り、フランスフェンシング協会の監督になることを希望していましたが、同氏が監督未経験者ということで「能力不足」を理由に断られ、ジュニアチームの監督をオファーされました。

ジュニアの監督の収入ではパリ近郊での生活が厳しいと諦め、地方で子供にフェンシングを教えていたルペシュ氏に声をかけたのが、日本フェンシング協会でした。

今大会、準決勝のフランス戦前のインタビューでそれについて質問された同氏は「別のチームが私の能力を信頼してくれた」と答えています。

対フランス戦、相手は元チームメート

日本チームの監督の一人としてパリに戻ってきたルペシュ氏ですが、実際に自分が15年も一緒に過ごし、今でも仲の良い友人達と対戦するのは「非常に厳しかった」といいます。

対戦相手のフランスチームには、ほんの3年前に東京で一緒に戦った エンゾ・ルフォール(Enzo Lefort)、ジュリアン・メルティーヌ(Julien Mertine)、マキシム・ポティ(Maxime Pauty)選手らがいるわけです。

試合中は自分の選手のこと、自分の仕事に集中し、「向こう側」を見ないようにした、とコメントしています。

お互いの勝利を祝福

結果的にはフランスに45-37で勝利し、日本はイタリアを下して金メダルに輝きましたが、ルペシュ監督は母国フランスがアメリカを下して銅メダルを取ったことも喜んでいます。

フランス代表のメルティーヌ選手も、ルペシュ氏が他国の監督として活躍していることについて「お互いにそれぞれの道を歩んでいるが、今でも親しい友人」とし、同氏が日本を金メダルに導いたことを心から祝福しています。

 

フェンシング競技人口、日本はフランスの5分の1

フランスのフェンシング競技人口は実に55,000人、全国に760ものクラブがあります。

日本の競技人口がわずか6,000人であることを考えると、フランスでの普及率の高さがよくわかるとともに、今回の日本フェンシングの躍進ぶりには目を見張るものがあります。

世界フェンシング連盟の加盟国は157か国、つまり世界中157か国でこのスポーツが行われているわけです。

ちなみにオリンピック競技ではありませんが、剣道をやっている国はわずか47か国です。それに対し、すっかり世界に浸透した柔道は盛んで、世界柔道連盟の加盟国は199か国になっています。

 

フェンシングがお家芸のフランス

デュマ(Alexandre Dumas)の小説「三銃士」(”Les Trois Mousquetaires”)でおなじみの騎士道ですが、中世の騎士道から発展したこのスポーツは、1896年、世界初のオリンピック、アテネオリンピックの時から(当時、9競技全10種目)五輪種目に入っているという由緒ある競技です。

フランス発祥ということもあってか、フランス語で「エスクリーム」(escrime)と呼ばれるフェンシングは、種目名のエペ(épée)、フルーレ(fleuret)とサーブル(sabre)をはじめルール用語がフランス語になっている数少ないスポーツの一つでもあります。

日本ではまだまだマイナースポーツのフェンシング、パリ五輪での快挙を機に人気がでると良いですね。

執筆:マダム・カトウ

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