前回、フランス語の美しい響きを支えている母音と鼻母音についてお話をしました。フランス語特有のホワンホワンホワーンという、あの音です。
フランス語の響きにはもう一つの大きな特徴があります。みなさんがフランス語を真似するとき、先ほどの「ホワンホワン」の他に、「ジュブジュブジュブジュブー」といいませんか?このジュブジュブ、モゾモゾとした音、これもフランス語が美しい発音と言われる理由の一つです。
今回は、子音の発音記号についてお伝えしたいと思います。
子音の発音記号を正しく理解しよう
上の画像に書いているものが、フランス語で使われている子音の発音記号です。普通のアルファベットの中に見慣れない記号が混じっています。赤で表記しているもので、上の左から順番に、「シュ / ニュ / ジュ / ヂュ」という発音です。
以前にもお伝えしているように、カタカナは一文字の中にすでに「子音+母音」が入っているため、そのまま読んでも正しい発音にはなりません。子音の発音記号を確認するときは、母音を含まない子音だけを発音するように注意しましょう。
以下に特に間違えやすい発音を上げてみました。
s / ʃ
「ス」「シュ」。s / ss / c / ç / sci というつづりの多くは s で発音します。そして、つづりが sch / ch の場合、その多くは ʃ で発音します。 ʃ は舌をどこにも付けずに息を「シュ」と出して発音するのが特徴です。
m / n / ɲ
「ム」「ヌ」「ニュ」。口を完全に閉じるのが m、口は閉じないで舌を上あごにつけるのが n です。発音記号と直接関係はありませんが、 p や b は口を閉じなければ発音できないため、その直前に発音される「ン」のつづりのほとんどは n ではなく、m です。
ɲ は「ニュ」と発音します。同じくラテン語を基とするイタリア語も、gn を「ニュ」と発音します。
z / ʒ / dʒ
「ズ」「ジュ」「ヂュ」。この三つは日本人が非常に混同しやすい音で、注意が必要です。 母音に挟まれた単独の s、それから z がこの発音記号 z で発音されます。
ʒ は ʃ と同様、舌先がどこにも触れない状態で「ジュ」と発音します。g や j がこの音で、フランス語の「ジュブジュブ」と聞こえてくるのは、ほとんどがこの発音記号の音です。
z と ʒ がその発音を長くのばすことができるのに対して、dʒ は舌を上あごに一瞬あてて発音するため、のばすことができません。 dg がこの音にあたります。
f / v と p / b
日本人が最も頻繁に間違えて発音するこれらの音。まず、f / v は唇と歯をふるわせて出す摩擦音です。かつて英語を習った時に「唇を噛みましょう」と教えられた、あの音です。しかし、唇を噛みすぎるとかえって破裂音になってしまうことがあるので、「fffファッ」「vvvヴァッ」と、とにかく大袈裟に摩擦音を鳴らしましょう。
一方、 p / b は破裂音です。最初のうちはf / v との違いを鮮明にするため、「パッ」「バッ」と、大げさに発音することをお勧めします。
フランス語独特の半母音にも慣れておこう
この他にもフランス語には、「半母音」というものがあります。フランス語独特のジョワジョワーという音はこの「半母音」によるものです。フランス語には「エーィ」や「アーィ」という二重母音はありませんが、代わりにこの半母音があるのが特徴です。
半母音の発音記号は j / w / ɥ の3つ。それらに母音を組み合わせた合計5つの発音があります。「半」母音という名前ですが、二つの母音がくっついて、最初の母音が子音のような役割を果たします。
j
どう見ても「ジェイ」にしか見えないこの発音記号。つい「ジュ」と読んでしまいたくなりますが、「ユ」という音の記号です。「ユ」はもともと「イ」と「ウ」がくっついてできた音ですから、それを意識して発音するときれいに発音できます。 i + 母音、もしくは母音 + il もしくは ill がこれにあたります。
例:dialogue / ail
ij
先ほどの j の前にさらに i が足されたもので、「イユ」もしくは「イーユ」と発音します。子音 + ill がこれです。
例:famille / billet
w
ou + 母音。「ウァ」「ウィ」「ウェ」の三つの音があります。
例:oui / couette / ouah
ɥ
これはフランス語独特の発音で、u が子音の役割をもちます。「ユァ」「ユィ」「ユェ」という響きがします。u + 母音のつづりがこれです。
例:huile / nuit / nuage
wa
フランス語が美しい響きである、最も大きな理由の一つの発音。つづりは oi / oy 。 o が子音の役割をもち、発音は「ワ」もしくは「ウワ」と聞こえます。
例:toi / voyage
目と耳で発音を確認しよう
発音記号は、あくまでも正しく発音できるための記号です。美しい発音を手に入れるためには、発音記号を目でみて、美しい発音を耳で聞く。この二つのアプローチが大切です。
フランス人の友人やFrance365運営元のEnsemble en Françaisの先生などの美しい発音をしっかり聞き、そして正しく発音できているか確認してもらいましょう。
Bonne continuation ! [bɔn kɔ̃tinɥasjɔ̃]
執筆 Daisuke