クリスマス前の約4週間を、西方キリスト教会ではAvent(待降節)と呼び、クリスマスの心の準備期間とします。今年は11/29 からAvent に入りました。
にぎやかになる待降節
昔は食事制限を行うこともあったようですが、今ではそういう話はとんと聞きません。どちらかというとAvent に入る前から、商店ではまばゆい飾りつけに音楽といつもよりにぎやかになるくらいです。
各市町村が主な道路にイリュミネーションを灯したり、マルシェ・ド・ノエル(クリスマスマーケット)を開いたりするのも、このAvent の前後からです。
危ぶまれた今年のマルシェ・ド・ノエル
今年はテロ事件のあおりを受け、各地のマルシェ・ド・ノエルの開催が危ぶまれました。中でも歴史が古く規模も大きいストラスブールのマルシェ・ド・ノエルがどうなるのか、なかなか定まりませんでしたが、セキュリティを強化してAventに入る週末から開催されました。
なにしろ、450年近い歴史を持つストラスブールのマルシェ・ド・ノエル。今まで中止されたのは二度の世界大戦の時期のみでしたから、中止になっていたら経済的打撃に加え、人々の気持ちもぐんと消沈していたことでしょう。
クリスマスの飾りつけ「クレッシュ」
さて、クリスマスの飾りつけのひとつにcrèche(クレッシュ)があります。これはキリスト生誕時の聖家族の様子をかたどったものです。通常は飼い葉桶の周りに聖母マリアと聖ヨセフ。また羊飼いと家畜、場合によっては東方の三博士も並ぶ形となっています。
飼い葉桶は、12月24日までは空で、12月25日になると、そこに赤ん坊のイエズスが置かれます。
「非宗教性」をめぐり議論に
このクレッシュ、ここのところ毎年あちこちで論争を呼んでいます。というのも、先日も書きましたがフランスでは公共施設はLaïcité(非宗教性)を基本としています。そのためクレッシュも「宗教的なシンボル」とみなされれば、禁止の対象となるわけです。去年はいくつかの市のクレッシュがその理由で撤去させられました。
ただし「クリスマス時期の伝統的」飾りと見なされれば、その限りではありません。このあたりの境界線は明確とはいいがたく、実際クレッシュの大きさやどれだけ目立つかなどを考慮して、ケースバイケースの決定がなされているようです。
線引きは難しい
イエズスが生まれてすでに2000年以上。クロヴィスがカトリックに改宗してからでも1500年以上経ちます。宗教なのか、伝統なのか、一本の線では分けがたいものです。
クレッシュは教会なら間違いなく飾ってあるはずです。もし市庁舎などで見かけなければ教会でご覧になってくださいね。
執筆 ゆき