島国である日本は魚介類がとても豊富な国。焼き魚は朝食の定番ですし、お鍋やお刺身、今や世界中で愛されているお寿司など、一年を通して魚やイカや貝類の料理を楽しんでいます。そしてフランスも、日本ほどの漁獲量はありませんが、肉料理と同様に海の幸を使った料理が日常的です。そこで今回は、フランスの魚事情をご紹介します。
フランスで人気のお刺身はサーモン!
日本人である私が真っ先に頭に浮かぶ魚料理といえば「刺身」なのですが、「生」のまま食材を食べるのはどうやら日本ならではの文化のようです。日本では生卵を使う卵かけご飯をはじめ、ちらし寿司に馬刺し、鳥刺しなどさまざまな食材を生で食べることができますが、フランスのみならず世界的に見ても、あまり一般的ではありません。
けれど、フランスの名物料理 ”生の牛肉を細かく刻んだ steak tartare(ステック・タルタール)” や、牡蠣をはじめ貝類など、生で食べるお料理も見かけます。パリに行かれたことがある方ならご存知かもしれません。それにマヨネーズだって生卵を使ったソースです。なので私個人としては、そこまで日本独自の文化とは思えないのですが、友人のフランス人たちと話していると、あまり自分たちが「生の物を食べる」という意識がないようです。
さて、けれど寿司をはじめとした日本食ブームのおかげで、刺身や寿司のネタとして生魚を食べるのはとても一般的になりました。なかでも人気なのは、食べやすいサーモン。和食のレストランはもちろん、スーパーで売っている巻き寿司にもサーモンが使われていることが多いように思います。
ソースとの相性抜群!フランスの食卓に並ぶ白身魚たち
ソースを絡めたりバターで焼き上げてムニエルにしたりして食べられているのが、淡白な味わいの白身魚たちです。日本でもお馴染みの plie(カレイ)や morue(タラ)、bar(スズキ)もありますし、中でも高級魚である limande-sole(舌平目)のムニエルは、観光客をはじめフランス人も好んでいるメニューのように思います。
また日本であまり見かけない種類だと merlu(メルルーサ)という名前の魚がよく採れます。タラのような淡白な白身魚で、手頃な値段かつ味わいが素朴なため、ムニエルにしたりソースに絡めたりさまざまな味を楽しめ、フランスのビストロやレストランでも定番の素材です。ちなみにメルルーサはフランスのみならずスペインやイギリスなどヨーロッパではよく採れる魚で、イギリスのフッシュアンドチップスにも用いられているのだとか。
パリのスーパーで手に入る種類豊富な魚の缶詰
内陸であるパリの場合、やはり新鮮な魚を探すのは難しいようです。そこで私のパリに住む日本人の友人がよく食べているのが、豊富に揃った魚の缶詰たち。日本にはあまり出回っていないものを紹介するとしたら、さまざまな味の種類が揃っているサバの缶詰です。
例えばトマト味、マスタード味、レモン風味、ナスのソース、パプリカのソースなどなど、大型のスーパーに行くとずらりと並んでいるのを見ることができるはず。オリーブオイルをベースとしたものが多いためパスタのソースとしてもそのまま使え、たいへん便利です。私は時々プレーン味のものを、ご飯と一緒に煮て炊き込みご飯を作っています。
新鮮な魚を食べるならノルマンディーか南仏へ
フランスの新鮮な魚介類を食べてみたいという場合は、やはりパリを出て海に近い北のブルターニュやノルマンディー、または地中海に面したマルセイユやニース方面に行くのがおすすめです。日本でも海に近い地域の魚は食感も風味も違い、やはりおいしいもの。フランスも同じです。
ちなみに以前、英仏海峡に面する街である le Havre(ル・アーブル)にて、生牡蠣とマテ貝をいただきましたが、もっと食べたいと思ってしまうほど濃厚な味で、絶品でした。例えば同じ牡蠣と呼ばれていても日本とは種類が違うため、フランスに行かれたら牡蠣をお試しになるのをおすすめします。
まとめ
フランス語で魚屋さんは poissonnier(ポワソニエ)。短期の滞在だと「poissonnier」で魚を買うのは少々ハードルが高いかもしれません。けれどフランスのレストランやビストロの plat de jour(プラ・ド・ジュー)と呼ばれる日替わりのおすすめ料理には、入荷したばかりの魚が使われていることも多いです。ぜひ、レストランやビストロで、フランス自慢の魚料理を試してみてください。
執筆 Megumi Saito