何度かフランスのカレンダーに載っている聖人の話をしてきましたが、365日のうち何日かは、聖人名ではないものが書かれています。復活祭(Pâques)やクリスマス(Noël)、万聖節(Toussaint)などの代表的な祝日は、皆さんもご存知でしょう。
それ以外にも、例えば今月3月25日はAnnonciationとあるはずです。
Annonciationって何?
*『受胎告知』16世紀初頭
動詞 annoncer(知らせる)から派生した名詞ですが、「通達、宣告」という普通名詞は、別に annonce というものがあります。Annonciation は、必ず大文字の「A」で書かれ、「受胎告知」という意味で用いられます。
「受胎告知」とは、聖書にある、大天使ガブリエルが聖母マリアに受胎を告げにきた場面を示します。よく考えてみれば、3月25日は、クリスマス12月25日のちょうど9ヶ月前。(日本の十月十日と言われますが、数え始める日が異なるためフランスでは妊娠期間は9ヶ月と言われます)つまり、マリアが受胎した日とされているわけです。
「受胎告知」を扱った美術作品は多く、有名なところでは、ボッティチェリ、カラヴァッジョの名画が挙げられるでしょう。私は学生の頃、いつも目にしていたのが、修道士フラ・アンジェリコの手によるもの(画像)でしたので、その印象が強く、フィレンツェでレオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」(画像)を見たときは、あまりの雰囲気の違いに度肝を抜かれたものです。
ところで、大天使というのはフランス語で archange。上級という意味をもつ arch-が、天使 ange についたものです。諸説ありますが、カトリックでは、ミシェル、ガブリエル、ラファエルを三大天使とみなすのが一般的です。(大天使ミシェルについては、拙稿「9月29日ノルマンディーの守護聖人の日を祝おう!」をご覧ください。)
ところでこのガブリエル(Gabriel)、最近人気の名前でもあります。3月18日付けの記事によると、2014年パリに生まれた男の子の名前では一番人気。2014年パリ生まれのガブリエルは370人もいるそうです。
2位はAdam(アダム)、3位がこれまた大天使の名であるRaphaël(ラファエル)と、聖書関係の名前が続いています。
ちなみに2014年パリ生まれの女の子の名前ベスト3は、1位がLouise(ルイーズ)、2位Chloé(クロエ)、3位Inès(イネス)でした。
あとがき
ルイーズは、男の子の名前4位のLouis(ルイ)と並んでクラシックな名前ですが、クロエとイネスは、逆に新しい名前という印象で、実際80年代後半から増えてきた名前です。これから数年の間、パリの街角では、「ガブリエル!」とか「ルイーズ!」と子供を呼ぶ声が響くことでしょう。注意して聞いてみてくださいね。
執筆:ゆき