2014年の夏から、フランスのSNCF(フランス国鉄)主要駅、約百駅に、「どうぞご自由にお弾きください」という言葉つきでYAMAHAのピアノが置かれています。このピアノはいったいどのような目的で置かれているのでしょうか?
電車の待ち時間に癒しを
どこの国もそうですが駅というのは、いろんな人が集まり、また散っていく場所です。そのためスリやテロリストにも狙われやすく、みんなどこか用心深い顔で周りを見回し、殺伐とした空気が流れることもあります。
そんな駅に一台置かれたピアノ。落書きやいたずらは大丈夫なのか?と思ったりもしたのですが、意外や意外!子供がたどたどしく音を辿るのを耳にするのも微笑ましいですが、時には、名も無いピアニストたちが、どっぷり自分の世界に入り込んで、音を奏でているのを聞くこともあります。
そうしてその周りには絶妙な距離で佇み、音楽に耳を傾ける旅人たちの姿。「通勤時間や通学時にピアノの音色でホッとしてもらいたい。」との理由で設置されたそうです。
過去にはこんな企画も
なかなか素敵な企画!と誰しもが思ったようで好評を博したため、2014年には「ピアノを弾いてピアノを当てよう!」という企画もありました。参加方法は、いたって簡単なものでした。
1.SNCFの駅でピアノを弾き、
2.それを友達に録画してもらい、
3.You TubeかDaily MotionあるいはVimeoに投稿し、
4.この企画のサイトで登録する
という4ステップです。YAMAHA協賛で、12月24日まで続いたこの企画。サイトを覗くと、すでに多くの登録者のヴィデオが並んでいます。男女いずれも様々な世代が、これまた様々なジャンルの曲を楽しむ様子が見られます。
入賞者の発表は2015年に行われました。ピアノの音色が流れるだけでその場の空気が和み、待ち時間も短く感じるのは音楽の魔法の成せる技でしょう。
最後に
老紳士が立ち去る間際にピアニストに近づいて、「音楽をありがとう」と声をかけていたのが印象的でした。ストだのなんだの問題も多いSNCFですが、この件に関しては、「素敵な企画を立ててくれてありがとう」と私も声をかけたい気分でした。
執筆:ゆき